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カテゴリ: 魔法使いたちの恋
『魔法使いたちの恋』―試験7―

 卒業試験が始まった。
 それにしても、『飛行術』が初日なんて、ついていない。

「やあ、リュイ。満点だって?」
 笑顔でそう問い掛けてきたのは、ハルだった。
 昨日行われた飛行術の『筆記試験』のことを言っているのだろう。
 まだ発表されていないその成績を何故ハルが知っているのか、ふと疑問が湧いたが、ケン先輩の卒後は学院の不思議人間の座を不動のものにしているハルのことだ、何があっても不思議ではない。
「どしたの? 浮かない顔だね、リュイ」

 浮かない顔になるのは仕方がなかった。


 飛びたい。
 でも、飛べるだろうか。

 不安が胸を支配する。

「ふうん……」
 ふと気付くと、ハルにじろじろと見つめられていた。
「……何?」
「いや、こんだけ可愛いのに、何でまだ処女なんだろうな、と思ってね」

 処女……?
 確かまだ性行為をしていない女の子のことだ。

「? 何でって、僕は男だよ?」
 そう答えると、ハルはぷっと吹き出した。

 随分と楽しそうに笑う。

 何が何だか。

「ま、卒業までにロストヴァージンすることを期待してるよ。リュイの喘ぎ声を聞いておきたいしね」
「……喘ぎ声?」
「シン先輩の声は最高だったねぇ。今は、うん、シアの声が1番だな。……さて、リュイは感じるとどんな声を上げてくれるのかな?」

 1つ1つの反応を楽しまれているような気がする。狭くなっていく階段に、ハルの楽しそうな声が響いた。

「朝っぱらから、何て会話してるんだ……。リュイ、お前、警戒心なさすぎ」
 後ろからぽかりと頭を叩かれる。見上げると、ライの呆れ顔が見えた。その隣でシアが苦笑している。
「やあ、シア。一昨日も素敵な声だったね」
「…………ありがとう」
 何故だろう、そう答えるシアの笑顔は、少し引き攣っているように見えた。


 そうこうしているうちに、屋上に辿り着いた。途端、ぞくり、と恐怖が沸き起こった。膝から力が抜けていきそうになる。
「リュイ」
 カイが駆けて来るのが見えた。差し出されたその手を握り締めると、恐怖が遠のいていくのが判った。
「……うん。大丈夫」
 大きく深呼吸する。
 その直後、名前を呼ばれた。どうやら、よりによって筆記試験の成績順に行うらしい。

 握り締めたカイの手を、離したくはなかった。でも実際のところ、一緒に飛んでもらうわけにはいかない。

 大丈夫。飛んでみせる。

 心の中でそう唱えて、1つ息を吸い込んでから、前に進み出た。
「大丈夫。手ぇ、握ってやるから」
 離れ際、耳元でカイがそう囁いてくれた。
 手を離した後も、不思議とカイが傍にいてくれているような気がした。

 呪文を詠唱すると、身体がふわりと浮き始める。

 怖い――!

 炎に包まれる建物が脳裏に浮かんだ。
 悲鳴とともに落下していく自分が、そこにいた。

「リュイ! 上を見ろ!」
 カイの声が聞こえた。
 反射的に、空を見上げる。

 え……?

 突然、満天の星空が視界に飛び込んできた。それは、星祭の集いで見た、あの綺麗な星空だった。
 その星空の中に、カイの姿が浮かぶ。
『手ぇ、握ってやっから。飛べ、リュイ』
 カイの声が、頭に響いた。カイの手が、差し出されるのが見える。

 カイの傍に行きたい。
 大丈夫。――飛べる!

 一度とんっと地面を蹴る。小さく呪文を唱えると、身体が空に舞った。
 ふわりと宙に浮くその感覚に、今度は不思議と恐怖はなかった。
『来い』
 カイがそう呼ぶ。その手を取って、星空を駆けた。


「見事だ、リュイ。」
 そう告げる教授の声に、現実へと引き戻される。見渡すと、中庭の地面に降り立っていた。
「僕……、」
 見上げると、ちょうどカイが青空に身を翻すのが見えた。そのまま、カイの身体が空を駆けていく。

 綺麗だ、とそう思った。
 澄んだ空が、カイの瞳を思わせた。

 今まで空を飛ばなかったなんて、何て勿体ないことをしたんだろう。

 僕、空が好きだ。

 カイの瞳と同じ色をした夏空も、初めて口付けた星空も。
 そして、きっとこれから、もっともっといろんな空を好きになる。

「リュイ!」
 カイが地面に降り立つ。
「上出来だ!」
 そう告げるカイの嬉しそうな声とともに、その腕の中に抱き寄せられた。
「大好き」
 胸が高鳴るのを抑えられなくて、カイに口付ける。

 好き。好き。大好き。

「……おい、リュイ」
 何度目かのキスの途中、カイがそう告げた。ふと視線を感じて、振り返る。

「おーおー、気持ち良さそうな顔して……。うん、これなら『声』も期待できるねぇ……」
 すぐ間近に、ハルがいた。
 いや、ハルだけではない。いつの間に飛んだのだろう、皆が中庭に揃っていた。
 教授に呼ばれて、カイが駆け出す。

「……みんな、終わったの?」
「いーや、1人だけ再試。エルの奴が、飛べなかった」
 ライの声に見渡すと、確かにエルの姿だけがなかった。

 確かエル、飛行術、得意じゃなかったっけ……?

 そう考えて、ふと思い当たる。
『やり残したことがあるから』 そう言って、今朝早くカイは部屋を出た。
 この場所にこれだけ大掛かりな魔法を掛けたカイである。星空以外の何かをエルに見せていても不思議ではない。

 まさか……?

「まいったね。やられたよ。まさかこの僕が飛べないなんてね」
 階段から降りて来たのだろう、エルが姿を現した。
 ふと視線が合う。
「認めてあげるよ、リュイ。よく飛んだね」
 そのまま近付いてきて、目の前に手を差し出された。

 握手……?

 恐る恐るその手を取ると、エルが驚いた表情をするのが見えた。
「何だ、もうこっちも克服しちゃったの」
 そう告げて、エルがくすくす笑った。
「でも、少しは警戒心を覚えるべきだね」
「……え?」
 突然、握った手を引き寄せられる。エルの顔が間近に来たと思ったときには、既に口付けられていた。

 次の瞬間、ぴしり、と空気が切り裂かれる。

 頬から流れる血を片手で拭いながら、エルが振り返った。その視線の先、表情を変えることなく踵を返すセイの姿があった。その後ろ姿を見つめるエルの視線には、何故か胸が痛んだ。

「てめぇ、再試も受けたくねぇようだな」
 カイの声が聞こえる。
「冗談だって。そう怒るなよ」
 両手をひらひらさせながら、エルは数歩後退った。
「でも、こんなに可愛いリュイを放っておくカイも悪いと思うけどね」
 その言葉に、カイの表情が強張るのが見て取れた。
「リュイがいまだヴァージンだってことぐらい、気付いてるよ。ねぇ?」
 エルの声に、何人かが頷いている。
「リュイも早く抱かれたいよねぇ?」
 突然そう問い掛けられ、驚いた。
 でも、自分の気持ちは決まっていたから、
「うん」
 小さくそう答えると、カイに頭を思いっきり叩かれた。


 卒業試験はまだ始まったばかりだ。
 でも、卒業試験が終わると、すぐに卒後の進路が決まる。一緒にいられる時間はぐっと減る。

 判っている。
 残された時間はもう、あまりない――。


   第3部『試験』 おしまい。

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お付き合い下さり、本当にありがとうございましたvv
「カイxリュイ」のお話は第5部構成です(^^)
『試験』はその第3部です♪

第4部からは、18禁とさせていただく予定です♪
リュイの誘い受(?)にご期待下さい♪ 

続きを楽しみにしてやって下さると嬉しいです♪

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4万HITSvv ありがとうございました♪
皆さまに支えていただいて、ここまで頑張ることが出来ました。
未熟者ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いですvv
本当にありがとうございました(^^)
これからもどうぞよろしくお願いしますvv

==========================

明日の午後から、少しばかり旅行に出掛けます(^^)
中国地方から九州にかけて、車で走って参ります。
仕事があるので、月曜日の朝までには帰って来ます。
というわけで、週末更新できません(><)
出掛ける前に、『Crossing』の続きをUPしていきますね♪
お題も1つくらいは…!

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先程、高瀬妹よりTELが…っ!
「姉ちゃん、買い物できんから、子供2人ほど置いてっていい?」

何ですと!?

いつもは甥っ子の1人や2人は実家に預けられているのですが(←おい)、現在、高瀬父の入院先に高瀬母が付き添っているので、実家はカラッポ。
しかも、今、夏休みですからね~(><)

というわけで、甥っ子2号3号がやって来る予定(^^;
(ちなみに甥っ子1号は、今日はサッカー教室です)

今日の午後は潰れたな…(><)

さあ、何して遊ぼう(^^;
夜にお話を書く余力は残さなきゃ…!





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Last updated  August 24, 2006 11:53:41 AM
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海神ほだか@ ご無沙汰してます 高瀬さん、お久し振りです。以前イラスト…
高瀬RING @ >prisonerNo.6さんvv ありがとうございますvv prisonerNo.6さん、ご無沙汰すみませんで…
高瀬RING @ >旭陽さんvv ご無沙汰すみませんでした! 旭陽さん、こんにちは! 励ましのお言葉…
prisonerNo.6 @ おかえりなさい。 言葉、思いつかなくて。 おかえりなさ…
旭陽(あさ‐ひ) @ おかえりなさい!! 遅まきながら、お父様のこと、心よりお悔…

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