江戸こぼれ話 笑左衛門残日録

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大富士 朽木一空と五林寺隆さん

2025.12.21
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カテゴリ: 小説 そろり長屋
本所、惚門町 そろり長屋  15




~遊ぶ文字 帷外れて 踊る文字~
ここで、瓢六爺の正体を明かそう、
 瓢六爺は真垣新太郎が修行している日本橋久右ヱ門町の
 書道家虹菱湖の門弟で本名は白松無風であった。
 師範の虹菱湖は大変な大酒呑のみであり、揮毫料が入ればみな柳橋の酒に消えた。
 酒を嗜むなどという粋な飲み方ではなく、酒を食らい、書家にあるまじき酒癖も悪く、
 呑んでは絡み喧嘩することも珍しくはなったので、
 書道家虹菱湖と酒を飲もうという輩は近づかなかったが、
 瓢六こと酒徒の白松無風とは不思議と気があってよく飲み明かしたのだった。
 昨年秋、大名家松平家で行われた書道展に出品した時のこと、
 白松無風は 瓢箪の絵に遊書の文字で~あるべきよう~と書いた一遍を出したのだった。
 松平墨守様には大いに気にいられたのだが、
 面目丸潰れの白松無風の師範の虹菱湖には面白い筈もなかった。
 「白松無風の書は邪道じゃ、、否、書とは呼べぬ下劣なも字じゃ!」
 だが、白松無風も引きさがらない、
 「師匠、某は書は自由であるべきだと存じるが、」
 「何を言うか、若輩者が。!」
  酒を間に舌戦は激しくなり、師範の虹菱湖は益々粗暴になり、
 高慢で狂人ではないかと疑われるほどの乱れようとなった。
 「遊書などとふざけた文字は虹菱湖の門弟にはふさわしくない、
 白松無風は破門じゃ、どこへとも消え去るがいい、」
 「何を申される、それでは言わせてもらうが、
  師範の悪筆など屁以下のものじゃ、」
  「何を!蛞蝓の這いつくばったような書を書きおって、」
     罵詈叱咜の嵐、虹菱湖は我慢の限界、堪忍袋の堪忍袋の緒を切らし
 白松無風の着物の襟をつかみ思い切り投げつけた。
  白松無風は敷居にひどく頭を打ち、瘤をこさえて、
 そのまま、記憶を無くしてしまったのだ。
  虹菱湖は白松無風を見捨てて帰り、白松無風は船宿を出て
   ふらりふらりと江戸の町を徘徊し、行く方知れずになったのだった。
 「もしや?瓢六爺は書道家虹菱湖の門下生の白松無風様ではありませぬか?」
 「何を申すか、拙者は瓢六じゃよ、かつごうったってそうははいかねえよ、」
  瓢六爺にはうっすらと白松無風時代の記憶が呼び覚まされていたが、
 いまさら、の虹菱湖の門下で書道家になる気は毛頭なかった。
  そろり長屋でのんびり暮らすのが自分にあっていると感じていた。
 つづく
 朽木一空





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最終更新日  2025.12.21 00:00:14
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