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2006年02月28日
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カテゴリ: 露野
 老婆はやや俯きながら、無造作に和琴をかき鳴らしていた。だが、その音色は私が今まで聞いたことがないほど見事なものだった。

 その美しい音色のせいだろうか、それとも今宵の明るい月光のせいだろうか。

 その時の私には、あの老婆が全く違った姿に見えた。深い皺が刻まれていたはずの顔は、月の光のためか白く朧に霞んでいる。白髪は滑らかに肩に流れ、月光に輝いて、まるで銀の糸を縒り掛けたようだ。身に着けた上品な淡い紫苑重の袿は、老婆の痩せた身体を隠し、どこか臈たけて見せていた。身のこなしには深い嗜みが感じられ、和琴の音色からはとても土地の女とは思えない高雅さがにじみ出ている。

 私はしばらく老婆のその姿を見つめていた。

 やがて少し月が傾くと、老婆はそっと和琴から手を離し、懐から何かを取り出した。それは、私が老婆の網代車に投げ入れたあの扇であった。

 老婆はしばらくじっとその扇を見つめ、それをそっと自分の頬に押し当てた。そして、微かに溜息をつき、細い声で歌を吟じた。


さむしろに衣かたしき今宵もや 恋しき人に逢はでのみ寝む

(狭い筵の上に衣の片袖を敷いて、今宵もまた私は、恋しい人に逢わないまま、一人きりで眠るのですね……)


 私はその歌に誘われるように、隠れていた物陰を出て、老婆の前に姿を現わした。



 そして、音もなくその頬を涙が伝って落ちた。

 私もまた何も言わず、簀子の上の老婆を抱きかかえると、離れの奥へ入って行った。





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最終更新日  2006年02月28日 15時10分57秒
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