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2007年04月15日
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カテゴリ: ポンポコ日記



何故か私その詩の出だしをそうだと思い込んでいた。
小学校の教科書に載っていた詩である。

40を過ぎて、春が来るたびに、理由は分からないけれど、頻りにその詩の事が想い出された。
しかし、全文は覚えていなかった。
図書館で探しても、ネットで検索しても分からなかった。


『桜の花の…』ではなく『さくらの花の散る下に』で検索すれば分かったのだ。

それは、『花ふぶき』という題の阪本越郎の詩であった。


花ふぶき


小さな屋根の駅がある。
白い花びらは散りかかり、
駅の中は、
花びらでいっぱい。
花びらは、男の子のぼうしにも、
せおった荷物の上にも来てとまる。
この村のさくらの花びらをつけたまま、
遠くの町へ行く子もあるんだな、
待合室のベンチの上にも、
白い花びらは散りかかり、
旅人は、花びらの上にこしかけて、


私はこの詩が好きだったけれど、4行目からの記憶は違っていた。

この頃毎日、目黒川沿いの桜の下を仕事に通っている。
もうすっかり葉桜になったけれど、それでも昨日までは、穏やかな陽の光の中をハラハラと花びらが散っていた。
ジャケットや鞄に花びらが付く。

そんな川沿いの道を歩きながら、春の憂鬱、気が塞がれた様な毎日を送っている。



故郷のお城の桜は有名だったけれど、それを見てもあまり感動を覚えなかったし、20代の頃、『薄墨の桜』を見ても、それ程の感激はなかった。

何故か30を過ぎてから、桜が好きになった。
結婚してからは妻と2人で、子供が出来てからは3人で、毎年善福寺川緑地公園に花見に行った。
花見と言ってもゆっくりと川沿いの桜の下を歩くだけ。
シートを敷いての飲み食いはしない。

一昨年、妻と息子と3人で川沿いの道を歩きながら花見をしていたところに、元相棒から電話がかかってきた。
私は無性に元相棒に逢いたくなった。
急に仕事が入ったからと嘘をついて、2人を残して元相棒に逢いに行く。
取り残された2人の気持ちはどうだったろう?
特に妻は、私と元相棒との関係に気付いていたので、それが嘘だと分かっていて堪らなかったと思う。

妻はその時もその後も何も言わなかった。
何と惨い事をしたんだうと、ずっと胸が痛んだ。
今でも済まないという気持ちでいっぱいになる。

一年後、元相棒との仲は上手くいかなくなり、妻との離婚も目前だった。
仕事の帰りに、江戸川橋や外堀の夜桜の下を一人でよく歩いた。
淀みに浮かぶ花びらの白さに胸を塞がれた。

自分の所為と分かっていても、一人で見る桜に堪らない孤独を感じた。

今年、息子は中学を卒業した。
卒業式。息子から頼まれてビデオを撮影した。

そのビデオを見て元妻が電話をかけてきた。
話していた元妻が、急に泣き出した。
「パパ有難う、有難う」と言って、電話の向こうで泣いている。
聞けば、式典の画も良かったけれど、その後、何となく撮影した、学校の校庭の画を見て泣いたらしい。
電話しながら、それを思い出したら、また涙が出てきたというのだ。

式典が終わった後、在校生と教諭、保護者がアーチを作って送り出すまでに時間があった。
その待ち時間を使って、息子が暑い日も寒い日も練習に打ち込んだ野球のバッターボックス付近の情景を撮影した。
立てかけてあるトンボ(グランド整備に使う)、その黒く円くなった握り棒付近のup、昼休みに友達と良くやったというバスケのゴール、そして1本の大きな桜の木、その膨らんだ蕾等々を撮影したのだが、その画を見て、息子も元妻も泣いたというのだ。

3年前の入学式、満開ののその桜の木を背景に撮られた記念写真。私も元妻も息子も、新しい級友、その父兄達と一緒に並んでそこに立っていた。ヒラヒラと舞い落ちていた薄紅と言うよりは白に近い花びら。

その校庭の桜も、もうすっかり散っているだろう。

一昨年、目黒川沿いの桜の下を元相棒と歩いた。
花見客がいっぱいいた。
しかし不思議と人気を感じず、花の妖しさばかりを感じた。
命の輝く妖艶さばかりを感じた。
私の命も燃えていたのだろう。

妖しく命が燃えるのは、よく夜桜に感じるという。
しかし、昼間の桜の花の一輪一輪に、
その白さに
その薄紅色に、
命の燃える時の狂わしさと香しさを感じた。
私はこの桜を来年も彼女と一緒に見る事が出来れば、死んでも良いと思った。

次の年、私は彼女と一緒に桜を見る事はなかった。
桜の花の下を歩く事はなかった。

今年、私が毎日通っているのは、もっと下流の道で、通る人はまばら。
咲く桜よりも散る桜ばかりを感じながら、その下を毎日一人歩いて仕事場に向かった。

そして、花はなくなった。

散る桜のこる桜も散る桜  良寛






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Last updated  2008年08月16日 09時45分46秒
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