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2007年08月28日
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カテゴリ: 蒼鬼
 そして、明子が先ほど産み落としたのは、父の期待通りの男の子だった。明子がその時、疲れと安堵のあまり気を失ってしまったのも無理はない。

 明子は再び目を開けて、薄暗い染殿の天井を眺めた。知らぬ間に涙が零れ落ち、頬に貼りついた黒髪の中に吸われていく。明子はそっと胸の中で呟いた。

 ああ、ようやく父上の望みを叶えて差し上げられた。でも、どうして自分はあのまま息絶えてしまえなかったのだろう……。

 あの時、若宮を産み落としたまま目を覚ますことがなかったならば、どんなに良かったことか。物心ついた時から背負わされてきた宿命を果たした今なら、役目を終えたと満足して死ねる。そして、もうこれ以上悲しみや屈辱を耐え忍ぶことも、空しさに苛まれながら生き続けることもなかったのに。

 だが、明子は今こうして、この染殿の懐かしい部屋で、薄暗い天井を見上げている。明子はあのまま死んでしまえなかったことが悲しかった。そして、これからも生きていかなければならないことが恐ろしかった。

 このまま、ずっとこの染殿でひっそりと暮らしていたい。もし、死ぬことが許されないのならば、それだけが明子の望みだった。この染殿が好きだからではない。明子はむしろこの染殿を恐れていた。だが、ここには明子を惹きつける何かがあった。

 それに、ここにいれば、内裏にいる時のような思いをしなくてすむ。父はいつも側にいて守ってくれるし、自分を傷つける者もいない。

 明子は寂しく、夫である新しい帝、文徳帝の面影を思い出した。





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最終更新日  2007年08月28日 19時17分41秒
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