ふつうの生活 ふつうのパラダイス

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2006年05月31日
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カテゴリ: 外国映画 さ行


まさに太平洋戦争の話。
太平洋上のガダルカナル島での、アメリカ軍と日本軍の攻防戦だ。

日本とアメリカはパールハーバーに始まって、フィリピンや、サイパンや、太平洋上の多くの島で戦ったらしいですね。

その中で特にそれぞれの力がフィフティで、なかなか決着がつかなかったのが、ガ島戦だったらしい。しかも、人間同士の殺し合いが直に伝わる白兵戦。戦闘機や、戦艦同士でのうちあいだと目の前で人が死なない分、殺人をしている実感が伝わりにくいのです。

『ニューワールド』と同じように前編静かで叙情豊かに自然の風景を織り交ぜて描かれている。戦争映画だというのに。どうも、この監督の作風らしい。

それにしても、出演者が多くて顔が見分けられないし、誰が主人公かもわからない。ちと、辛いですな。

そして、こちらの映画でも、やはり『ニューワールド』と同じように『やさしすぎる男』が出てくる。
ストーリーの中で、日本軍のトーチカ攻防の最前線を突破しなければならないC中隊を指揮する隊長さんがそうでした。

この隊長なんですけどね。自分の隊の兵が怪我すると、そこで立ち止まって一人兵をつけてあげるし、もう死ぬしかない苦しんでいる兵を命がけで助けに行こうとする。もう、目の前の数メートルで決着がつきそうなのに、無理やり突撃すれば、自分の兵達が死んじゃうだろうと言って、まごまごしてるし。いいんですかね。そんなにやさしくて。そこまでやさしいとそのやさしさがあだになってかえって隊が全滅なんて事になんないのですか。っと思って見てたら、業を煮やした指揮官がやってきて、もうがががっと突撃させちゃったのでした。

一体どれほどの日本兵が潜んでいるのか、ほとんど情報のない状態での突撃なんだから、もう、怖いのなんのって。そりゃそうだわよね。つくづく情報って大事ですね。実際にはこの時の日本兵はわずか数百人と、数千人の技術者がいただけ。落としてみれば日本兵はぼろぼろだったのです。

この映画のすごいところの一つが日本兵がちゃんと日本人!!だってことだ。
西洋映画にでてくる日本人て日本人の目から見るとほとんど、「まちがってるよ。ちがうだろ。ぜんぜん日本人じゃないですけどー。」っていう感じなんですけど、この映画にでてくる日本人はちゃーんと日本人でした。いやこんなことに感激してても始まらないけどね。でもね、ちゃんと日本人らしいことでこの映画のリアリティが説得力を増すのですよね。

日本軍を落としたところで先ほどの優しすぎる隊長は、指揮官によって除隊勧告をうけるわけですね。この隊長、優しすぎて軍隊に向かないって事ですね。頭はいいし、判断力もあるし、人情も厚いし、勇敢だし、いい男なんだけどねえ。で、この隊長がどのくらいいいやつだったかって言うのは、この後、後半で新しく隊長になったやつがすごーく無能で判断力なくて、意気地もなくって、結局自分の隊を孤立させてしまって、C中隊は日本兵に囲まれちゃうんですよね。しかも、部下が必死に進言してるのにそれでも、わかんないのだモノ。

ところでこのやさしい隊長さん。部下に向かって「君達はみんな息子だと思っている」とか言いながら、でも、「自分はアメリカに帰りたいんだ」とか言って喜んで帰っていってしまうのですね。おいおい。それってどういうこと。何気にホリエモンとその側近達のやり取りに似てなくもないような。しかも、まだガ島戦、終わってないんですけどー。
途中でいなくなっちゃうあたり、『ニューワールド』のジョンスミスと似てます。でも、この隊長さんの優しさ。男にとって、そして戦場においては疎まれるものではあるけれど、女性だったらたぶんほとんどの人たちが当たり前のように持っているものなんだけどな。


ところで、いままで、数々の戦争映画作られてきましたけど、こんな風に最後まではっきり戦いの決着がわかりにくい映画も珍しいですね。というそのあたりがまさに監督の狙いなんだろうと思うのですけれど。

戦争映画というのは必ず敵をやっつけて、味方が勝って「やったーすっきりー」という痛快活劇のような終わり方多いですよね。たとえば今までで一番多かったのが主役アメリカ、敵ドイツ軍で、ぜーったいドイツ軍てのは悪者で、そのドイツ軍をアメリカ軍と連語国側がばしーっとやっつけて痛快に正義は勝つんだって言う終わり方の映画が多かったのです。昔はやった『コンバット』とかね。
それから敵が、がんがん戦闘機から爆撃してきて、味方がばしばしやっつけられて、血を流してのた打ち回って苦しんでて、「なんてかわいそう。ひどい。戦争ってよくないよ」と見る側に思わせるような展開の話の映画。たとえばこないだまで話題だった、『おとこたちの大和』がまさにそれ。

でもね。この『シンレッドライン』はね。アメリカ側から描いてはあるけれど、だから、日本が悪いというような書き方はしていない。激しい銃撃戦の末に相手軍を落としてみれば相手もまた同じ人間で、痛みや死の恐怖におののき打ち震え、ぎりぎりの恐怖と戦いながら、攻防していただけだ。「俺は死ぬ。でも、お前だって死ぬんだ。」どっちもいつかは死ぬ、同じ人間なんだ。同じようにに戦争が怖くて、仕方なくて戦っている同じ弱い人間なんだ。

今までの戦争映画には描かれていなかった。戦争といえども、人間を傷つければ、傷つけた側の人間の心だって傷つく。いくら神様と祈ってみても、神様のためだ、国のためだ、妻や恋人のためだと自分の心に言い聞かせてみても、人をきづつけ、殺したその心の苦痛を癒すこともごまかすこともできない。たとえそれが自分が戦場で生き抜くための唯一の手段だとしても、どんなに名誉だ、勲章だと言われて見ても、そんなもので人をきづつけ殺した心の痛みが癒されるわけもない。

けれど、その基本中の基本が今までの戦争映画に描かれてきたことはあったのだろうか。

反戦を訴えていながら、そこにはあくまで、ほらね、味方がこんなに痛い思いしないとなんないんだよ。だから、戦争はやめた方がいいよねというような表面的なテーマを元に戦争という材料をおもしろい娯楽作品として味わっていたものがほとんどだったのではないだろうか。

この映画を見た感想として、「冗長で、メリハリもなく、ラストもだらだらと終わってつまらなかった」というのなら、それは映画を見終わった感想として、戦争はよくないねといいながら、結局は戦争映画という娯楽を楽しんできただけなのであって、まさに映画制作者サイドの思う壺にすっぽりとはまっていただけだったのではないだろうか。

戦争が本当に本当の意味でなぜいけないのか。
もういちど、この映画を見直して考えて欲しい。

さらに、ところでですが、私はまだ、『プラトーン』も『地獄の黙示録』も見てないです。今度見てみよう。これらを見るとまた、感想が変わるかもしれません。

『シンレッドライン』その2 もお読みください。



シン・レッド・ライン


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最終更新日  2011年12月14日 10時26分07秒
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