♪ エネルギーのすべて自給を旨とするそんな素敵に会いにゆきたい
川合健二氏が、1960年代末に4年ほどの歳月をかけて愛知県豊橋市大脇町に自ら設計してつくった自邸。コルゲートパイプという土木用資材を使った革新的な家で、「ドラム缶」「鉄の家」と呼ばれて多くの建築関係者に影響を与えて来たもの。
川合健二は建築家ではなくエンジニア、冷凍技術で名を成し、丹下健三が東京都庁(壊されてしまった有楽町にあっほうのもの)の設備技術者として抜擢、香川県庁舎などもいっしょに手がける。
1913年愛知県豊橋生まれ。科学者であり設備設計家、そしてプラントエンジニア。1958年丹下健三設計の「(旧)東京都庁舎」で設備設計家としてデビュー。その後、丹下建築の設計を数多く手がけ、「図書印刷原町工場」(1958年)で建築学会賞を受賞。また、科学者として日本初の吸収式冷凍機を設計。プラントエンジニアとしては、1971年ディーゼルエンジンによるエネルギープラントを設計している。1966年、暗渠に用いられる土木用鋼鈑であるコルゲートを用いたに自邸「川合健二邸」を建設。大きな話題となる。その自邸にて亡くなる直前までクリーンエネルギーに関する研究を続ける。1996年12月26日没(83歳)。
下面にコンクリートを流し込んで重石として砂利の上にぽんと載せただけの家。
パイプの両端を鉄板をハニカム構造にした面で覆い、南側はふさぎ、北側はガラスがはめ込まれている。内部は、床は鉄の平板、ステップ状に平場が組まれ、トイレも風呂も部屋としての区切りが一切なされていない。
基礎を持たないことから、竣工当時は建築基準法の適用外にあったという伝説があるという。
北側の窓
「川合健二マニュアル」
川合健二は、この1800坪の敷地で自給自足の生活を夢見ていたという。科学者として、工業化製品を使い、住宅をきわめて安いコストでセルフビルドで作ることも願っていた。
東京オリンピック(1964年)を契機に、高度経済成長に突入していった時期に、その先の先を見越してエコを追求していったことは如何に反逆の精神の持ち主だったかを窺わせる。
実際のコストは、構造体=コルゲートパイプ 100万円、家具類 100万円、木工事 50万円 設備 50万円、その他 30万円およそ330万ほど。1966年とはいえ、驚異のローコストだったという。
エンジンで発電して蓄電池に蓄えることを考え、自分の家が電線や水道管や下水管で国家につながれているのを、自由ではないと感じていたとか。それはまるでヒモにつながれた犬のような生活だと。
家の中にはデザイナーなら誰でもが知っている、有名なモダンデザインの
家具類にあふれているのだという。
この住まいの内部にはトイレ・浴室を含めて扉が一切なく、大きな吹き抜けの空間から上下の居間・そして個のスペースへと空間のつながりが保たれたまま分節されている。
コルゲート剥き出しのとても無骨な材料と、装飾的な要素を排した直截な表現。空間の分節とスケール感、そして様々に置かれた家具・照明・書物などがあいまって、とても濃密で豊穣な空気が漂っているという。
室内見取り図
この建築をもとに、後に建築家・石山修武のデビュー作である「幻庵(1975年)」など多数の後続が生み出されていった。
「コルゲートハウス」の数々。 右上が「幻庵」
「幻庵」の側面
コルゲートパイプは、軽量で高い強度をもち、施工が簡単で、経済性に優れ、運搬・保管に便利なうえ、耐用年数も優れているという。
今でも新しいコルゲートハウスが次々と造られているようだ。
独学で技術を身に付け、独自の哲学を持って理想の住まいを追求し、自給自足を目指した先見と具現の哲学者。自分の家が電線や水道管や下水管で国家につながれているのを「ヒモにつながれた犬のような生活」と言った彼の言葉には、私も心情的には大いに共感できるものがある。
今ならかなりのクオリティーでエコを実現できるが、当時は理想のようにはいかなかったようだ。
高度成長期に入り始めた時期に比べ、モノが溢れて比較にならないほど便利になった今の時代。
何も無かった時代に比べて人間の中身が、却って薄く、そして軽くなった。それは、どの分野においても言えること。
彼は 「自分の頭で考えよう。自分の足で歩こう。自分で自分を育ててゆこう。それこそが、人生の喜びであり、究極の目標である」 と言っている。
◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題してスタートすることにしました。
★ 「ジグソーパズル」 自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)
☆ 短歌集 「ミソヒトモジ症候群」 円居短歌会第四歌集2012年12月発行
● 「手軽で簡単絞り染め」
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