まだ寒い初春のいつもの散歩道、梅園に咲く綺麗な梅の花、
僕の頭の中は白い花で一杯になり、梅の香りが鼻から体を包み込む。
いつもの僕は、梅園に張り巡らされた2メートルもの有刺鉄線を飛び越える
勇気を仕舞い込む冷静さを持ち合わせていた。
今朝は、鉄線を飛び越える勇気を持っていた。
厚いトレーナーに隠れた体がズタズタに傷つきひりひりするような痛みも感じず、
無意識に忍者のように!
桃源郷の家にどうして帰ったのか、
オンナが血だらけのトレーナーを脱がし、傷だらけの僕の体を一生懸命拭いている、
大きなクリスタルガラスの花瓶に一輪の白い梅の花、蜃気楼のような薄れた意識の中に!
それっきり、僕の意識は無くなった。
どれぐらいの時間が足っただろうか、
意識が戻ると同時にひりひりする痛みが体全体を襲う、
洗濯したての青いコーデュロイのポロのパジャマを脱いだ裸には、
イソジンで消毒した無数の引っ掻き傷があった。
窓の外は、日もすっかり暮れ夕闇が迫っている、
蛍光灯の明かりをつけ少し
寒いので電気ストーブのスイッチを入れる。
空腹を感じるのと同時にいつものカン高い声
「おなかすいたね! 今晩の夕食は、もんじゃ焼,
玄関の梅の花綺麗よ!、よく、梅園の有刺鉄線乗り越えたわね!
管理人さんと一緒に見に行ったけれど殆ど超えるの不可能よ!
あなたは、傷だらけのおばかな忍者さんよ!!!」
いくら思い出しても、
どんな方法で鉄線を乗り越え白い梅のついた枝を持ち帰ったのか
記憶が無い、
家族と仕事を失って半年が経っていた。
その後も、奇妙で不思議な行動が僕を襲っていく__________________
そして、玄関の大きなクリスタルガラスの花瓶には
白い綺麗な梅の花がはっきりと見えた。
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