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イズ 1389 @ Re:暁のヨナシリーズ、完結です!…外伝4『王の風』速報感想。(07/03) ヨナ終わってしまいましたね。とても満足…
2025.07.20
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​「炉辺荘のアン(ろへんそう/イングルサイドのアン)」
ー赤毛のアン・シリーズ7ー感想​
(L・M・モンゴメリ・1939年、和訳 村岡花子・1958年)

夢の家で長男・ジェムくんを出産した後、 ブライス夫妻はグレン村の大きなお屋敷・ 炉辺荘(イングルサイド) へ移り住んだ。
そこで男女2人ずつの子どもが次々と誕生し、5人の子どもたちは元気に育っていた。

アヴォンリーにも時折顔を出し、ギルバートの父母の死や ギルバートの親戚で気難しいメアリー・マライア叔母さんの炉辺荘長期滞在、 末娘・リラの誕生と、子どもたちの巻き起こす騒動・友達問題に向き合う日々…

時に苦々しい思いもしながらも、 慌ただしく過ぎ去っていく大切な時間。
愛しい、幸せなブライス一家の日常&子どもたちの成長の物語。


本作は、1921年発表の「アンの娘リラ」より20年弱経って、
空白期間だった部分を埋める形で1930年代後半に発表された作品だそうです。
「アンの愛の家庭」 という題名で出版されていることもあるみたいですね。

大きな出来事があるわけではない日常…
でも、感情の起伏としては焦ったり不愉快に思ったりがっかりしたり立ち直ったり…がだらだらと重ねて描き出されます。

本作はシリーズの中でも、エピソードがとっ散らかっていて洗練されていないというか、
「さっきも似たようなの読んだ」みたいな…整理されてないから頭に入って来にくいというか。
ネタを詰め込んだ第一草案を、あえてそのまま発表したような、独特な印象を受けました。

ただもう、 この「慌ただしい日常」を余すことなく描くことこそ、本作の意義というか。
この1冊があることで、ブライス医師一家がどのような一家なのか、子どもたち一人ひとりの個性もよく分かるので、おそらくコアなファンが大喜びするような『ネタの宝庫』というか。
アン・シリーズとしては非常に大事な1冊だな、 と感じています。

世界中で愛される名作物語・アンシリーズの主人公: アンちゃんの人生が、最終的にどこにたどり着いたのか、 と言ったら、​その答えは、 まるまるこの「炉辺荘のアン」の1冊 であり、​本作の締めシーン ​「ブライス(快活な)!あたしはブライスだわ」​ の一言に尽きると思います。



以下、取り留めなく、本作の見どころについて。

​・聖母:アンちゃん ​​

とにかくアンちゃんは、徹底的に『聖母』!
です。
家や庭はきちんと清潔に保ち、子どもたちには丹念できれいな服装を、食事もお菓子も手の込んだものを…そして子どもたち一人ひとりとしっかり向き合って話を聞く時間を作って…

また社交的にも、ギルバート医師の奥方として地域社会への参画、パーティー等の外交に重きを置き、身なりを整えて挑む理想的な『町のお医者さんの妻』を演じます。

ここまでの作品を読んでも少し感じていましたが、本作を読んで改めてはっきりと、 アンちゃんは本っっっ当に「やるとなったら徹底的!」 ものすごく潔癖な女性だな、 と感じました。

炉辺荘で描かれている、「ブライス一家=理想の家族」像は、 「普通、そこまで頑張るのは難しいよ」と感じるレベル​ です。
(もちろん住み込みの女中さん・スーザンが居るからこそ保てる水準です。)

アンちゃん自身は、幼少期に「安心できる暖かい家庭」を享受出来なかったので、実態を知らないからこそ、彼女はどこまでも自身の理想に忠実というか。

また、アンちゃんは 「夫のギルバートは、どこまでも理想の家族を築き、 誰よりも幸せで認められた人生を送るべき人」だと思っている節がある と感じますので、そこに自然と追いつこうとしている側面もあると思います(妹談)


もともと作者・モンゴメリさん的には、 アンちゃんには「妻・母をやりながら、小説家としても名が売れるような未来を…」 という構想があった んだろうな… と想像しています。

青春ではモーガン夫人という女流作家がグリンゲイブルスを訪れていますし、愛情ではアンちゃんの小説が初めて賞金になるエピソードがあります。
夢の家では、ジム船長という小説題材の宝庫のようなキャラクターを投入し、最初はアンちゃんに妊娠期間で小説執筆を促すような作りだったのではないかな…と。

ただ、 結婚&お子さんの出産に向かうアンちゃんが、とにかく『 ギルバートと子どもたち…「家庭」に全力を尽くしたい!』と言ったんだろうな、 と受け取っています。
この潔癖さこそが、アンちゃんのキャラクター性として一番特徴的で、魅力的なところだと思います。


ちなみに、(一生外れぬ女神フィルターで)アンちゃんを観てきたギルバートにとっては、 この聖母・アンちゃん像はものすごく「しっくり」来るもの だと受け取ってます。
ギルバートの理想とアンちゃんの理想(社会面・家族面)は、根本的に合致しています。
基盤・資本が無い中で、これほど気高い「理想の家庭」を1から築くためには、夫婦ともにそれに見合う気高さとハイスペックが必要となります。
アンちゃんとギルバートは、 本当に「運命的 相性の良さ」だったな、 と。

※どうでもいい情報
本作の中だけで判明している、 ギルバート→アンちゃんへ贈り物の数々​ (誕生日/結婚記念日)​
エメラルドの指輪
・純金の指貫(ゆびぬき)
・ダイヤモンドのペンダント
 +ロンドン医学会ついでのヨーロッパ旅行(夫婦水入らず)

そして、 広大な庭付き屋敷の購入+住込の女中さん雇用+子ども6人(高等教育進学可)+子どもたちへの贈り物の数々…
ギルバート、一馬力でどんだけ稼ぐんだ…(良かったね)



​・いらだち、虚構、失望 ​​
子どもたちのエピソードも含め、本作の個々のエピソードは よく分からない&意地の悪いゲストキャラクターが登場し、 気分の良くない話回しをするようなものが多い印象 です。

ギルバートの親戚のメアリー・マライア叔母さんの滞在…気難しく、周囲を嫌な気分にさせるようなことばかりを言い、子どもたちも委縮してしまい、アンちゃんも鬱憤を溜めていきます。

マシュウやマリラ・リンド夫人も含め、アンちゃんを取り巻くグリン・ゲイブルスの大人たちがあまりに皆優しく素敵なので、「身内ってそんないいことばかりじゃないよね」という観点のエピソードだと受け取っています。

また子ども達は、友人たちにひどい嘘をつかれ、困惑&失望するエピソードが非常に多いです。
皆に頼られる格好良いお父さんと、優しくて聡明なお母さんに恵まれ、大きなお屋敷で大事に愛されながら暮らすブライス家の子どもたちは、一部の同級生たちからは「憧れと妬みの対象」となっているのかな…というニュアンスで描かれています。

でも、 これらの もやもや感情も全部ひっくるめて「愛しい日々」というか…
余すことなくだらだらと描写して、その上で「ブライス!」に行き着いてナンボ!
という作品だったと思います。



​​ ・子どもたちのエピソード、人物配置 ​​
作中、子どもたちはどんどん成長していき、また個々人に焦点を当てたエピソードが展開していきます。(三男・シャーリーくん以外)

リラの感想でも語りましたが、 基本的ににブライス家の子どもたちの人物配置は、 「アンの娘リラ」の物語を描くために配置されている と受け取っています。

全部想像ですが… ブライス家の兄弟配置の考え方の順番 としては下記の順なんじゃないかな、と。

​①第一に、ジェムくん/次男ウォルターくんの2軸で第一次世界大戦を見せていくこと。​
・ジェムくん軸: 夢の家で生まれた待望の第2子/超理想的な光属性の長男が戦争に行く
・ウォルターくん軸: 若くして戦死するが、詩は後世に残る(詩人として大成する)
いずれもドラマチックな筋立てですし、この2軸をいち家族の物語として描き切りたかったのだろうと思います。

​②そこに、双子の妹・ナンちゃん/ダイちゃんを配置。​
そもそも絵面の受けの良い双子の設定で、2人並ぶことで容姿/性格面で父母の要素をほぼ充足する形で設定されてます。

たぶん…最初はこんな感じ↓で、基本的には双子の視点を主人公として「リラ」の話筋を回す案を考えていたのではないかな、と。

・ナンちゃん:
容姿は鳶色の髪の毛・瞳とギルバートの系譜を引き継いでおり、
外見は母と似ていませんが、本名(アンちゃん)と夢見がちな気質を受け継いでる可愛い女の子。
家庭的な面を持つ子(本来は「アンの娘リラ」でリラちゃんの立ち位置だったのでは?)
リラ本編にも出てきた「神様と取引」の観点は、もともとはナンちゃんがリラの話筋の中で行う設定だったのではないかな…と思っています。

そう考えると、本作​「炉辺荘のアン」での「アンちゃんが肺炎になり生死をさまよう、非常に印象的なエピソード」が、ナンちゃんの目線で描かれたのも、納得がいくな、と。

・ダイちゃん:
ダイちゃんは赤髪で、容姿は母親・アンちゃんの幼い頃とそっくりですが、性格はギルバート似で、現実的/合理的且つ仕事脳の様子。
母・アンちゃんが最終的に「家庭に全振りする」道を選んだため、もしそうではなく社会的に仕事を続けていたら、の「Ifを体現する存在」として設定されているのかな、と感じました。

…上記の役割分担で考えると、4人兄弟それぞれの役割がかなり明確でしっくりくるため、 当初はブライス家の4人兄弟で考えていたのではないかな、 と想像しています。

(物語上の時系列的には「炉辺荘~」の後になる「虹の谷のアン」では、
近所に越してきた牧師館の4人兄弟(長男・長女・次女・次男)と絡ませることで各キャラクターを自由に走らせ、関係性の試行錯誤をしていたのかな、と。
そう考えると、ブライス家6名兄弟に対し、何故牧師館兄弟は4名なのかも理解し易いと思います。)

​③リラちゃん、シャーリーくんの投入​
上記の通り、 子どもたち世代でいちばん作りこんであるのは
どう考えても上の4人(×牧師館の4兄弟)のところ だと思っています。普通に考えれば。
ただ、「アンの娘リラ」の書き方の異常性…というか、いちばん作りこんであるはずの、この年上の方の子たちについて、具体的な描写・本人の主観がまるっと抜け落ちてるんです。

これはもう…各キャラクターに自由に会話させて、感情を作って作って、いざ1冊の小説として書こうとしたときに、 辛くなり過ぎちゃったのかな… と。
前述したとおり、「アンの娘リラ」のとっかかりは、間違いなくジェムくん&ウォルターくんの2軸を描くことだと思っていますが、ただやはり非常に重い題材ですので…
この2軸をどういう形でエンタメ作品としてまとめていくのか、ぐるぐるぐるぐる試行錯誤をされていたんだろうな、と感じます。

その過程の中で、やっぱりナンちゃん&ダイちゃんの目線からでは、直に上の兄であるウォルターくんの戦死というのはどうしても近過ぎて、1冊のエンタメ小説作品に収まり切らないというか…

ウォルターくんの戦死について、両親&スーザン&リラちゃん(主観)以外の家族のリアクションは「リラ」本編では基本的に全く描かれていません。(ラストのラストに、帰還後のジェムくんが思いを語る場面はありますが)

読者としては、年の近い姉妹や幼馴染たちの反応というのはすごく気になるところなんです。
でも確かに、皆それぞれにもの凄い激情があるはずで…書き始めると収集が付かない。

全部想像ですが、 上記のようなぐるぐる混沌とした激情群から少し距離を置き、 もう少し冷静に、上の世代を皆リスペクトしながら淡々と物語を進める主観として、 末娘・リラちゃんが投入されたのかな…? と。

また、娘をもう1人据えるとなった際に、 男女同数にしたくて 三男・シャーリーくんも設定されたのかな?  と感じています。

シャーリーくんについては、基本的に描写&情報が極端に少ないため、彼がミステリアスであることこそが、「すべて魅せ切っているわけではない」というブライス家の深みになってるんじゃないかな、とも思います。



話を「炉辺荘のアン(イングルサイドのアン)」に戻します。

​​ ・結婚記念日 ​​
本作のラストは、 アンちゃんとギルバート夫妻の 微笑ましい(?)すれ違いエピソード で締めとなります。

アンちゃんが(イライラして子どもたちに優しくできない…)と落ち込んでいる最中、
大学生時代、ギルバートと婚約の噂があった女性・クリスチン・スチュワートが出席する パーティーへのお誘いが届く。
当日はブライス夫妻の結婚記念日であり、アンちゃんは断ってほしいと願いつつ ギルバートに声をかけると… 非常に快い返答。嬉しそう。

医師の仕事で激務のギルバートは、15回目の結婚記念日を忘れている様子。
アンちゃんは戦闘態勢でパーティーに臨むが、 未亡人&事業家として活躍するクリスチンは非常に輝いて見え、また学生時代、ギルバートと彼女がどれほど親密だったかを見せつけられ…
意気消沈して帰宅。

アンちゃんのネガティブ思考が「ギルバートは私に飽きたのだ」まで行き着いた その時、 ギルバートが用意していたダイヤモンドのペンダントをプレゼント。
最近ぼんやりしていたのも、患者さんのことを心配していたからだということが分かり、 灰色に見えていたアンちゃんの世界は再び金色/バラ色/虹色に輝き出す。

「今度ロンドンの学会ついでに2人でヨーロッパ旅行してこよう♪」からの
どこまでもハイパーラブラブイチャイチャで突き抜けて、締め。

まぁ… アンちゃんを不安にさせたギルバートの過失 ですね。
…うん、そんなに誤解させるようなことしたかな?と思わんでもないですが、でも 結果的にアンちゃんが不安になってましたので、 やっぱりギルバートが悪かった んですよ。うん。

ギルバート的には、クリスチンさんとは本当に全くその気はなかったわけで、(なんなら、大学時代、アンちゃんに振られてからの2年間は「空虚な!暗黒の日々!」を歯を食いしばりながら生きていた記憶しかないわけで)アンちゃんがクリスチンさんにこれほど拒絶反応を起こすとは思い至りもしないわけです。

ただ、妹曰く、
「アンちゃんの目線では、 1年半ほどかけて、ギルバートとクリスチンさんが 順調に理想的な未来に向かって歩みを進めていくのをずっと見ていた わけで。
「ギルバートがクリスチンさんに惚れこんでメロメロ!」という初報から、 美しく理想的な2人を遠巻きに眺め、 最終的に婚約するまで見届けていた(誤報) わけで。

多分アンちゃんは、自分の将来像はあんまり想像できていなかったが、
ギルバートとクリスチンさんが築く幸せな家庭は、はっきり想像できていたと思う。
当時は、ギルバートには自分ではない他の人と幸せになって欲しかったので、それでいいと思ってたし、ロイ・ガートナーを隠れ蓑にして、静観していた。)

ただ、沸き出ずる感情を殺しまくっていたツケが無意識に存在しており、
今回自信が無くなっているタイミングで、クリスチンさんの存在を思い出し
ウゲロフォファーッ!(吐き気)
ってなったんだと思う。」


私: 「そうか…アンちゃんが 『ギルバート×クリスチンさん』の輝かしい未来を具体的に思い描いてる頃、 当のギルバート本人は『空虚な!暗黒の日々!』をさ迷ってただけだった けどな。」


いずれにせよ、誤解も解け、結婚15年超・40歳を過ぎてもなお 読者に「これでもか!」という致死量のラブラブシーンを力の限りで叩きつけて、 本作は幕を閉じます。
めでたしめでたし。



雑多な作品なので、感想も雑多になりましたが、 いろいろひっくるめて、「アンちゃんの人生がどこに向かったのか」の アンサーとなる1冊ですし、人気シリーズだからこその1冊だと思います。

「赤毛のアン」本編のアンちゃんがギルバートにツンケンしてたイメージだけを持って本作を読むと、結構面食らうような将来像だと思いますが…
この激甘の夫婦感と、アンちゃんの超潔癖な奥さん/聖母像こそが、 アンちゃんのキャラクター性が一番見て取れるところだと思ってます。

​​​ ブライス家、尊い!万歳!!
by姉



◆小説 赤毛のアンシリーズ(村岡花子訳) 感想リンク
アンの青春(Anne of Avonlea)1909
アンの愛情(Anne of the Island)1915
 ⇒​ アンの愛情 村岡花子訳と後続の翻訳本の比較について
 ⇒​ アニメ『アン・シャーリー』及び『アンの愛情』翻訳比較を受けて思うこと徒然(姉編)
アンの幸福(Anne of Windy Willows)1936
アンの夢の家(Anne's House of Dreams)1917
炉辺荘のアン(Anne of Ingleside)1939
その1:アンの娘リラ(Rilla of Ingleside)1921
その2:アンの娘リラ(Rilla of Ingleside)1921
アンの友達(Chronicles of Avonlea)1912
アンをめぐる人々(Further Chronicles of Avonle)1920

◆モンゴメリ著 小説 感想リンク
果樹園のセレナーデ(Kilmeny of the Orchard)1910
ストーリー・ガール(The Story Girl)1911
黄金の道―ストーリー・ガール(The Golden Road)1913
可愛いエミリー(Emily of New Moon) 1923
エミリーはのぼる(Emily Climbs)1925
エミリーの求めるもの(Emily’s Quest)1927
青い城(The Blue Castle)1926

◆赤毛のアン 関連本 感想リンク

赤毛のアンの手作り絵本 / 松浦英亜樹 さんのイラストについて
赤毛のアンシリーズのコミカライズについて





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最終更新日  2026.07.10 00:48:55
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