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2006.12.04
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カテゴリ: 邦書

 どこかのランキングで一位に選ばれ、吉川英治文学新人賞を受賞した作品でもある。
 織田裕二、松嶋奈々子、そして佐藤浩市出演のヒット映画にもなった。


粗筋

日本最大の貯水量を誇るダムを、テロ組織「赤い月」が占拠した。麓の住民を人質に、50億円を要求する。運良く難を逃れた一人のダム従業員が、テロリストたちを阻止すべく、立ち上がる……。

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解説

粗筋だけを読むと、まさに「ダイ・ハード:雪バージョン」。
 しかし……。
 映画を観てしまった為か(しかもその映画の出来が並み程度だった為か)、「絶賛されるほどのものか?」と、首を捻りたくなる。
 つまらない作品ではないが、何か物足りない。
 最大の欠点が日本を舞台にしている、ということか。その為、主人公が戦闘においてはずぶの素人なのだ(仮に自衛隊あがりという設定にしたとしても、実戦経験がないから、結局無理があることになってしまう)。
 主人公の富樫は、あくまでも冬山に馴れている男で、それなりに知恵が備わっているが、所詮民間人。あまり派手な戦闘があると現実離れしたものになってしまう。著者真保裕一もそのことを知っていたらしく、壮絶なバトルはない。それどころか、富樫がテログループのリーダーとようやく対面する頃には、リーダーが死んでいるという有様。本の大半では、富樫の活動はダムとダムの間を往復するだけ。テログループとの対決は最初と最後だけなのだ。テログループは、富樫によって負かされたというより、自滅した印象の方が強い。富樫は果たして主人公にしてもいいのか、というくらい印象に残らないキャラクターなのである。
 とにかく全体的に地味な作品。
 この作品を「ダイ・ハード」と比較するのはおかしい。
 ちなみに、「ダイ・ハード」はアメリカが舞台。しかも主人公マクレーンは、やたらと発砲しまくるというイメージのある警察官。年齢的に見て(そして活躍振りからして)、ベトナム戦争での参戦経験があっても不思議ではない。だから派手なアクションを繰り広げられた(やり過ぎの感もあるが)。映画だからだろ、と突っ込まれるかも知れないが、原作Nothing Lasts Forever(Roderic Thorpe著)でも、マクレーンはかなり派手に(ある意味では映画以上に派手かつ残酷に)テロリストらをぶっ殺していた。
 くどいかも知れないが、本作品の最大の問題点が日本を舞台にし、普通の日本人を主人公にしてしまったこと。これを海外に舞台を移し、主人公を軍人上がりの日系人にでもしておけば、より派手な、凄みのあるものにできただろう。読者に受け入れられたかは疑問だが。
 また、ドラマの演出も押し付けがましいというか、陳腐。富樫が昔死なせてしまった仲間にくどくどと語り掛ける場面を連発するのは(一度ならともかく)どうかと思ったし、仲間を何が何でも救出するんだ! と富樫が自分に何度も何度も言い聞かせる場面もくどいし、苦難を乗り越えて成長していく! ……というサブプロットもチャチ。
 批評とは裏腹に地味。
 それが最終的な結論。



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Last updated  2006.12.04 17:17:26
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