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2006年01月05日
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カテゴリ: 露野
 私は筆を置くと、その文を先ほど女童が持ってきた桜の枝に結び付け、文机の上に置いた。

 そして、密かに従者を呼んで荷造りをさせると、そっと少女の屋敷を出た。今宵に限って、屋敷のうちを警護する家人はだれもいなかった。それに、いつもは固く閉ざされているはずの門も少し開けられ、そこを守り固める武者もいなかった。そのお蔭で、私は誰からも咎められることなく、静かに屋敷を出ることが出来たのである。

 おそらく、母親は私の出発に気付いていたのだと思う。だが、気付かぬふりをして、私を引きとめないでいてくれたのだろう。

 母親もまた、風雅を解する都人であったのだ。私に娘の将来の望みをすべてかけていたにも関わらず、私にそれを無理強いするでもなく、私の意志を第一に優先してくれた。私の気持ちを察すると、引き止めて懇願することもなく、娘との結婚を断った私を責めることもせずに、私の思うままに黙って行かせてくれた。そして、挨拶もせず、今までの好意に対する礼も言わずに密かに去っていく私を許してくれたのだ。私にはその雅な思いやりが嬉しかった。

 果たして、今頃あの少女はあの若者の妻となって、三吉野の地で幸せに暮らしているだろうか。時折は、私のことを思い出すこともあるだろうか。

 私にはわからない。

 だが、あの少女の無邪気な笑顔を思い出すと、今も心が和む気がする。私がしたことは正しかったのだと、私は信じたかった。





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最終更新日  2006年01月05日 13時19分51秒
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