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2006.11.23
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カテゴリ: 洋書

 A Time to Killでデビューしたベストセラー弁護士作家ジョン・グリシャムの法廷物。


粗筋

ある未亡人が、「自分の夫が死んだのは煙草を吸い続けていたからだ。夫は何度も禁煙を試みたが失敗した。それは煙草会社が煙草を意図的に習慣性のあるものにして販売していたからだ。夫を肺ガンにして殺したのは煙草会社だ」という理由で煙草会社を訴える。
 これまで同様の訴訟は八回あった。いずれも起訴側の敗北に終わっている。企業側に優秀な弁護士フィッチがいるからだ。フィッチはクライアントの勝訴の為ならどんな汚い手(不法行為を含む)でも使う悪徳弁護士だった。
 舞台はアメリカ。民事訴訟でも陪審制である。13人の陪審員が選ばれる。その中にニコラス・イースターがいた。法大にいたこともあるニコラスは、瞬く間に陪審団のリーダー格となる。
 一方、フィッチは裁判が自分に有利に動くよう、様々な工作を始める。豊富な資金力を持つ煙草企業の組織的な支援があり、煙草企業が共同で出費する数百万ドルの訴訟対策資金を自由に使える為、様々な手が打てた。陪審員の一人が勤務するスーパーマーケットそのものを買収し、クビになりたくないなら我々にとって有利な票を入れろと陪審員に迫ったり、陪審員の夫を罠にはめて脅迫するなどの行為を平気でやる。
 陪審員の操作は、フィッチにとって順調に進んでいるように見えた。が、ニコラスがまるでフィッチの行動を読んでいるかのように陪審団を思うように動かし始め、フィッチにとって有利な票を入れてくれそうな陪審員を次々追放する。
 フィッチは焦り始めた。ニコラスとは何者か、と。フィッチは部下に命じてニコラスの住まいに不法侵入させる。しかし、何の情報も得られない。
 そんなところ、フィッチに電話がかかる。マーリーと名乗る女性からだ。自分は陪審団の動向を完全に読めると言い張る。それを裏付けるかのように、彼女は陪審団の行動を的確に予言した。
 裁判が不利な方向に向かっていると感じたフィッチは、マーリーの要求を受け入れる。無論、マーリーが何者か調査しろとも部下に命じた。
 裁判は、弁護士らによる法廷の中の工作と、法廷の外の裏工作と共に進行した……。


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解説

500ページ近くに及ぶにも拘わらず、人が一人も死なないという珍しい作品。それもそれでいいのだが……。
 問題がなくもない。いや、たくさんある。
 まず何よりくどい。陪審員を選ぶプロセスを事細かく述べている為、実際の裁判が始まるのは50ページ進んだ所である。裁判手続きに興味があるならともかく、そうでない者にとってそれだけで放り出してしまうだろう。
 展開がのろい。煙草訴訟の為煙草の害や、煙草企業の罪について耳にたこができるほど聞かされる。というか、読まされる。
 陪審員全員の動向が記されるのは仕方ないとして、陪審員が飯がまずいと言って裁判官に抗議する場面や、隔離状態でも家族と会いたいから手続きしろ抗議する場面や、隔離状態されている最中ずっとホテルに閉じこもっているのは嫌だから船をチャーターしろと抗議する場面まで入れるのはどうかと思う。
 最大の問題点が、先がほぼ全て読めてしまうこと。マーリーとニコラスが実はつるんでいた、という事実は驚きに値しなかったし、フィッチが最終的に敗訴してしまうのも驚きに値しなかったし(フィッチがあまり優秀に見えず、これまで八回も勝訴を勝ち取ったのが信じられなかった。相手の弁護士がよほど無能だったのだろう)、マーリーの両親が煙草による肺ガンで死亡していて、それがフィッチを敗訴させたかった理由だという事実も驚きに値しなかった。
 また、弁護士を「クライアントの為、そして最終的には自分らの為ならどんな汚い手段にも打って出られる連中」として描くのはどうかと思う。著者のジョン・グリシャム自身、弁護士なのだから。それともジョン・グリシャムは弁護士を自分の著作で特に悪く描いていると考えていないのだろうか。そうだとしたら弁護士というのは最低の連中である。
 後味が極端に悪い訳ではないが、良いとも言えない。フィッチは敗訴するものの相変わらず活動し続けられるし、訴訟を起こして多額の金を手に入れることになった未亡人は既に別の男と付き合っていて、裁判の直後に再婚する予定だというし、マーリーとニコラスはフィッチから大金を騙し取ることに成功するものの、それを元金にして株取引(煙草企業の株)で大儲けするとさっさと盗んだ金そのものはフィッチに返してしまう。
 とにかくことが予想通りに進むので、サスペンスに欠ける。
 また、この本は法廷についてあまり知らない者にとっても理解し易いように書かれてはいるが(小説として成り立たせるため、法廷での手順などはかなり簡略されているようである)、アメリカ以外では理解し辛いだろう。たとえば日本は陪審制がないので、陪審員を選ぶ手順が非常に無駄の多い作業に見えるだろうし、訴訟の根拠となるtort lawそのものが日本と異なる(tort lawそのものが日本にはないようだ)。懲罰として企業が原告に対し4億ドル(500億円)を支払え、というのも理解し難いだろう(大半が弁護士に吸い上げられるらしい)。
 最近、日本で部分陪審制の導入が検討されているが、本書はそれに対する警鐘になるのではないか(注:2004年4月に、国会は一般市民が裁判で裁判官と共に有罪・無罪を決める裁判員制度を導入する法律を可決)。



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Last updated  2006.11.23 08:50:50
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