英国・ニューカッスル大学の Emma Vardy 氏らは、せん妄と認知症各タイプとの関連について調べた結果、レビー小体型認知症との結びつきが高い可能性があることを報告した。
せん妄は、認知症においては共通してみられ、認知症リスクの増大との関連が知られる。しかし、特定タイプの認知症リスクを増大するのかについては不明であった。 (International Journal of Geriatric Psychiatry
誌オンライン版 2013
年 5
月 31
日号の掲載報告)
研究グループは、せん妄疑いエピソードが、アルツハイマー病( AD
)とレビー小体型認知症( DLB
)いずれのタイプの認知症診断前に発現頻度が高いのかを調べることを目的とする後ろ向き研究を行った。検討は、認知症診断が行われた第 3
次医療施設単位で行われた。初診からの医療記録をもとに、これまでのあらゆるせん妄疑いエピソードの記述をレビューして行われた。
主な結果は以下のとおり。
・レビューは DLB
患者 85
例、 AD
患者 95
例について行われた。
・少なくとも 1
回のせん妄疑いエピソードが報告されていたのは、 DLB
患者は 25
%であったのに対し、 AD
患者は 7
%であった( p
= 0.001
)。
・せん妄既往患者で 1
回以上のエピソードを有した患者の割合は、 DLB
患者 23
%に対し、 AD
患者 14
%であった。
・最後に報告されたせん妄疑いエピソードから認知症診断までの期間中央値は、両群ともに 1
年以内であった。
・以上のように、 DLB
患者は AD
患者と比べて、せん妄疑いエピソードの記録を有している患者の割合が有意に高率であった。
・せん妄は、その他の認知症タイプと比較して DLB
リスクと強く結びついている可能性が高かった。また、少なくともいくつかの症例では、 DLB
の初期を示唆する可能性があった。
・今回の研究により、せん妄がみられる患者では、とくに DLB
の診断を念頭に置くべきであることが示唆された。
コメント:
アルツハイマー病( AD )とレビー小体型認知症( DLB )は、臨床的には鑑別が難しいことが多いかと思います。 レム睡眠時行動異常などが DLB の特徴と考えればせん妄も関連が深いかもしれません。
レビー小体型認知症の診断基準(1)
1.社会生活に支障がある程度の進行性認知症の存在
初期は記憶障害は目立たないこともあり、進行とともに明らかになる。注意力、前頭葉皮質機能、視空 間認知障害が目立つこともある。
2.以下の3項目の中核症状のうち probable DLB では2項目、
possible DLB では1項目が認められること。
1)注意や覚醒レベルの明らかな変動を伴う認知機能の動揺
2)現実的で詳細な内容の幻視が繰り返し現れる
3)パーキンソニズムの出現
レビー小体型認知症の診断基準(2)
3.DLBの診断を示唆する症状
1)レム睡眠時行動異常
2)重篤な抗精神病薬過敏
3) PET 、 SPECT での基底核でのドパミントランスポータの減少
4.DLBの診断を支持する症状
1)繰り返す転倒と失神
2)一過性の意識障害
3)重篤な自律神経障害
4)幻視以外のタイプの幻覚
5)系統的な妄想
6)うつ 7) CT 、 MRI で側頭葉内側が保たれている
8) SPECT ・ PET での後頭葉の取り込み低下
9) MIBG 心筋シンチの異常
10 )脳波での徐波と側頭葉での一過性の鋭波
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