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2006年11月25日
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カテゴリ: 孤舟
 乙前はそう言って微笑むと、空を見上げた。気がつくと、いつの間にか空は茜色に染まっている。乙前は延寿に言った。

「もうすぐ日が暮れる。我らもそろそろ引き上げるとしよう。さきくさへの別れは惜しいが、いつまでこうしても切りがあるまい。さあ、最後に今様を歌ってさきくさをあの世へ送っておやり。お前はさきくさのたった一人の縁者なのだから」

「でも、嫗は……」

「確かに、さきくさのしたことは許されることではない。だが、人というものは弱いものじゃ。懸命に生きていても、過ちを犯してしまう。どうか、さきくさを恨まないでやっておくれ」

 乙前にそう言われてようやく納得したのか、延寿ははにかんだように言った。

「でも何を歌いましょう」

「ちょうど良い。さきくさがいつも歌っていたあの歌を」

 乙前に促されて、延寿は静かに今様を歌い始めた。暁しづかに……延寿の優しい澄んだ歌声が、夕暮れの迫る河原を抜け、京の町へと広がって行く。






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最終更新日  2006年11月25日 11時41分13秒
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