Emy's おやすみ前に読む物語

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Feb 6, 2006
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カテゴリ: 連載小説
ガラス越しに庭園を見ようと進むと、
私の親くらいの熟年夫婦(と思う)が、先に来ていた。
特に何も話さず、横に並んでいるだけなのだが、
この旅館の佇まいと、二人の姿がしっくりとはまっていて、
絵葉書を見ているようだった。

“仲の良い夫婦に、言葉は要らないのかも。”

「―― 月が明るいわね。」
「・・・うん。 瑠璃、群青、紺、松葉、緑青・・・
 自然の色のグラデーション。」

「・・・月明かりの色って、神秘的でしょ。
 心を妖しくさせるでしょ。」

「たとえば、今はどんな風に。」
「う~ん・・・。部屋に戻って、ビールでも飲もうとか!」

私に彼が笑顔を向ける。若い。
庭園を楽しむ熟年に比べ、花より団子、庭よりビール。
それに素直に賛成できる私も、まだまだ若い。

土産売店に入ったのは閉店の3分前だった。
急いでアイスクリームを手にすると、
彼がお金を払った。

部屋に戻った。


「売店の金額、いくらだった。私出すよ。」
「もう、姉さん。恥じかかせないでよ。
 これくらいの金はあるよ。」

これは男の見栄というものだろうか。
思い出してみれば、今までも私達はずっと割り勘定で

私のほうが多く払ったことはほとんど無い。

彼は駆け出しの絵本画家。
私は企業の係長。
彼の収入に比べたら、私は大金持ちなのに。
しかしここは、若さゆえの見栄に乗らせてもらうことにした。

「ありがとう。ごちそうになります。」

ビール、コップ、おつまみなどを用意すると、
テーブルを前に、私は彼の左側に並んで座った。
彼の顔がグッと近づく。
口元とアゴに、薄っすらとひげが伸びてきている。

「はい。旅行にカンパイ。」

と、コップを鳴らしたものの、最初のおつまみは
アイスクリーム。





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Last updated  Feb 6, 2006 09:21:33 PM
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