忘れ去られた改革 ・・・旧ソ連・ペレストロイカから30年/6止 報道統制し民意操作 政権支持9割は「神話」 2015-12-22 毎日新聞
ロシアの主要民放局NTVの記者(32)が今年6月、突然辞職した。 「長年、プロパガンダ報道をしてきた。許してほしい」 とフェイスブックに理由を記した。今月14日には、国営テレビのプロデューサー(31)が、反政権派のサイトに 「ロシアについて『すべてよし』と、ウソを言い続けて疲れた」 と書き、辞職を公表した。
プーチン大統領は2000年の就任後、メディアを国営企業の傘下に置き、 報道を統制 した。その結果、 政権批判が新聞やテレビで報じられることはなくなった。 声を上げてテレビ局を辞めた2人の情報は、ネット上だけで拡散した。 NTVの元同僚に感想を求めると、「自分には妻も幼い子供もいる」といら立ちをあらわにしてコメントを拒否した。
プーチン氏は 9割近い支持率を維持 し、盤石の統治体制にみえる。だが、1990年代半ばにエリツィン大統領の内政担当補佐官として民主化路線を進めたゲオルギー・サタロフ氏(68)は 「その数字は神話だ」 という。
政治問題のシンクタンク「インデム」の所長を務めるサタロフ氏によると、 「完全支持」は4割。残りの「おおむね支持」は「無関心層」という。 「聞かれれば、『支持』と答えるが、本心は明かさない。政権を批判的に捉えている可能性もあるが、支持層にくくられている」という。
サタロフ氏は今年9月の統一地方選で「変化の兆候」を感じた。中部コストロマ州の州議会選に立候補した反プーチン派の若手指導者イリヤ・ヤーシン氏(32)のことだ。
今年2月、クレムリン(露大統領府)付近で暗殺された野党指導者ネムツォフ元第1副首相の遺志を継ぎ、 「プーチン体制打倒」 を訴える。現地でその選挙活動を観察したサタロフ氏によると、年金生活の女性たちから「かわいい子だ」と人気だった。「なんでそんなにやせているの。うちで食べていきなさい」と声をかける人もいたという。
プーチン政権支持層の中核は、 こうした地方に住む、国営テレビのみを情報源とするタイプの人々 だ。「この層が変わればどうなるのか」 −− 。そう自問するサタロフ氏だが、「これが変化に結びつくかはまだ判断できない」という。結局、ヤーシン氏は得票率わずか2%で落選した。
旧ソ連で改革路線「ペレストロイカ」を推進した ゴルバチョフ元ソ連大統領 は11日の毎日新聞とのインタビューで、 プーチン政権の「反民主的傾向」を厳しく批判 した。その上で 「ペレストロイカは過去に戻れないほどの深い変革をもたらした。投票や思想、信仰、外国渡航の自由、そして豊かになる自由といった成果は、もはや人々から奪い取ることはできない」 と語った。
欧米との対立が深刻化し、経済環境が悪化に向かう一方の今、政権側は民の反感の高まりを警戒している。来年末に予定されていた露下院選挙は来年9月に前倒しされた。国民が休暇を楽しむ夏に選挙運動期間をぶつけ、野党の活動を無力化しようとする動きだ。
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