曹操注解 孫子の兵法

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Aug 4, 2010
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カテゴリ: カテゴリ未分類
松下政経塾で、本格的に松下幸之助思想研究を始めたころの昔話。

まず政経塾で使われていた幸之助さんの思想関係を紹介する冊子を見たが。

これはもうムチャクチャな内容だった。
今から考えても、無意味な言葉の羅列でしかない。

当時、東京都議会議員だった山田宏さんは、
「幸之助さんの言葉は現代語に翻訳が必要だ。だからPHPのような松下語録では何の役に立たない。幸之助さんの思想を旗印にするには、カール・マルクスの《共産党宣言》みたいな政治綱領に具体化する必要がある」と断言した。

まさに天才的な慧眼といわねばならない。
そればかりではなく、松下さんへの心底の敬意と愛情がなければ、山田さんは「幸之助さんのアイデアは必ず日本の針路をちゃんと指し示しているはずだ」という考えは持たなかったであろう。

PHP研究所がいまだに「主座を保つ」、「和を貴ぶ」などの松下語録を、きちんとした学術用語に置換できず、解説ばかりに手間をとられて、みっともなく振り回されているのは滑稽だが。


現在の地域主権論も、松下語録では《置州簡県》であった。
いうところは、道州制を実施して、県庁の組織は簡略化しなさい、という意味。

昭和30年代当時のPHP研究所(松下幸之助さんと創立メンバー7人の所員たちが巨大な庭園を背景にした京都・南禅寺前・白川道の真々庵書院でブレイン・ストーミング会議をしていた)明治時代の廃藩置県に習って、地方制度を改革しようという議論になったとき、
幸之助さんが《今度は廃県置州やな》と発言。
しばらくして、「いや県の組織も州政府の出先機関として必要な場合もあるから、まったく廃止するとかえって不便じゃないですか」という異論があり、
《ほな、置州簡県でええわな》ということでつくりだされた。

LIFE.jpg
アメリカの雑誌《LIFE》に紹介された真々庵書院でのPHP研究の様子。


いわば思いつきのキャッチフレーズみたいなもので、対外的には何ら説得力も客観性もない、PHPの仲間うちだけで通用する《松下語録》がどんどんと生産される。
このような《語録》は、当時のメンバーが初期段階で、
「いやいや幸之助さん、そんなキャッチフレーズまがいのスローガンじゃ松下の工場内の張り紙と同じです。若手の政治学者や経済学者の卵を呼んで、どんな形で主張したら世の中に浸透しやすいか、考えて意見してもらいましょう」と提案すれば、その生産様式は改善されていたと思うが。
江口先生は社会科学系の出身だが、他の所員たち、特に創立メンバーたちはほとんど哲学・文学の学部生の出身だから、経営の神様が語る政治経済については用語の修整がきかない。

とにかくPHP研究所は創立当時から失敗していた理想工場だった。


そのPHPの失敗部分が政経塾にも持ち越されてしまったわけ。

当時の政経塾生たちの《松下幸之助》とは、お金持ちで、すごく熱心で、でも言葉がハッキリしない老人で、
自分の体験した昔話を語りながら、でも「自分の理想とする政治はこういうことだ」とはきちんと話したことはない、
対話や問答はするが、一から十まで自分の思想を解説しない。
もちろん、それだけの余力が90才の老人にあろうはずもない。



どうして政経塾のみんなが松下幸之助さんの世話になりながら、幸之助さんの理想の政治のあり方にまったく関心がないのか、不思議だったが、
この《政経塾教科書》がジャマをしていたわけだ。

ところが、これを編集したのがPHP研究所の創立メンバー(江口克彦先生は研究所の第一次拡大期の入社だから、大先輩に当たる)の一人で、
同じ創立メンバーだった山口徹研究本部長(当時)も年下だったらしいから、

「あの教科書じゃ仕方ないでしょう」と私がハッキリ言うと、
江口先生も、山口先生も「そんなことはないよ」とやたら防戦するのだった。
これではどうにもならない。

しかし、江口先生は、私がPHP研究所内にあった根源神社に一心に祈りを捧げていると、
「幸之助さんはいつもこうして拝礼していたのだよ」と、
近くの掃除棚らしき扉から無造作に入れてあった円座を引っ張り出して、
禅僧のように胡坐を整えて、手を合わせる幸之助さんの姿を再現してくれた。
これは一生の御恩である。

山口先生も「こいつは見所がある」と感じていただいたのか、
「幸之助さんがPHPにあれだけ膨大な発言記録をすべて保存されたのは、死んだ後になっても、キミのように関係資料を全部検討しようという意欲を持った人間が現れると思っていたからに違いないな」といった上で、

「しかし、幸之助さんの研究で、いまの電産(パナソニック)の経営に批判的なことを書いたり、話したりするのは困るよ。それは約束してくれ」

まあ、この話も時効でしょう(笑)。





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Last updated  Aug 5, 2010 05:21:41 AM


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