時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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April 6, 2009
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「影踏み」 (横山秀夫:祥伝社)は、警察官とは対をなす泥棒が主人公だ。泥棒を主人公に、哀しく切ない人間ドラマを描いたのがこの作品である。

○「影踏み」(横山秀夫:祥伝社)


 主人公は、真壁修一。「ノビカベ」と異名をとるノビ師である。ノビ師というのは、深夜人が寝ている住居に侵入して、家人に気づかれずに盗みを働く者を言うらしい。人のいる住居に忍び込むのだから、空き巣などよりはそのリスクは遥かに高い。彼がノビ師になったのは、一卵性双生児の弟が受験に失敗してコソ泥になり、それを悲観した母親が家に火をつけて弟と心中したためだ。真壁の父親も、その時に、二人を助けようと火に飛び込んで煙に巻かれてしまったのだ。彼には、思い合っている女性がいる。しかし、死んだ弟もその女性を好きだったため、彼女の所に戻る決心がつかない。こんな設定だけで、浪速節に案外と弱い私のような者にはたまらなくなってくる。

 二年ぶりに出所した真壁は、逮捕される前に忍び込んだ稲村家のことを知らベ始める。侵入した際に、女が夫を焼き殺そうとしているということを感じたのだ。焼け死んだ弟の無念が彼を執拗に動かしたのかもしれない。ところが、その女の情夫となっていた幼馴染の刑事がドブ川で溺死した。次々と事件に巻き込まれる真壁であるが、得意のノビ師の技術を使い、事件の真相を追い求めていく。

 真壁には、弟啓二の魂がいつも付き添っている。真壁は見えない弟と、普通の兄弟のように会話し、いっしょに行動しているのだ。本当に弟の魂がそばにいるのか、それとも、真壁の心が作り出した幻のようなものかは、私には分からない。<双子というものは、互いの影を踏み合うようにして生きているところがある>、最後に踏むべき影を失くしてしまった真壁だが、この後はどんな生き方をするのだろうか。

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Last updated  April 8, 2009 08:51:27 PM コメント(8) | コメントを書く
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