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2026.07.24
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王様は服を着ている
近年、日本で一番成功した陰謀論は、従軍慰安婦と軍艦島強制労働、南京大虐殺だろう。いずれもあらゆる証拠はそれらが新聞社による事実無根の捏造事件であることを明らかにしている。その目的や立案者についての考察はそういう専門家に任せるとして、ここでは陰謀論を信仰する人たちの心理について考えてみる。
慰安婦については、小説家の老人を新聞社がバックアップして国連にまで送り込み、演説をさせたことで、あたかもそれが事実であるかのような信ぴょう性を国民に刷り込んだ。SNSが普及した現在では、新聞は特定の思想に染まった人たちの機関誌と選ぶところがないという事実が広まったためにそれほどでもないが、昭和の時代には信頼されていたため、みんなはこの陰謀論を信じてしまった。他の二つについても新聞社主導の捏造で原理は同じだ。
このような社会の公器が主導した陰謀論とは別に、在野の集団によるものも多い、オウム真理教は、当時人気のあった尾崎豊の自殺を陰謀論に組み込んで若い人たちを取り込み、空中浮遊という触れ込みで、ぴょんぴょん飛びあがった一瞬の写真を若者向けのピンク週刊誌が掲載することで一気に広がった。
SNSの普及とともに、永久機関詐欺のバリエーションも展開された。たとえば、水と二酸化炭素と太陽光とわずかな電力で石油を合成できるという主張を、ものものしいタンクや配管類と動画で演出したやつ。高校生程度の知識が正確にあれば、エネルギーの保存則から完全な嘘だということが理解できる稚拙な物なのに、それが実用化できないのは石油産業の圧力だという陰謀論を信じて転載する人たちや、本気で信仰して義憤に駆られた罵詈雑言のコメントも多い。科学的な指摘に対しては石油産業の犬だと脊髄反射の罵倒のみで、理解することはまずない。
「空耳アワー」という、ある番組のコーナーがある。英語の歌の歌詞が、日本人にはまるで別の文章のように聞こえる、というやつで、歌詞の特定のパートが、とんでもないセリフのように聞こえてしまうというケースを集めた娯楽コーナー。ところがこれ、英語に堪能で日常会話をなんなくヒアリングできる人にはまるで通じない。何度聞いても、それはごく普通の英語の文章にしか聞こえないわけだ。英語の能力のないものにしか楽しめない幻のセンテンス。
陰謀論はこれと似ている。きちんとした政治の知識や科学の知識のないものは、同じ現実を観ているにもかかわらず、自分の知識や経験の少なさのために、そこにまぼろしをくっきりと観て、自分には真実を見抜く目があるのだと信仰してしまうのだろう。事実、陰謀論やスピリチュアルなものを信じてしまう人たちの知能は一般より低いという統計を目にしたことがある。たとえば赤と緑の色相を判別する能力の低い人は、そうでない人には見えないものを色彩の混沌の中に観てしまうのと似ている。本人にははっきりと見えているので、他人のアドバイスは効果が全くない。陰謀論の信仰者たちは見えない人を蔑み、自分には特別な力があると判断してしまう。
しかしまた、別の例もある。アルファベットのフォントの中には、日本人にだけ読み取れないフォントというものがあって、それは、日本語のカタカナやひらがなに酷似した印象を持つために、日本の文字の知識を持つ者が見ると、その成分が雑音となって本来のアルファベットの文字として認識することをジャミングしてしまうという原理だ。正確に理解するためのはずの知識が、それによって誤読を誘引するという皮肉。東大卒の高学歴の人でも陰謀論に傾倒する人は少なくない。ただしい解釈が読み取れないわけだ。事実を受け入れられずにいまだに慰安婦問題や強制労働や南京大虐殺を信仰している大学教授たちは多い。
多様化は素晴らしいということで、みんな違ってみんな良いという思想が宣伝されてきたわけだが、それはようするに、価値を測る物差しの種類が増えたということで、学校の成績の偏差値や見た目の美しさ、スポーツの技能、ゲームの得点、模型工作の技術、クルマを速く走らせる技術、そういった価値を測る物差しを各自が選択して採用する時代になったということだ。
一見理想のようだが落とし穴もある。幼いころから鍛錬してフィギュアの金メダルを獲ったり学問を追求してノーベル賞を獲ったりするための大変な努力をちょんぼして、手っ取り早く世間の人にマウントを獲りやすい物差しを配る人たちが出てきたことだ。その価値観を信仰することさえできれば、ポテチ食べながらネットフリックスを楽しんでいるだけの人生をだらだらと送るだけでも、自分は選ばれた特別な人間であるという自負心を持って、みんなは世界の真理を知らない哀れな大衆だと見下してプライドを満足させることが可能な物差し、それを配る人たちが出てきた。
新興宗教、市民運動、陰謀論、政治活動、そういった人文科学系の主張は、自然科学系の仮説と違って、実験で検証して正誤を判断できるような性質のものではないため、限度があるとはいえ、かなり便利な目盛りを設定することが可能なわけで、鰯のアタマがトップエンドに据えられているものもとても多い。あるいはこれは、肥大したプライドに苦しむ、何も持たないままの人たちへの緩和ケアなのかもしれないと思う。
凡人の人生のスコアなんて、ほんの100年もたてば誰も覚えてなどいないのだから、物差しで測ることなど意味はないのだけどね。
*日本人には読めないフォント






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最終更新日  2026.07.24 13:07:49 コメントを書く


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