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2006年01月30日
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カテゴリ: 露野
「では、なぜ母上は私に冷たかったのか。いつも私は無視され、優しい言葉一つ掛けて頂いたことはない」

「それは、そのようにお育てしてしまった我らそばの者の罪でございます。宮様は尊い帝の御娘としてお生まれになり、この上なく高貴にお育ちになりました。人に心を見せぬのも、権高な物言いをするのも、御所の習い。いつのまにか、喜びも哀しみも決して人前では表さず、人を傷つけるような口の利き方しか出来ず、つい心にもないことを言って人を苦しませるようなお方になってしまわれて。ただ、わたくしの前でだけ、本当の姿をお見せ下さっておられたのです。どうぞ、母宮様をお恨みくださいますな。あのように、誰からも愛されぬお方になってしまわれたのも、我らの落ち度でございます」

 そう言って、老尼はまた泣いた。

「母上は、本当に私を待っていたのか」

「最期までその文を握り締め、もうあまり聞こえてはおられぬ耳をすましておいででした。いまに、あなた様の足音が聞こえて来はせぬかと」

 私は優しく母の髪を撫でた。短くなった髪は、母をどこか少女のように見せた。ふくよかだった身体は一回り小さくなり、枯れ木のように痩せた手が単の袖口から覗いている。白い小さな顔には深い皺が刻まれてはいたが、その死顔は穏やかだった。

 私は涙を浮かべながら、その母の死顔をしばらく見つめ続けていた。

 私の心の奥底にあった重い巌の影は薄れ、冷たい氷柱のように凍り付いた心は次第に溶けていった。そして、それと共に、私の見なれた美しいが冷ややかな母の姿もまた、私の中から消えて行った。この穏やかな少女じみた死顔をした老婆が、私の母なのだ。もう、それだけでいい。

 私は母の冷たい手の中に、私が陸奥から送った文を戻した。そして、その手の上に私の両手を重ね、涙に曇る眼の奥から、母に永遠の別れを告げた。






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最終更新日  2006年01月30日 16時33分01秒
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