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2015年05月03日
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カテゴリ: 国内「み」の著者
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。(「BOOK」データベースより)

湊かなえ『告白』(双葉文庫)
みな湊かなえ:告白.jpg

◎新人作家としては合格



 ところが当時は淡路島に住んでいたために、脚本の打ち合わせがひんぱんにできず、脚本家の道を断念しました。そんな環境下で、湊かなえは小説家の道を目指したのです。この転進は、湊かなえ作品にプラスとして現れています。

 デビュー作『告白』(双葉社)は、まさにラジオドラマ仕立ての作品でした。発売時に読んだとき、私は「読書ノート」にこんなメモを書いています。

(以下転記)
 湊かなえのデビュー作『告白』は、新人作家としては合格点をあげられます。これまでにも、日記、手紙、電話が小道具として使われる作品はたくさんありました。『告白』はそれらに、携帯、ブログ、地方新聞が加わります。

 さらに登場人物も、今風の設定になっています。シングルマザー、ヤンキー先生、無気力な同級生、歪んだ母と子(中学生)が2組……。

 書き出しのホームルームのところは退屈しましたが、あとは短くテンポのよい筆運びでした。筆力はありますし、登場人物の個性もみごとに描き分けられていました。読者の目先を変えながら、物語をつなぐのは割合容易なことです。できれば小道具に走らない作品を読んでみたいと思います。湊かなえの評価をするのは、それからになるでしょう
(「読書ノート」2009.05.04より)

 その後、『少女』(早川書房、現双葉文庫)、『贖罪』(東京創元社、現双葉文庫)を読んで、私は湊かなえに本物の合格点をつけました。とにかく人物造形が優れているのです。登場人物ひとり一人の履歴書を作って書いている、と何かの雑誌にありました。どうやら、それは本当だろうなと思います。若手でここまで登場人物の内面に迫れるのは、たいへんな強みといえるでしょう。

◎巧みな人物造形と小道具の活用

『告白』は、6章で構成されています。前半は、いずれも「小説推理」に短篇として発表されたものです。『告白』はそれらに、書き下ろしの3章を加えて完成させました。前半は退屈でした。糸を引かない納豆みたいに、味気のない代物でした。それが途中から、喉ごしのよい蕎麦にかわりました。納豆そばは好きですけれど、融合していなければ味気ないものになります。

 本書は本文からではなく、帯(単行本)からはじまっています。「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」のコピーが効いています。

 第1章「聖職者」は、前記のように単独として「小説推理新人賞」に輝いた作品です。語り手は、「私」こと中学1年の担任女教師。結婚するはずだった男がHIVに感染していることを知り、未婚の母として娘・愛美を育てています。

 ある日、一人娘の愛美は、学校のプールで水死体として発見されます。警察は事故死として処理しましたが、女教師・森田悠子は生徒のAおよびBが、殺害したと確信しています。終業式当日のホームルームで悠子は、2人の生徒が犯人であると名指しします。少年法で守られた、彼らの刑は重くありません。悠子は自分の手による、復讐を仕掛けたのです。

 第2章、第3章も独立した作品でした。第2章「殉教者」は「小説推理」2007年12月号、第3章「慈愛者」は「小説推理」2008年3月号に発表されたものです。湊かなえはばらばらだった作品を、透明な糸でつないでみせました。それまで他人面して存在していた3つの個性が、融合しはじめるのです。そのための仕掛けは、多用な小道具の活用でした。小道具が多すぎると思っていましたが、やむをえないことなのかもしれません。

 本書については、最後まで紹介できません。新人離れした人物造形と、コミュニケーション・ツールの機能に、注目していただきたいと思います。

 改稿作業中に『Nのために』が文庫化(双葉文庫)されました。単行本で読んだ時点の「読書ノート」は未整理のままです。円熟したこの作品を、推薦作とするべきだろうな、と迷っています。
(山本藤光:2010.04.07初稿、2015.05.02改稿)





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最終更新日  2017年10月12日 03時28分19秒
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