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2008年06月20日
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カテゴリ: 蒼鬼
 でも、それでいいのだろうか……。

 明子はふとそう考えて、思わず身を震わせた。それに気づいた良房は、明子を慰めるように言った。

「嫌なことを思い出させてしまったようだな。すまなかった。御所へ戻るのは、そう急ぐ必要はない。まだ、気持ちが沈むようなら、しばらくどこかで養生してもいいのだ。ここに居れば、嫌でもいろいろと思い出すことがあろう。そうだ、嵯峨の別荘にでも行って静かに過ごせば、また気分も変わるやも知れぬ。その気になったら、継子にそう言えば良い。人目につかずに行啓できるよう計らってやる」

 そう言うと、良房はそそくさと東の対から出て行った。良房も鬼のことを思い出し、それを一刻も早く忘れようとしたのかもしれない。明子はそんな良房の後姿が妻戸の向こうに消えると、また側の脇息に寄りかかって庭の雨を眺め始めた。だが、心は全く別の方へ向いていた。

 良房は明子が鬼と自分の関係を恥じ、思い出したくもない記憶として嫌悪していると思っている。そして、恐ろしい鬼に苦しめられていた長く辛い生活から解き放たれて、今やっと心と身体の平安を取り戻したことを喜んでいると納得しているのだ。

 だが、そうだろうか。

 確かに鬼と共にいた間は、夢を見ているのか目覚めているのか、生きているのか死んでいるのかわからないような感覚に、明子はずっと翻弄されつづけてきた。鬼が去ってその奇妙な浮遊感がなくなってみると、身体は軽く頭はすっきりと澄んでいる。

 それはおそらく、この染殿にあの恐ろしいにおいが充満し始めた少女の頃以来失われていた爽快感だった。それは明子に生きる活力を与え、未来に明るさと希望を見出させるはずだ。

 だが、明子の心の方はそうはならなかった。それがなぜなのか、明子はずっと考えていたのだが、さっきの良房の言葉で明子はようやく自分の心の奥底に潜んでいるものに気づいたのだった。


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最終更新日  2008年06月20日 13時01分53秒
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