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2011年05月31日
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カテゴリ: 小松英星

アメリカ の計画は、プルトニウム在庫の約半分、50トンを25年かけて処分するというものです。その総費用は22億ドルと見積もられています。処分の方法は、ハイブリッド方式(両面作戦)すなわち、(1) MOX といわれるウラニウムとプルトニウムとの混合燃料に加工して、 商用原子炉で燃焼させる方式 と、(2)セラミックを混合して固めたプルトニウムを、原子炉から出る放射性廃棄物に混ぜて、大型の容器(キャニスター)に詰めて 「無力化」する方式 との、組み合わせです。プルトニウムの資源化に固執するロシアとの妥協点を探るうちに、この形に落ち着いたのです。このため、MOX燃料の加工施設を新たに造る必要があり、また、責任部署の米エネルギー省(DOE)は、商用炉の所有者ではないため、アメリカでは実績のない 「MOX燃焼」の民間展開に伴う、安全性や経済性の問題など、前途に多大の困難が予想されます 。DOEは、1999会計年度(98年10月ー99年9月)の予算としては、約1億7千万ドルを要求しています。これには、ロシア支援のための費用も含まれています。

ロシア のプルトニウム在庫は、アメリカの2倍以上と言われており、同国の経済事情を考えれば、この計画の遂行には、アメリカ以上の困難が予想されます。しかし、そもそもこの話は、両国がほぼ同等のペースで「余剰プルトニウム」の処理を進めなければ、アメリカの当局者が言うように、一方の当事国が「戦略的に不利な」立場に追い込まれるので、成り立たなくなります。このように考えると、 実際の処理期間は、計画より長引く可能性が強く 、その間、世界は「余剰プルトニウム」の脅威に曝されることになります。

この状況の中で、依然として、英仏を先頭とする各国が「使用済み燃料」を再処理して、プルトニウムの在庫を増やし続けています。 核弾頭から取り出された「兵器グレード」に対して、「原子炉グレード」という違いはありますが、その差は、前者の方を「核弾頭設計者が好む」、という程度のものだと言われています。これは、印パの「再処理」への執着を見れば、明らかでしょう。このため、「核」のすべてを知るアメリカは、上記の削減対象に、過去(再処理をやらないことに政策転換する以前)に「再処理」で得られたプルトニウムも加えたのです(1994年6月27日の記者会見で、米エネルギー省の長官が、「原子炉グレード」のプルトニウムを武器として使用する実験に、既に1962年に成功している事実を明らかにしています)。

イギリスが、セラフィールドの再処理工場で取り出したプルトニウム在庫は、既に50トンあります。あと10年で、2倍の100トンになると言われています。これは、ほぼ原爆10,000発に相当します。いったい、これをどうしようというのでしょうか? 政府も、電力会社も、 信頼できる将来計画を何も持たず、深刻なリスクを冒し続けている のが実態です。この状況は、フランス、ドイツ、日本なども、全く同じと言ってよいでしょう。

日本の「再処理」は、東海村の実験的な施設で処理する分を除いて、大半を英(セラフィールド)、仏(ラ・アーグ)に委託してきました。よく知られているように、委託生産したプルトニウムを受取るとともに、発生した放射性廃棄物も引き取る義務があります。 米、仏に次ぐ、世界第3位の「原発」保有国の日本は、すでに事実上、英、仏に近いプルトニウム在庫を保有しています (1994年から始めた、プルトニウムの需給見通しの公表は、ここ3年連続で中止しています)。更に、青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場が完成すれば、「プルトニウムの自給体制」が確立することになります(この施設は、当初計画より5年延期して、今のところ2005年7月の稼動予定となっています)。

高速増殖炉が破綻した現在、プルトニウムを「平和的に」利用する手段は、ウラニウムとの混合燃料つまりMOXを、現有の軽水炉で燃やすしか手段がありません。 「MOX燃焼(日本では一般に「プルサーマル」と言われる)」の安全性については、まだ十分の評価が確立しておらず、アメリカを初め各国も、全面的な実施については極めて慎重です。日本の一部の電力会社が、実証試験を省略して、短兵急に実行しようとしているのは、情報公開とアセスメントについての、日本特有の社会的システムの脆弱性に便乗しているに過ぎません。そもそも、 再処理のコストとMOX燃料への加工コスト(ウラン燃料の4~6倍と言われています)を考慮すれば、「MOX燃焼」が全く採算に乗らないことは、世界の常識です 。政府からの補助金(または電力料金への転嫁)があって初めて成り立つわけですが、再処理が無ければ(プルトニウムが無ければ)、やらないで済むことなのです。「核拡散」の問題があって、溜まりすぎたプルトニウムを放置できないから、「MOX燃焼」が考え出されたというアベコベの話です。

問題はこれだけではありません。 再処理をやることによって、放射性廃棄物の「カサ」が増える のです。日本でまず問題になるのは、英、仏への再処理委託に伴って返還される、「中・低レベル放射性廃棄物」で、既に返還が始まっている「高レベル放射性廃棄物」の50倍あると言われています。フランスは、全量を返還する方針です。イギリスは、「サブスティテューション(置き換え)」といって、それらを自国内で処理する代わりに、日本に返還する高レベル放射性廃棄物を約15%上乗せする方針ですが、それらを処理するサイトの選定が行き詰まっています。一方、日本での受入先と処理方法は、まだ白紙の状態です。

別の大きい問題は、原子炉から取り出した「燃料集合体」を、冷却のため、4年以上貯蔵するプールの容量です。 日本全体では、原子力発電所の敷地内のプールの容量は、約10,000トンですが、既にその6割は詰まっています。毎年900トンずつ追加されるので、個別の発電所では、パンク寸前のところもあります。これに対して、発電所とは別の場所に、新しいプールを建設するプランもありますが、例えば5,000トンの設備の建設、運転(40年)および解体の費用は、約3,000億円と見積もられています。これらはすべて、電力料金に跳ねかえってくるのです。

その先に、もっと深甚な問題があります。 高レベルの放射性廃棄物を最終的に処分する場所が、どこにも無い のです。「原発」が、「トイレ無きマンション」と言われて久しいですが、その状況は、「最終処分」が具体的な日程に上ってきた現在でも、いっこうに変わっていません(むしろ、何も考えないでスタートしてしまった、と言うべきでしょう)。 国土の広いアメリカでさえ、まだ答えを得ていません。 候補地をネバダ州の"Yucca Mountain"に絞り込んで、地中深く掘ったトンネルの「研究室」で、 その地層(サイト)特有の条件において適合性を検証する「サイト・スペシフィックな調査」 を始めたところです。日本は、北海道幌延町に「最終処分(地層処分)」する施設を作る計画を、地元の合意が得られないため取り下げて、「研究目的」に限定した施設とすることに方向転換しました。しかし、 本当の研究は、アメリカのように、「サイト・スペシフィックな調査」でなければ意味が無い わけで、幌延町を最終処分地にしない以上、「研究」の意味は極めて限られたものになるでしょう。結局この決定は、 日本には最終処分する場所が無いことを事実上認めた ものと言えるでしょう。しかしこれは、日本だけの問題ではありません。

「最終処分(地層処分)」の調査が、最も進んでいるのは スウェーデン です。この国は、アメリカと同じように、再処理をしないで処分する「ワンスルー」方式を採っています。1992年以降、「志願(施設建設に伴なう巨額の投資を期待して)」によって出てきた2地点の、第一次適合性調査を実施しましたが、いずれも、1997年までに、住民投票によって拒否され、残る4自治体を2自治体に絞り込む作業を進めています。






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最終更新日  2011年06月01日 01時55分55秒 コメント(1) | コメントを書く


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