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2024.08.24
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カテゴリ: 愛to少年マンガ

単行本の欠品が長く続いていたので、本屋をはしごして既刊18冊を買い揃えました!



少年漫画感想『忘却バッテリー』-その2
(みかわ絵子先生・集英社・ジャンプ+)

ジャンプ+(アプリ)で一度ざっと試し読みした後、
紙媒体で改めて読み込んでますが… ​うなる…!!​
​​超オモシロイ…!!​​


​​以下、思いつくままにこの作品のここがオモシロイ!と思う点の列記です。
*ネタバレ含みます。お気をつけ下さい。*



​■野球描写 ​​

TVアニメ一期(全12話)で描かれたのがコミックス5巻の途中まで、
進捗としては練習試合を2試合終えるところまでの内容です。

コミック6巻以降から、1年目の夏の公式戦が本格的に始まりますが
ここからまた一気にオモシロくなってくるんです!

画面がガラッと変わり、 ​野球の描写・球場臨場感・夏の空気感が凄いことになってきます。​

ここは、妹(が私にゴリ押しされて)コミックを読み進めていく中で
​​「なんで!!?」​​ と真っ先に言った部分でした。

コミック8巻以降、 ​作者クレジットに 「試合制作・高嶋栄充」 というお名前が入り始めます。​
流石、ジャンプはしっかりしてるなぁ~!」とか思っていましたが、

のちに 高嶋栄充さんが、チャンピオンでガッツリ野球漫画を長期連載されている方で、
作者のみかわ先生の旦那さん と知り、 もんのすごく納得しました。

妹談:
1巻の出だしや、5巻収録の読み切り作品を読む限り、
作者のみかわ先生は明らかに止め画漫画の人だし、
芸術志向が強く、人間ドラマや感情の爆発を描きたい方だと思う。

基本的には、ページをめくったところの意外性のインパクトを一番に考えて、
そこの面白さから作品自体を作っていくような方というか。
絶対スポーツを描きた くて漫画家になった方ではない。

​それが何故か、野球画面が素晴らし過ぎる。​
普通描けない。こんな画面を描くための資料が揃えられない。

旦那さんご自身の作品の画面もちらっと見たけど、
この方はスポーツ漫画を描きたくて漫画家になっているような方だと思う。
ものすごく納得した。

「試合制作」って聞いたことのない名称だけど、 具体的な試合展開はもとより、
​作画資料・画面づくりから野球小ネタまで、かなりご協力されているのでは。 ​​


恐らくですが、 高校野球という題材自体、
旦那さんが居て頼ることができるからこそ描き始められたもの だと思いますし、

バッテリー(&そこの関係性)がメインの物語筋を彩るチームメイト…
特に二遊間・藤堂くん/千早くんのキャラ立てからして、
既に旦那さんとかなりのディスカッションを経て設定されているのでは と感じます。

本作のパッと見の印象は、
いわゆる多人数の男の子たちの並んだ、アイドル作品的なパッケージ ですし、
1話を読んだ段階では、 まさかこれが1試合の描写にコミック2~3冊を費やすような、
本格的な試合描写を楽しめる野球漫画作品だとは思いませんでした。


​​ ■おじさん描写

​作中に登場するおじさんの描写が素晴らしいです! ​​

初期より、ライバル校・ 帝徳高校の岩崎監督の描写がキレッキレ。
そして公式戦が始まると、 モブとして多数の野球おじさんたち が登場して来ます。

​「忘却バッテリー」と言うと、 真っ先に「おじさんたちの顔」が浮かぶ ほど、印象が強いです。​
もはや作品の色とも言うべき存在です。

​・岩崎監督​
主役主体・小手指高校の属する西東京地区の王者・帝徳高校の監督。
もともと主役バッテリー及び二遊間を熱心にスカウトしていたが、断られた。

勝手に脳内で「ハイパーつよつよ1年生集団」を夢見ていたが、
熱望した選手5名のうち4名が都立高校に進学していることを知り、たいへん悔しがっている。
そして脳内で勝手に、小手指高校のエア監督を務めている。

ある意味で、作品のノリを決定づけたキャラクター のような気がします。


​・佐古監督​
1年目の夏を戦い抜いた後、小手指高校野球部の監督に就任したおじさん。
※おじさんといっても、おそらくまだ20代後半…
行ってても30代前半だと思います…。

もともと熱心な高校球児でしたが、2年生で肩を壊し、
リハビリ後大学でも野球を続けるも、試合に出れず
選手よりマネージャー業をずっとやってきた方(登場時無職)

感じの悪い登場の仕方をしてきましたが、 根本的には小手指/小手指の各選手の大ファン。

​​ 個人的に「本作でイチ推しキャラは?」と言われたら 、この佐古監督です。​ ​​
「根本的にチーム・各選手のファン」という設定が本当に上手なんですよ。
管理責任を引き受けつつ、選手たちの自主性・意向を尊重/応援する姿勢が印象的です。

またこの方の丁寧な説明があると、小手指というチームや各選手の凄いところ・強味を
好意的な目線で認識できるようになります(特に大人読者が入っていきやすい)。


​・野球おじさんたち​
高校野球をこよなく愛し、平日でもワンカップ酒を片手に
公式戦の観戦や練習見学に現れる、やたらと物知り顔をするおじさんたち。
野球知識量や原石に誰より早く気付くことでお互いにマウントを取り合う。

野球漫画はそこそこ、有名どころはそれとなく読んで来ていますが
こんなおじさんたちの描写は初めて見ました。

​​ ​おじさんたちが何を言っても、何をやってもおもしろい​ ので…
読み進める中での緩急としても抜群に機能してますし、​
「選手たちのどこに注目すべきなのか」が笑いながら自然と入ってくるので、
野球おじさんたち…これはすごいな! と思っている描写です。


​​ ■忘却とリセット、今後の展望について
​本作のタイトルに大きくかかげられている 「忘却」 。​
もちろん、主人公・要くんの記憶喪失により、
天才バッテリーが名もなき都立高校へ進学するところから
物語が始まっていることを指しています。

ただ、そこから転じて…というか、
一度死んで生まれ変わることによって、その先に大きな飛躍・展望を感じられる ところ。
これが凄いです。
都立の小手指高校に集まった野球の有力選手たち…
特に 清峰・要・千早・藤堂の4名 は、複数強豪校からの誘いも断り
清峰くん以外は「野球を辞める」目的もあって本校に入学しています。

小学生の頃から野球漬けだった彼らは、中学生の後半~高校進学に際し、
自身の野球に大きな失望をして、一度野球を辞める決心をしています。

この段階で限界を見定める程に、めちゃくちゃ野球にストイックで、
ものすごく勉強して、自分の頭で考える子たちなので、
(体格面でハンデを感じていた要くん・千早くんは特に)
中学時代、知識と工夫を駆使して超高等級プレイヤーに自身を昇華しながらも、
知識で雁字搦めになっている分、「自分の限界」の判断が非常に早かった、
ということだと思います。

※要くんに至っては、メンタルコントロールが出来過ぎた結果とも言えますが、
野球を辞めるどころか、野球をやって来た人格ごと挿げ替えようとしました。
(ここまで来ると解離性同一性障害)


この「一度リセット」が、各人の重い過去エピソード
(挫折がいっぱいで辛い想い)として描写されます。

本作が描いているのは、この 挫折~一度諦めた・失くしたものの
「再生の物語」という側面ももちろんある のですが、
​ただ、 アウトプットが「再生」どころではない んですよ。

​「飛躍・展望」なんです。 ​​
これがミソというか、本作の一番オモシロイところだと思っています。

知識があり過ぎると、
やった方がいいこと、やっちゃいけないこと、全部分かっちゃうので、
なんか新しいことをやろうとしても、遊び幅がないんですよ。
「こうじゃなきゃいけない」理論が確立しちゃって、
それをストックに突き詰めようとし過ぎちゃうというか。

遊び幅がないと、「試しにいろいろやってみる」が出来ない。
「失敗する」が出来ない。


これは、おそらく作者のみかわ先生自身も漫画制作をされていく中で、
様々な試行錯誤・挫折を繰り返されて、
本作を形にするところまでたどり着いていらっしゃると思います。
その経験上から出て来てるテーマなのではないかな、と感じています、


​小手指の子たちは、みんな一度野球を辞めてるから…強い。 ​​
チームメイトたちの失敗や試行錯誤に、非常に寛大で優しいので、
いろいろ「ダメ元」で試してやってみることが出来る。

また、1年目は特に1試合出来るかどうかも危うい リソース不足状態 ですので、
メンバー全員が、自信の有無に関わらず持てる力を出し惜しみなく提供して、
工夫を凝らしながら、チーム一丸となって闘い抜こうとしますので。

↑これが、読み進めるほどに ​チーム力としてガンッガン活きてるのを感じます。​
ものすごい説得力なんです。


また、本当に上手だと感じるのが、
小手指高校(&メンバーたち)のバックグラウンドの描写。
伝統もない、OBも居ない、全く期待されていない無名都立高校である点。
そして各々の有力メンバーのバックグラウンドにも、
「その子の野球」に過度な期待を寄せている家族等が居ない点。

要は、 野球をやるモチベーションに、
本人の意識以外の重圧を負わせない作り になってます。
お父さんやお兄さんが野球やってて、自身の叶えられなかった夢を託してたり…
そういう外的要因を設定してしまうと、それはそれで
遊び幅の全くない野球をせざるを得なくなりますので。

メンバーの家族は、本人が楽しく野球をやっている事に対し
非常に悦びながら応援してくれますが、絶対に過度な期待は寄せません。
ここはかなり徹底的に、気を使って描かれていると思います。


小手指は、もともとセルフコントロールに優れた天才アスリートたちが集まった集団ですので、
必要な練習の選定/ある程度の試合運び等は、自分たちで何とかしてしまいます。

ただ、実績を残す中で組織の人数も増えていく…
そこに監督や周囲の目線が「適切な評価」として加わってくることで、
組織体として急発展していきますし、
小手指の一番の強味(あくまでメンバー主体で、質の高い試行錯誤ができる)が
更に活きてくるのが、2年次の夏の公式戦以降~ となっています。

で、 ここまで組織体が活き活きとしてくると、
​各メンバーの未来の飛躍が見え始める ​​ んです。

一度完全に諦めてたところが、びっくりするくらいスッと開けたりするんですよ。

この先、2年次の無名の都立高校・小手指の地区大会/甲子園での大躍進とともに、
3年次に向けて、清峰・要・千早・藤堂4名の未来にプロ入りがちらつき始める…
そこに向けて、小手指高校野球部という組織体として
アプローチしていく話になっていくんじゃないかな、
と想像しながら読み進めています。

清峰くん以外の3人…
藤堂くんはもともと体格にも恵まれていますので、
イップスさえ克服すれば十分可能性は感じられると思いますが、
要くん・千早くんの2人は、そもそも挫折した理由に「体格面での失望」も大きくあり、
今の段階では「自分がプロを目指す」ところまで気持ちは行っていない と思います。

小手指という組織体の中で、
構成員たちがお互いの野球をリスペクトして、試行錯誤をしながら急成長する中で、
お互いの意識がお互いを、上に持ち上げていく…
そして 組織体として「無名の新設都立高校野球部から4名プロ入り」という、
ド級の偉業に向けて動き始めるんじゃないかなぁ~ …と期待してます。

※コミック14巻・101話で、大阪陽盟館高校の監督が、
現在の1年生は過去最強の豊作世代であり
「最低4名はプロ指名が来る!(めっちゃ多い方)」 と豪語してます。
ここを読んで、「小手指の子たち4名のプロ入り」まで意識して
今後話を進めていくのかな、と感じました。


​​ ■要くんの二重人格について

主人公・要くんは​
・生来のお調子者の人格・主人格(マスター)
・野球にストイック過ぎる智将格(中学時代の人格)
の2つの人格を持った状態です。

いわゆる ​二重人格​ …連続しない複数人格を有する ​解離性同一性障害 ​​ ですね。

智将格は、野球におけるストレスを引き受ける人格として誕生したと目されており、
1年次の帝徳戦以降は、2つの人格がお互いを認識し、
精神世界内でディスカッションをしながら、主人格の野球スキル向上に励んでいます。

コミック18巻時点(2年次の帝徳戦)で、
主人格(マスター)の野球スキルが中学時代&それ以上まで達したと認識したのち、
智将格は消滅することを望んでいます。(もう野球やりたくない)

この部分は今後どう決着をつけていくのかなぁ…と
あれこれ想像を膨らませるのが一番楽しいところです。


私の見解としては、 要くんの2つの人格は…1人として納得できる範疇 というか、
当たり前のことですが、元は同じ一人格ですので。
もともと非常に洞察力に優れ、周囲の感情変化に敏感な子ですし、
めちゃくちゃ学習意欲が高く、ストイックで勤勉な子ですし。

智将格は二重人格の原因として
「努力のキャパオーバーを超えた」というような言い方をしていましたが、
私が読み進める中で 根本的原因と感じるのは、
「要くん自身の野球」の高校以降のビジョンの不明瞭さ だろうな、​
と思っています。

要くんは、あれほど小学生の頃からストイックに野球に打ち込んで来ており、
中学時代に既に相当名の売れた名捕手だったにも関わらず、
「夢はプロ野球選手!」とはまず言いません。目標としてません。

小学生の頃より、清峰くんの才能を守り、
清峰くんを無事プロへ送り届けることを一番の目的に据えて
それを義務として、ここまでストイックにやってきてしまった ので、
「自分の野球」は大事じゃない…要くん(智将格)の意識の中では二の次 なんだと思います。​

この意識…「清峰くんの為」だからこそ、ここまでストイックに出来たのもあるでしょうし、
高校入学に際し、清峰くんだけに一番プロに近い有力校(大阪陽盟館)から声がかかった瞬間に
自身の野球(&人格)を放り出させてしまった最大の原因 だとも思っています。

もともと要くん自身、勝負事が好きな子ではないですし、
中学時代に相当無理をして来た疲労のツケもあり、
この場面で、モチベーションの根幹を
「清峰くんの為ではない野球」「自分の為の野球」に転換する気力も残っておらず、
ガクッと来ちゃったんだろうな…と。


でも、普通に要くんもどう見ても天才なんですよ。

清峰くんが一番言いたいのは、やっぱり
​​ 「要圭は世界一凄いキャッチャーだろ!天才だろ!?」 の一心
だと思いますし、

小手指高校野球部は、
奇跡の幼なじみバッテリーの関係性・お互いの野球を大事にし過ぎる感情を核に、
構築された奇跡のチーム だと思っていますので。


先に書いていた内容とも被って来ますが、
「要くんの野球の未来」が描けたときに、
野球にストイック過ぎた中学までの智将人格と、
小手指に入って、一からやり直す野球が楽しい!と思えた主人格が、
統合していくというか、連続性を持った一人格に収斂していくんじゃないかな…

だって、その未来に向かうには、
2つの人格の経て来た過去がどちらも必要だと思いますもん。

そうでなくとも、16巻以降は
「真面目に野球やってる主人格」と「チームメイトに囲まれて野球やってる智将格」の
表情がかなり近くなってる描写になってきてます。
ぱっと見ではどちらの人格か判別できないカットも多くなってきてる印象なので。

今のところはこんな予想をしながら読み進めています。


​​ ■骨太漫画!漫画表現大好きな方は是非!

この漫画、先に書いた通り、
信じられないくらい野球描写がしっかりした骨太スポーツ漫画 ですし、​

そうかと思えば、 緩急やトーンワークで魅せる感情表現 は流石女性作家様というか、​
非常に繊細で、漫画好きが目の色変えて喜ぶ漫画表現の宝庫 なんですよ。
なんて言うかな…
スポーツ描写も、すごく「主観」を大事にした描き方 と言うか…
実際にプレーしてる選手の必死な主観ももちろんですし、
同じ場面をとっても、チームメイトたちの目線、
試合に出られない選手たちの目線だとまた全然違う画が見えてきますし、
周囲の大人たちの目線…家族や監督や野球ファンのおじさんたちの目線…
どれをとっても、高校球児たちに向ける目線というのは
リスペクトに満ちてて、すごくイイんです。

果ては、主人公・要圭くんの二重人格(主人格/智将格)それぞれの主観での描写とか…
超越した世界線に突入していきます。

いやぁ…面白いです!!



この漫画、たぶん、
まだ読まなきゃいけない人たちがたどり着いてない…
​​
​​これは…漫画好きは読まなきゃダメだろ…​

いや、私も最近まで読んだことなかったけど…
​これは…漫画好きは唸りますよ!​
興味のある方は、是非!!


あ…あとこれ、 漫画表現がそれこそ繊細なので、
​小さいスマホ画面で読むだけだと絶対もったいないので…​

​​試し読みはジャンプ+(アプリ)で出来ますが、
読み込むなら絶対紙媒体がおススメです!

​​
by姉

​​​​​ ​​





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最終更新日  2024.08.25 12:14:51
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