2008.09.09
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“Ricoh Auto Half” である。

 このコンパクト機は、当時爆発的人気を博した「ある種の」名機だ!
Ricohのウェブサイトに拠ると、20年間もの長きにわたり50万台も売り上げたそうである。
 被写体までの距離も露出も一切関係なく、シャッターを押せば写る。
あの頃、ワタシ同様このカメラから写真の世界にのめり込んで行ったご同輩も少なくないのではないだろうか?

 Olympus Penの登場により広く一般に普及したハーフ判は、実に当時の世相を反映している。
あの当時、日本はまだ貧しく、1本のフィルムは家庭における嗜好の品の中でも決して安い代物ではなかったからだ。
 そんな状況で、12枚撮りフィルムが24枚に、24枚が48枚に撮れるハーフサイズが持て囃されたは、当然の帰結であったと云えよう。


おそらく、それくらいの年齢から遠足の際などにカメラを携帯する写真早熟な同級生が増え始めた為だったのだと思う。
そしてワタシもご同様、親にねだったのではなかったか。
 国鉄職員であった父に連れられ、当時東京駅の車掌所内に在った購買部へ買いに向かった時の事を、未だ昨日の出来事のように覚えているのも不思議である。

 購買部には多種多様な品物が売られて居たが、カメラ売り場は「カメラコーナー」と表現した方がピッタリなほどこじんまりとした、ほんの一坪にも満たないような面積に在った。
例えて云うならば、上野はアメ横の線路下に密集した芥子粒ほどの店舗の様である。
 しかし、その猫の額の店の棚には、銀色の鍍金にピカピカと輝く一眼レフ機や、深い艶を湛えた黒塗りのカメラ達が、眩くばかりに何台も並べられていた。

 それまで写真などロクに撮った事も無かったワタシだが、妙な気分の昂揚からドキドキすらしてしまったのは、理屈抜きに機械モノが好きな「少年」と云う世代としては、当然の反応だったのかも知れない。

 父は、売り場のオジサンに二言三言質問をして居たが、薦められるままにこの“Ricoh Auto Half”を買った。
 それは、今にして思うと一般的な庶民として実に堅実な選択であった事が分かる。
なぜならば。

 1本のフィルムで倍の枚数を撮れるハーフ判である事。

 そして何よりも、絞りもシャッター速度の設定も無く、只押せば写るカメラであった事などだ。

 ワタシは、手に入れると同時に、このオートハーフに夢中になっていった。
富士の白黒フィルムを詰めては、北区王子の飛鳥山公園や紙の博物館、上野や銀座にまで被写体を求めて足を伸ばした。
友達と一緒に子供だけで電車に乗る事を覚えたのも、ひとえに写真撮りたさから自得した技であった。
 カメラが世界を広げてくれた!と云ったら、少しばかり大袈裟だろうか。


すべては、ここから始まった。





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Last updated  2008.09.10 08:13:11
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