2006.03.20
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カテゴリ: TSURUGI
1990年7月19日

ついに出発する日がやってきた。といっても、金沢を出るのは夜だ。
今夜は、富山で野宿をする。明日の早朝、駅前から出るバスに乗るためだ。

昨日の夜に、大体用意は済ませた。夜までの時間がじれったい。3人とも、気持ちだけ先に富山に行っている。テントを張る練習をしたり、ルートを確認したり。何をやっても上の空だ。焦っても進まない時間をつぶした。

西の空を暗闇が食べ始めた頃、俺達は気合で軽く感じる荷物を背負い、金沢を出た。金沢から富山まで、北陸本線で1時間ほど。早く出るほど遠くはない。3人とも、夜になるまで待ちきれなかったのだ。

電車の車窓には、夏の緑が夜の闇に照らされて、さらに黒く深い闇を見せている。俺達が向かう山の闇は、きっともっと深い。そして、俺達を包み込む空気は、都会の空気よりも純粋で、体をひんやりと包み込むのだろう。俺達は、たわいのない会話をしながら、じっとスタートラインに到着するのを待った。3人の気合を乗せて、電車は俺達を富山に連れて行く。

富山に降り立った俺達が最初にしなければならないことは、テントを張る場所を探すことだ。バス乗り場から遠くなく、それなりに広い場所。駅前を大きな荷物を担いだ男が3人、うろうろと歩き回る。人目に付かない広い場所は、ない。俺達は、山に入る前から疲れ始めていることに、多少いらいらしている。駅前に戻り、途方にくれていると、インディーがふと口を開く。
「絶好のポイントがあるやんけ」
「どこ?」

確かに、駅前には、テントを張るに十分な空間がある。しかも、バス停から近い。これ以上のポイントはない。しかし、人目がある。
「人がいっぱいおるやん」
「俺らは、朝早くでるやろ。大丈夫やろ」
「まぁ、そうやけど」
テントを張るポイントに、ズボっと立ち尽くしながら会議を続ける。
「なんや、ちと、こっぱずかしいな」
「旅の恥はかき捨てじゃ」
こうして、今夜の宿が決まった。

俺達は、しばらくろくな食事にありつけないだろうと、富山の駅前でたらふく飯を食べた。そして、夜、10時ごろ、人目をはばからず、富山駅前にテントを張った。シートを敷いているとはいえ、背骨にタイルの凸凹が当たって痛い。やはりテントは土の上に張るに限る。





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Last updated  2006.04.09 13:25:16
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