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2003.10.12
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カテゴリ: 書籍と雑誌
【さらに追記】

 地元のラジオ局に三浪中の陽水さんがオープンリールのテープを持ち込んだのだそうです。
 それで地元のラジオ番組で人気が出て、デビューが決まったと。
 詳しいことは書けませんが、いろいろ時代の雰囲気を伝えてくれる、懐かしいメールでした。

【追記】
 ソノシートが何なのかわからない方。
「ソノシートとは」 を御覧ください。
鉄腕アトムのソノシート は買ってもらった覚えがあります。



井上陽水さんはヒット曲が多いのですが、私の一番好きな曲は「桜三月散歩道」です。

この曲は元々、赤塚不二夫さんの個人誌『まんがNo.1』の付録ソノシート用に作られた曲です。
1973年のことです。
あ、もう30年も経っちまった。

まんがNo.1作詞がフジオプロのブレーン、長谷邦男さん。
というより、長谷さんの詩集の一編を陽水さんが選んで、曲を付けたものです。

長谷さんは妙に知的なマンガを描く人で、フジオプロの知性担当、あるいは狂気担当だった方です。
雑誌『COM』で長谷さんが『ライ麦畑でつかまえて』のパロディを描いているのを読んで、おもしろそうなのでサリンジャーを初めて読んだのだったと思います。
本末転倒なんですが、いまだに『ライ麦畑でつかまえて』を読むと、長谷さんのマンガが浮かんできます。
待てよ、『赤頭巾ちゃん気をつけて』も、そのマンガで揶揄してあったんじゃないか?


『まんがNo.1』の付録に入っていた「桜三月散歩道」は、歌詞も台詞も今聴けるものとは違います。
台詞を語っているのも、ポリドールのミキサーさんだったと思います。

普通なら四月ですね、桜の散歩道。
三月に川辺で散っていくのは、狂った桜なのかもしれません。
ただでさえ死や狂気と結び付けられることが多い桜ですが、ここではさらに桜がおかしくなっています。


狂った恋が好きなんだろうな。
まあ、普通の恋でも恋は狂うものらしいが。
天上天下唯我独身の幻泉館主人ですが、いつだって狂ってます。
そう、男だって灰になるまで、ハイになるまで。
(原因と結果が逆だな。こんなことばっかり言ってるから独身なんだ。)

私の好きな小説に、P.K.ディックの『火星のタイムスリップ』というのがあります。
すごいタイトルでしょ、「火星」で「タイムスリップ」よ。
もう本当に三流空想科学小説という感じ。
実際に舞台は火星で、タイムスリップが描いてあるんだから、そのまんまのタイトルなんですが、それでもやっぱり悲しい傑作なのですよ。

この作品では分裂病に関して独特の解釈がなされています。
ディックによれば、病者は時間の流れ方が違うだけなのである。
時間の流れ方が違う世界があれば、病者はそこで自然に暮らせる。
だけど、それぞれの世界は互いに認識することができない。
病んだ少年を、父親がその時間の流れ方の違う世界へ送り出す。
こんな論理で意識と存在を逆転させてしまうのが、ディックの手法です。

実際ディックも関係妄想とか被害妄想があったようで、事実はよくわかりませんが、少なくとも本人はFBIと孤独な闘いを続けていたようです。
ただ、ディックの場合はそれが独特な作品世界を形作り、傑作群を生み出していったわけですね。
幻泉館主人も普通の感覚とは時間の流れ方が少し違うのかもしれません。
でも、傑作を生みだしたりしないのが悲しいところですな。

ほら、またどっか行っちゃう。
話を『まんがNo.1』版「桜三月散歩道」に戻します。
肝心なところは、私はこの雑誌&ソノシートを持っていたのです。
ところが、捨ててしまったのです。
1977年に井の頭から早稲田鶴巻町に引っ越す時、ゴミとして出してしまいました。
その時に小さな本箱も捨てたはず。
大失敗。
いつでも聴けるだろうと思ったこの録音は、もう聴けないようなんです。
現行バージョンもいい曲なんですが、元の録音をもう一度聴きたいなあ。

去年の11月、ヤフオクに出品されたのを見かけました。
開始価格10万円。
これでは手が出ません。
さすがに入札は皆無で、その後も同じ人から時々出品されています。
う~ん、聴きたい。

六文銭と吉田拓郎さんを中学3年の時隣町に見に行きましたが、高校1年生になった僕はその翌年、1972年に陽水さんを見に行きます。
今度はのんびり市にある銀行の小ホール。
陽水さんは、既に「ぼくの好きな先生」のヒットを出していたRCサクセションと一緒にやってきてくれました。

RCサクセションは、やたらにお飾りを付けた、変なフォークグループでした。
ん? フォークか?
楽器こそアコースティックなんだけど、もっと壊れた、妙に力強い、変な楽曲でした。
それに、清志郎さんの歌い方がすごく変なんです。
普通のリズムから少し外れるんだよね。
声も歌い方も奇妙で、でも日本語がはっきり聞き取れるのが、清志郎さんのボーカルの不思議なところ。
言葉は明快なんです。
だから、古井戸にいたチャボ(仲井戸麗一)が参加して80年に「雨あがりの夜空に」で大復活を遂げた時も、音には違和感がなかった。

一時期マスコミから消えていたのは、陽水の引き抜きにホリプロが意趣返しの形でRCを手元に残して飼い殺し状態にしたのだそうな。
完全に「ホサれた」のですね。
その間、福生の米軍ハウスにこもったのだが、破廉ケンチが鬱状態になり、日隅クンが自殺、いやあ、大変だったんすねえ。
清志郎さん、その頃のこと語らないものなあ。

RCサクセションのオリジナルメンバーは忌野清志郎(vo/g)、小林和生(りんこわっしょう b)、破廉ケンチ(g)の三人です。
ただ、のんびり市にやってきた時はわっしょさんが都合が悪くて来られず、「たかりんご」氏がベースをやってました。
誰なんでしょう?

さて、話を井上陽水さんに戻すと、拓郎さんの時と同じように、独りだけでも十分に迫力のある弾き語りでした。
ただ、拓郎さんのようにおもしろおかしい語りはありませんでした。
「人生が二度あれば」などは、ライブアルバム『もどり道』(1973年)のあの雰囲気です。
大ヒット「夢の中へ」(1973年)より前なので知名度は低かったのですが、拓郎さんを観に行った時よりも人が多くて、熱気がありました。
時代が変わりつつあったのです。

実はこの人の曲は中学生1年生の時に知っていました。
聴いたことはなかったのですが、雑誌に「カンドレ・マンドレ」の楽譜が載っていたので、自分で歌ってみたのです。
変な曲でした。
歌っている人も、「アンドレ・カンドレ」という変な名前の人でした。
それが井上陽水と同一人物だと知ったのは、コンサートを観た数ヶ月後のことでした。

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Last updated  2004.11.04 02:35:15
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