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花かりん7532

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2007.01.28
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 昨夜9時過ぎに電話が鳴った。

 母だった。
「お薬適当に送って。残りは誕生日のお祝い。好きなもん買い。お姉ちゃんにやったから、あんたにもな」
 姉の誕生日は今月の21日。私は忘れていたけど、やっぱりお母ちゃん、覚えていた。私は2月。
「もうあんまり、あげる機会が無いからな」
 私は昨年のお盆から全然訪ねていない。
「お葬式は、こんなけあったら足りるやろ? て、お姉ちゃんに言うててん」
 自分のお葬式は、自分が予算組んでも仕方ないのに。叔父は沢山お金を残したけど、50万円のお葬式しかしてあげなかった。「戒名はお坊さんにつけてもうて」と言っていたのに私が付けた。その代わり、「要らんで」とボケる前に何度も言っていたお墓を建てた。死んだヒトの住む処や世話は、生きている者が自分のいいように采配する。

「お風呂、入ってるよ」
「お風呂で死ぬ人、多いねんて」
「ああ。テレビで言うてたなあ。ツウちゃんの友達も、暮にお風呂で死んだからね」
「すべって引っくり返っても、怖いよ」
「うん。気ィつけて入ってる」
「ヘルパーさんに、ケア・センターのお風呂へ連れて行ってもうたらええのに」
「ヘルパーさん。掃除してくれはる」
 ちゃんと聞こえているのか、適当に返事しているのか……
「湯船が深こうなってなァ、底に敷くスノコ作ってもうた」
「お湯を少のうしたらええのに」
「お湯は、普通に入れてる」

「-----耳がまた遠なってな、お姉ちゃんは25万円の補聴器を買い言うねんけど、考えてるねん」
「買うたらええやん」
「うちの補聴器屋さんは、15万円以上は贅沢品や、言わはる」
 いつも同じことを言っている。姉は、「お母ちゃんが使わんようになっても、あんたが使うやろから、上等のん買うたらええのにね」と言う。姉は目が悪い代わりに耳が良い。私は目が良くて耳はあまり良くない。4年前、タンスを叩き壊そうとして鼓膜がおかしくなったから、時々人の言うことを聞き取り損なう。NHK朝ドラ「芋タコなんきん」の主題歌、毎日聞いても歌詞がはっきりわからない。出だし、「一人より……」は「しぶいろの……」としか聞こえない。全部聞いても半分しか判らない。どっちにしても、あのドラマに合った歌ではないと思う。
「そやけどな、お風呂で死んだらラクやで。きれいしな」

「そうやなあ。お風呂も入れてもらわんと、おムツも替えて貰わんと、死んではったな、こないだ。リウマチのおばあさん」
「リュマチは、お箸もちゃんと持たれへんのにね」
「身体が動けんようになるまでに、民生委員の人に相談しはったらよかったのにな。自分の子供が頼りになるかならんか、わかれへんかなあ。ああいうのんも、なんかの因縁やろな」
 先に亡くなったご主人かその両親をどんな風に扱ったかということも、聞いてみなければ判らない。因果応報ということは、必ずある。
「お母ちゃんは、毎日誰かが覗きに来てくれはる。今日も○埼さんの娘さんが、お餅やリンゴ持って来てくれはった。ヘルパーさんは、週三日来てくれはるしな------ヘルパーさんは、二タ月毎にお薬分けてくれ、言わはる。ご主人、胃潰瘍で入院せんならん、言うてはったのに、もう入院せんでもええようになったんやて」
 信じる人は救われる、だな。
「お母ちゃんが若こう見えるから、このごろは顔にもせいだい塗ってはるわ」
 よく気の合うヘルパーさんが来てくれて良かった。もう、二年以上になるようだ。最初のヘルパーは、「おばーちゃん、ご飯食べた?」というような口の利き方をするから嫌いだというので、私が断った。今来てくれているヘルパーさんは、50歳過ぎているが「おばーちゃん」と言わず、ちゃんと苗字に「さん」をつけて呼ぶ。
 90歳過ぎても、「おばーちゃん」と呼ばれるのは嬉しくないものだ。
「お母ちゃんは、あんなことにはなれへんと思うわ。なんにも心配ないからありがたいなーと、感謝してる」
 母がなんの心配もないから私も心配要らない。
「いま、ボケ老人の話してるよ、12チャンネル」
「そう。ほんなら見るわ」
 ちょっとトンチンカンかも知れないけど、会話出来ている。  





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Last updated  2007.01.29 02:44:18
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