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2006.11.23
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カテゴリ: 洋書

 ベストセラー作家トム・クランシーによる新シリーズ。2010年を舞台にしている。


粗筋

インターネットが世界にとって欠かせなくなった近未来。サイバーテロに対処する為、米国連邦捜査局FBIは新たな組織を誕生させた。ネットフォースである。
 ネットフォースはネット上のバーチャルリアリティの世界を監視とすることと、現実の世界で起こるテロを取り締まることを任務としていた。
 そんなところ、ネットフォース局長スティーブ・デイが武装集団によって暗殺された。副局長のアレキサンダー・マイケルが局長に昇格する。マイケルにとって局長としての初任務は、前局長の暗殺者を探し出すことだった。しかし証拠に乏しく、捜査はまるで進まなかった。前局長は長年マフィアの取り締まりを担当していた。暗殺を命じたのはマフィアなのでは、と疑う。
 局長暗殺を命じたのは、アメリカから遠く離れたチェチェン共和国の実力者ウラジミール・プレハノフだった。彼はネットフォースを更に混乱に陥れる為、別の殺し屋セルキ-を雇い、新局長を暗殺しろと命じる。
 セルキーは直ちにアメリカに渡った。セルキーは変装が得意な女殺し屋で、マイケルと接触するのに成功した。ただ、暗殺を実行する一瞬前に邪魔が入った為失敗した。セルキーは辛うじて逃れた。
 マイケルの部下らは、ネットを駆使し、前局長の殺害を命じた者の正体を徐々に掴んでいった。
 一方、セルキーは、マイケルを再度狙おうと考える。マイケルの警備が最も薄くなるのはネットフォース本部なので、本部に潜入するという大胆な計画を立てた……。


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解説

トム・クランシーの名が前面に出ているが、実際に執筆したのはピチニックだろう。トム・クランシーは原稿に目を通して部分的に手を加えただけと思われる。
 ピチニックは、最近のトム・クランシー小説の形態(レインボー・シックスなど)をかなり受け継いでいる。本作品の主人公は第一線で活動する工作員ではなく、局長なのだ。局長なので、第一線に飛んで秘密工作を自ら実行することはできない。そんなもんだから、小説の大半はマイケル局長が「局長とは何て退屈な職だ」と愚痴をこぼしながら部下が大活躍して報告するのを待つ、というシーンが非常に多い。
 他に、新副局長としてトニー・フィオレラ(女性)が登場する。優秀だ、という設定になっている。彼女は新局長に好意を寄せていた。が、彼女が何をするのかというと、新FBI捜査員と恋愛関係に陥る。無論、新局長に対する好意を捨てていないので、二人の男性との板挟みになり、悩む。新FBIは呆気なく死んでしまうので、問題は自然消滅してしまうが。
 ネットフォースの実行部員ハワードには、中学生になる息子タイロンがいた。タイロンはパソコンが得意で、バーチャルリアリティの世界で頻繁に遊んでいる。ある日、好意を寄せている女の子が、勉強を教えてもらいたいので家に来てくれないかとタイロンに頼む。タイロンは昇天の気分になる。問題は、その女の子のボーイフレンド。ボーンブレイカーというあだ名を持つ乱暴者だった……。
「これ、何の小説?オフィスラブを主体にしたメロドラマ? ガキの成長を描く青春物?」が、最初の感想。
 シリーズの第一作なので、ネットフォースの内部事情や、マイナーキャラの状況説明などを盛り込んだつもりなのだろうが、テンションがなさ過ぎ。小説というより、低予算国際刑事ドラマ番組の初放送分をノベライズした感じで、本の分厚さの割には中身が薄く、スカスカ。
 ネットフォースはサイバーテロと戦う専門組織という設定になっているが、本当にこんなのでサイバーテロと戦えるのか、と首を捻りたくなるほど無能な組織。事件を解決できたのは運が良かったに過ぎない。
 敵のプレハノフも優秀な犯罪者ということだが、こちらも無能。彼はチェチェン共和国の政権を奪取する計画を立てていた。それにはネットフォースが邪魔になる、とどういう訳か決め付ける。ネットフォースを混乱させる為、アメリカマフィアを装って局長を暗殺させたのである。政権を奪取したいならさっさとそうすれば良かったのに、無駄な計画を実行に移したことで結局自ら地雷を踏んだ。馬鹿としか言いようがない。
 謎の女殺し屋セルキーも優秀という設定になっているが、「ネットフォース本部なら警備は薄い」と判断して敵の本拠地に乗り込むのはどうか。もっと別の、リスクの少ない方法があっただろうに。自信過剰が仇となって失敗し、結局死んでしまうところを見ると、彼女が著者が主張するほど優秀な殺し屋とは思えなかった。
 ネットフォース本部の警備も信じられないほどずさん。セルキーはどうやって本部に潜入したのかというと、本部で勤務する事務員を殺し、彼女に成りすまして表から入ったというのだ。
 地方支部なら警備がいくらか薄くてもしょうがないが、局長がいる本部である。前局長が暗殺され、現局長が暗殺者(セルキー)に襲撃された後なのだから、警備は最高度に引き上げられていなければならないのに、暗殺者が変装だけで入れてしまうとはおかしい。指紋や、虹彩や、顔型などの識別システムを導入してなかったというのか。舞台となっている2010年はバーチャルリアリティ技術が進んでいるものの、警備技術は退化しているという訳か。
 地方警察署なら不特定多数の人が出入りするので仕方ないが、特殊犯罪を取り締まる組織だと、一般市民は立ち寄らないので、出入りを制限できる筈。全国手配中の犯罪者が易々と本部に潜入できるとなれば、その組織の将来はかなり暗い。
 戦闘シーンや格闘シーンなど手に汗を握る場面はあるが、あまりにも少なく、短く、一方的。退屈なドラマの間に埋もれてしまっている。
 本作品はシリーズで、第二巻、第三巻と出ているが、個人的には次回作を大金を支払ってまで読みたいと思わない。こんなのよりフェニックス・フォースを読む方が100倍もマシ。
 また、本作品はアメリカがネット景気で湧いていた時期に書かれた作品。ネットバブルが弾け、景気全体が低迷期に入っている現在、本作品で描かれているネット社会は非現実的。いや、単に馬鹿馬鹿しい。
「バーチャルリアリティ国家」も、三流サイバーパンクみたいである。リアリティがなく、仮に実現化できても誰が使うんだ、と首を捻りたくなる。ハイテクと縁がない小説家が執筆の依頼を受け、慌ててハイテクについて学び、ハイテクワールドをどうにか捻り出してみました、といった感じ。
 本作品は、ノロノロと展開しているなと思ったら解決の糸口がいつの間にか見えていて、結末に向かってダダッと突き進むという点では、トム・クランシー小説形態に沿っている。トム・クランシーの名前が掲げられていなかったら大して注目されなかっただろう。
 つい最近読んだレインボー・シックスを物理的に半分にまで薄くし、内容的に半分にまで薄めたような、感動の少ない作品、が本作品の最終的な感想。レインボー・シックスより本の厚みが薄い、というのが唯一誉められるところ。



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Last updated  2006.11.23 08:42:08
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