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2014年10月06日
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カテゴリ: 羅刹
 能季がそっと近づくと、女はびくりとして顔を上げる。中年の、だがまだ瑞々(みずみず)しさの残る上品な顔立ちだ。おそらく、これが師実の乳母だろう。

 能季は乳母の傍らに腰を下ろし、そっと小声で名乗った。乳母は緊張の糸が切れたのか、ふいに細い声を上げて泣き出した。

 能季は乳母を宥(なだ)めるように肩を叩きながら、几帳をよけて中を覗いた。

 褥の上には、海老のように曲げられた小柄な身体が横たわっている。もっとよく見ようと褥に近づいた能季は、思わず息を詰めて後退(あとずさ)ってしまった。

 引き被った衾(ふすま)から半ば覗いていた師実の顔は、腐ったあけびのように、紫色に腫れ上がっていたからである。

 師実は烏帽子のない素頭を力なく枕の上に伏せ、時折荒い息を吐きながらうめいていた。辺りには異様な臭気も漂っている。

 能季は驚きの余り、しばらく声も出なかった。乳母は堪りかねたように能季にしがみつきながら言った。

「一体どうしたらよいのでしょう。今にも師実様が亡くなってしまわれるのではないかと、わたくしはもう恐ろしくて、恐ろしくて。これ以上耐えられませぬ。本邸の父君にお知らせを」


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最終更新日  2014年10月06日 16時43分55秒
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