時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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July 11, 2007
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 岡山には一つの伝説が残る。温羅(うら)伝説である。温羅は元々は百済の王子であり、岡山県総社市の鬼城山(標高397m)に遺跡が遺る鬼ノ城を根城にして、悪行を重ねていたという。そこで、温羅を討伐するため、崇神天皇が、四道将軍(よつのみちのいくさのきみ)の一人である吉備津彦命(きびつひこのみこと)を派遣した。吉備津彦命が陣を構えたのが、現在の吉備津神社である。戦いの末、温羅は吉備津彦命に左目を射られ、雉に化けて逃げた。命が鷹になって追いかけると、温羅は鯉になったので、命は鵜になって、これを捕らえた。この伝説に関係して、矢喰神社、血吸川、鯉喰神社などが今も残っている。温羅の首は、吉備津神社の釜殿の釜の下に埋められた。この温羅の首が釜を鳴らすと言われ、それにより吉凶を占うのが今に伝わる鳴釜神事である。

 この吉備津彦命が桃太郎であり、鬼とはもちろん温羅のことである。しかし、本当に桃太郎がヒーローで、温羅は悪い鬼だったのだろうか。歴史は常に勝者の側から書かれるのである。

 この温羅伝説をモチーフにした薀蓄系ミステリーが 「QED 鬼の城伝説」 (高田史:講談社)である。

 岡山市役所の観光課に勤めている妙見明日香の婚約者、鬼野辺健爾が鬼野辺家の土蔵で殺される。この鬼野辺家にも、釜鳴りの言い伝えがあった。ただし、こちらは、釜が鳴ると主が死ぬというのだ。

 ジャーナリストの小松崎良平は、明日香の友人の百田優子と猫村吉子から事件についての手紙をもらい、桑原祟や棚旗奈々とその妹の沙織を誘い、岡山に赴く。ただし、崇は、遅れてくるので、この作品の半分以上は、崇以外の三人の活動になる。

 前半、三人は百田優子と猫村吉子に吉備路を案内されている。この二人、やたら吉備地方の伝説や歴史に詳しく、只者ではないと思っていたが、結局普通の人だった。このあたりは、内田康夫の作品のような旅情ミステリーの雰囲気がたっぷり漂っており、いつものような薀蓄ミステリーの感じはあまりない。やはり、真打の桑原崇が出てこないと、雰囲気が大分違う。崇は、後半でやっと岡山にやってきて、いつものように、ひとしきり温羅伝説に関する薀蓄を述べて、そのついでに現実の事件をも解決してしまう。

 奈々の妹沙織のキャラクターがなんとも魅力的だ。スピンアウトの物語をつくれば、結構面白いのではないだろうか。


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QED鬼の城伝説(高田史:講談社)



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Last updated  October 19, 2009 07:22:17 PM コメントを書く
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