2007年04月19日
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今日のまとめ

1.ネット・インタレスト・マージンは利鞘の指標
2.総資産利益率では中国建設銀行が安定的にリードしている
3.ノン・パフォーミング・ローン比率では各行とも随分改善した

ここ数日の間に中国建設銀行と招商銀行が相次いで決算発表しました。これで中国の主要銀行の2006年の決算が出揃ったことになります。そこで各行の営業の内容を比較検討してみたいと思います。

ネット・インタレスト・マージン

 銀行の収益力を見るひとつの尺度が調達金利と貸付金利の差額であるネット・インタレスト・マージンです。特に中国の銀行はフィー・ビジネスのような商品が未だ発達しておらず、貸付主体のシンプルな経営構造ですからネット・インタレスト・マージンを見ることは有効だと思います。この数字は当然、大きければ大きいほど良いです。下のグラフを見ると中国建設銀行のマージンが2.79%と2006年の時点でここに掲げた5行中一番大きいばかりでなく、過去においても比較的高い水準をコンスタントに維持していることがわかります。交通銀行は2003年の時点では2.54%でしたが2006年には2.75%へと着実に拡大しています。招商銀行も2003年の時点では同じく2.54%でした。2006年のマージンは2.72%です。これら三行に比べると中国銀行(2.54%)と中国工商銀行(2.39%)のマージンは見劣りします。なお、最近、人民銀行は預金金利、貸付金利をそれぞれ引き上げつつありますが、換金性の高い預金であるデマンド・デポジットはこの利上げの対象外でした。従って最近の利上げはデマンド・デポジットによる調達の比率が高い中国建設銀行などにとってはネット・インタレスト・マージンの拡大要因であると言えます。

中国主要銀行のネット・インタレスト・マージン


総資産利益率(ROA)

 次に同じく銀行の収益性の尺度のひとつである総資産利益率(ROA: Return on Asset)について見てみましょう。この数字も高ければ高いほど良いです。ここでも中国建設銀行が他行より高い利益率(0.92%)を示しています。中国銀行(0.96%)、招商銀行(0.81%)、交通銀行(0.78%)らも改善基調にあります。その中で中国工商銀行(0.71%)が伸び悩んでいることが読み取れます。

中国の主要銀行の総資産利益率


ノン・パフォーミング・ローン比率

 ノン・パフォーミングというのは「焦げ付き」という意味です。従ってこの指標は貸付総額に対する焦げ付き比率を示しています。当然、数字が小さければ小さいほど好ましいです。このグラフを見ると一番ノン・パフォーミング・ローン比率の高い中国銀行でも4.24%(2006年)とまずまず容認できる水準です。特に中国の銀行はかねてから不良債権が多いことで知られていましたから昔を知る人が見たら最近のノン・パフォーミング・ローン比率は随分良い数字のように思えます。ただ、これらの数字が改善したのは主に中国政府からの資本注入によるバランスシートの「大掃除」が寄与している部分が多く、経営努力によるものだけではありません。なお中国建設銀行のノン・パフォーミング・ローン比率の山が低いのは注入のタイミングが早かったからです。おおまかに言えば最近になって資本注入された銀行ほどノン・パフォーミング・ローン比率の改善が遅かったという風にも言えるでしょう。なお、これは余談ですが今回の中国の四大銀行の相次ぐIPOのように上場しなければいけない案件が幾つか待機している場合、株の売り出し元(この場合、中国政府とそのファイナンシャル・アドバイザー達)は最初に一番内容の良い案件をぶつけるというのは投資銀行業界の常識です。その理由は最初に出来の悪い会社をIPOしてそれがズッコケたら、後に続くIPOが出せるものも出せなくなってしまうからです。さらに一発目のIPOが成功して人気になれば二番手以降の案件の発行条件も売り手側に有利な条件へと誘導できる利点もあります。ですから四大銀行のうちの一番手が中国建設銀行であり、最後が中国農業銀行(これは未だ出ていませんが)であるという事実は深く考えてみる価値のあることなのです。

中国の主要銀行のノン・パフォーミング・ローン


焦げ付きに対するカバレッジ・レシオ

 次に焦げ付きに対する引当金がどれだけとってあるかの比率について見ます。この数字は高ければ高いほど良く、100%を超えていれば現在わかっている焦げ付きローンに関しては「カバー出来ている」と解釈します。もちろん、現実には銀行のバランスシートの健全性は信用市場の置かれた環境などに左右されて刻々と変化してゆくものですからカバレッジ・レシオが今100%を超えているからといって安泰という風には断言出来ません。投資家が特に気をつけるべきシナリオというのは上で見たノン・パフォーミング・ローンが上昇、つまり焦げ付き額が増えているにもかかわらずカバレッジ・レシオが下がってくるようなケースです。大体、焦げ付きというのは融資先の多くが返済に困っている状況(それは不景気のときなどにそうなります)に増えるものですが、そういう時こそ慎重な経営者は引当金を積み増すものです。しかしそうすると利益に響きますから軟弱な経営者はついつい目先の決算を良く見せる誘惑に負けてしまうわけです。幸い上のグラフで見たように現在の中国の銀行のノン・パフォーミング・ローン比率は安定的に推移しています。さらに下のグラフに見られるように各行はカバレッジ・レシオを引き上げつつあり、その意味では「ちゃんと正しいことをやっている」と評価できます。尤も中国工商銀行の70.56%(2006年)というカバレッジ・レシオにはちょっと寂しいものがあります。

中国の主要銀行のカバレッジ・レシオ


ティア・ワン・キャピタル・レシオ



中国の主要銀行のティア・ワン・キャピタル・レシオ





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最終更新日  2007年05月08日 17時49分40秒


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