ふつうの生活 ふつうのパラダイス

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2006年09月16日
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カテゴリ: 読書ノート



子どもの危機をどう見るか


子供を育てる上で家庭のもつ役割は大きい。しかし、現代その家庭のあり方が大きく変容し、子供を正しく育てる機能が失われつつあるのではないかというのは、この著者のみならず、現在多く言われていることでもある。

その理由として、あげられるのが、

携帯の普及。
子供部屋の充実。
朝食の孤食化である。

そして、家庭のホテル化であると、尾木氏は述べる。
その結果、家族のコミュニーケーション不全に陥っていると言うわけである。

しかし、この文章を読んでいくうちに、なんとも理想化された幻影とも言える家族像にいささか不可解なものを感じざるを得なかった。この中にそして今世間一般に語られる、「家族が仲良く、みんなでそろって食事をし、楽しく会話をする家庭。」こんなものは、昭和中期のごくわずかな期間にしか存在しなかったのではないのか。とも思う。

かつて、たとえば江戸時代であれば、子供は十歳前後で丁稚奉公に出されたのだから、家族どころではないだろう。
あるいは、極貧の農村では、女の子は売り飛ばされたわけだし、農家だって仕事に忙しくて、家族でいつも楽しくにこやかに食事をとっていたとも思えない。
あるいは、一家の主人だけは奥の間で一人だけ食事を取っていたりもしていたろう。

ちなみにどうして著者はこんなに朝食にこだわるのだろう。イマドキ朝食を家族と一緒に食べているサラリーマンなんているんだろうか。あるいは、朝練で早い中学生や、高校生。むりじゃないですか。

朝食がだめでも、夕食さえ、一緒ならよろしいのではないかと思いますが、もっとも、今は、それすら怪しい。父親は残業で、子供は部活や塾でやっぱり家にいないからだ。
最も尾木氏は、同じ家の中にいながら、家族が別々に別々のものを食べていることを嘆いているのだが。

しかし、これだけ食品が豊富になってくると、家族全員が同じものを食べようとすることすら難しい。
ちなみに私も家族全員の食の好みのずれに毎度四苦八苦である。誰か一人が嫌いなものはどうしても食卓に出しにくいし、好みが見事に全員違うからだ。それでも何とか一人が我慢することでメニューを組み立てるしかないこともある。


子供たちの物に対する判断基準 』を育てているのは、『 物欲をあおる消費文化 』であるその以前に、それらの消費文化に洗脳されて、ためらいもなく、子供に携帯やゲームを買い与え、子供部屋にテレビやパソコン、暖房器具まで完備して、物欲を当然のこととして教えてしまう親にこそあるのではないのか。

かつての親には、子供の欲望に対して、「そんなものはいらん」と毅然と拒否しうる強さがあったように思う。

この問題は、一見人間だけの問題のように見えるのだが、実は、気づかないうちに、 資本主義 物質文明 が家庭の中にまで浸透し、家族という人間関係を崩壊しはじめていることに、誰も気づいていないというところにある。

物欲をあおる消費文化 』の中に生きているからこそ、それらに洗脳されずに自身の意思で選びとっていく判断力、意志力を育てる立場にあるのがまさに親であると思うのだ。しかし、それが親の仕事であるはずのものでありながらに、実際には物を与えてしまっているというそのあたりのいい加減さゆえにこそ、家族関係の希薄、家庭のホテル化が起きるのではないのか。

時代の文化を否定する以前に、その世界で生きていかなければならない子供たちに対して、その処世術、自身の欲望との向き合い方を教える事こそが現代の親の務めといえると思うのだが。

安易に時代を批判してみても始まらないのではないか。
それは、どんな時代であっても、常に生きていくのは困難で、待ってましたといわんばかりに生きやすい、都合のいい社会なんてものは、有史以来ほとんどなかったのではないのだろうか。

ちなみに、我が家には、子供用寝室はあっても、子供部屋はない。パソコンはリビングに一台きりで、家族共用。携帯は一台きりで、子供は持っていない。当然テレビを子供部屋に設置するなんてこともない。でも、実は家の中にテレビは三台ある。やはり、信じられないほど安価になったテレビは、一家庭にこれだけ存在する。つくづく物質文明を感じないわけにはいかない。

ついでに書くと、この文章の中で尾木氏はテレビ礼賛の文章を書いている。かつては、 一台しかないテレビ によって家族が同じ時間、同じ空間、同じ話題を共有できたということだ。一昔前、教育関係者、評論家、専門家が口をそろえて非難し続けたテレビというものが、時代が変わると、懐かしがられ、その価値を評価されているとは、なんとも、お笑いな話である。こののち、家庭のホテル化がさらに進み、 家族という顧客 がホテルにとまりに来ることすらなくなって、外に常泊の『 自宅 』を作り始めてしまったら、現在非難の的となっている 家庭用ゲーム機 は、「とにかく子供を家庭にとどめていてくれたのに」と、礼賛されるようになるのだろうか。なんとも、皮肉な話である。

さて、子供の欲望との対峙もまた、親に求められる重要な仕事である。てか、その辺りが一番重要事項ですね。

ところでこの本は全部読めば、尾木氏なりの結論が書いてあるかもしれませんね。全部読んでませんので。



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最終更新日  2006年09月16日 09時20分07秒
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