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2006年02月25日
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カテゴリ: 露野
 その後二、三日して、私は京へ戻った。京ではまた忙しい日々が始まり、私はしばらく休養を取ることも出来なかった。そんな慌しい生活の中で、私はいつしかあの少年のことも、その母の老婆のことも忘れていった。

 そうして、半年ほど過ぎた頃だろうか。

 久しぶりに暇が出来たので、私はふいに深草の山荘に行こうと思い立った。

 思い立ったのが夕方だったので、深草の辺りに着いたのはもう夜だった。その夜は月がまるで昼間のように明るく、どこからか鶉の鳴く声も聞こえてくる。私は月夜の深草の情趣を楽しみながら、ゆっくりと馬を進めていた。

 その時、どこからか静かな楽の音が聞こえてきた。

 たゆたうような澄んだ音色。それはどこか月の住人の楽の音を思わせた。私は明るい月とその音色に誘われて、その音のする方へと惹かれていった。

 その楽の音は、大きな土地の者の館の奥から聞こえていた。私は馬を下り、板塀の破れ目を見つけて、中に入った。

 そこには小さな離れがあり、その簀子に出て、一人の女が和琴を弾いていた。由緒ありげなその古い和琴から、神秘的な音色がゆるやかに紡ぎ出されていく。だが、私はその和琴ではなく、女の顔から目が離せなくなってしまった。

 それは、あの夜のつくも髪の老婆だったのである。






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最終更新日  2006年02月25日 15時18分22秒
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