曹操注解 孫子の兵法

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Aug 4, 2010
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カテゴリ: カテゴリ未分類
松下幸之助の“これが理想的な国家だ”


http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100625-00000003-voice


■批判と問題

この佐藤さんの論文は、ある意味で現在のPHP研究所の中身をさらけ出してしまったという印象がある。
佐藤本部長はまったく知らない人ではない。
何十年も前になるが、何度か研究会に同席させてもらったし、その言説も著書も拝読した。
私の著書も献呈した。
しかし、当時から「これはおかしな方向に進んでいるな」という予感はしていた。
「それは違うんじゃないですか」と疑問を呈したことはあったが、聞き届けてもらえなかったようだ。




1.主題が結論になっていない。

「PHP研究所では、松下が描いた2010年を迎えたこの機会に、松下の“夢”とはどのようなものだったのかを振り返るとともに、それが現在、どの程度まで実現に近づいているのかを検証することにした。」

しかし、結論部分では、
「現実の2010年を迎えたいま、松下の描いた理想像を議論の取っ掛かりにして、われわれが現在置かれた状況、行なっていることを虚心坦懐に反省してみることもまた、意味のあることではなかろうか。」
これは「一応参考にして、反省してみようじゃないか」という曖昧模糊とした感想にすぎない。


2.この論文は研究か祖述かレジュメか

本論は、松下幸之助が1976(昭和51)年にPHP研究所創設30周年記念事業の一つとして著した『私の夢・日本の夢21世紀の日本』の忠実な紹介にとどまっている。
いわばレジュメである。
内容要旨の祖述であれば、冒頭部分で紹介する◇国としての方針・目標を確立せよ◇という項目を、終章の首相演説で再説・再紹介するような二度手間はしない。
研究的な配慮を加えた内容紹介ならば、「物語」として組み立てられた筋立てを換骨し、最初に指導者の理念たる国家方針・国家目標の理念内容を分析、それがどのように理想国家の建設に生かされているかを順序立てて、配列し直すのが当然の処置である。


3.「新しい人間観」についての理解

本論は「適切な人間観に立脚して政治や経済、教育や宗教などいっさいの活動を行なってこそ、それらが真に当を得たものとなり、人間の幸せに結びつく」という松下幸之助の理念を紹介している。
が、これは「単に右から左に書き写しただけじゃないか」のような疑問がある。

松下幸之助の膨大な思想体系は、天に聳え立つ巨樹の枝葉と、大地を走りめぐる太い根脈であり、田んぼの周りに勝手に生えている雑草の群れではない。
佐藤本部長の理念研究分析は、このように一本一本の箱庭の苗の生長をみるように、松下理念を完全に解体してしまっているのである。


4.本論に「書かれなかった部分」について

松下幸之助の事業部制などの創案と実施のプロセスにおいても、「新しい人間観」の初期の着想と萌芽が認められうる可能性があるが、それも究明されていない。
また理想国家の姿は、まさに「適切な人間観に立脚して政治や経済、教育や宗教などいっさいの活動」をなしとげた状況であるはず。

現在、VOICEに連載されている各論部分においても、社会主義国の代表まで登場する「物語の設定」の解説に紙幅をムダに費やして、幸之助思想に対する理念の紹介は数行にとどまっている。
《新しい人間観に立脚した新しい政治》の出現を拒否、拒絶しようとする従来の体制側に存在する根強い偏見や根本的な原理を明らかにしない限り、松下思想の偉大さは検証されないであろう。


5.新しい人間観に立脚した政治

適切な人間観に立脚して政治や経済、教育や宗教などいっさいの活動を行なってこそ、それらが真に当を得たものとなり、人間の幸せに結びつくという思想は、まさに松下幸之助の偉大な思想を証明する根本理念である。
政治、経済、教育、宗教などには、それぞれ適切な人間観の「あるべき姿」があるはずだという提言は、裏を返せば、適切ではない人間観にふりまわされていると「いっさいの活動は真に当を得たものとならず、人間の幸せに結びつかない」という警告になっている。
政治や経済、教育のシステムにおける支配的な人間観は、ほとんどは慣習的な発想と、ひきつづく歴代の根拠のない思いつきなどが変遷とともに現実の体制として成立したもので、その是非はほとんど客観的に検討されていない。
しかし、繁栄、平和、幸福という全人類共通の、明確な尺度で、合目的な人間観の再構成と再提示をおこなうことは可能であり、それによって社会生活全般のシステムが包括的に改善される契機が生まれる。
この提言こそが、新しい人間観に立脚した国家社会生活全般の改装を提示していると考えられる。
しかるに、PHP研究所は、それとは違った後ろ向きの退歩を進んでいるようである。






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Last updated  Aug 4, 2010 09:00:08 PM


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