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株式はよく「成長株」「割安株」などという分類がなされます。一般に「成長株」というのは利益成長率が高い半面、株価収益率(PER)が割高な株、「割安株」というのは株価収益率(PER)が割安であるものの、高い利益成長を期待できない株を指す事が多いようです。但しここで気を付けなければならないのは、成長というのは利益成長の予想、又は期待を指すのであって、その後の株価上昇率の高低を指すものではない、という事です。 7月の楽天証券講演会でもご紹介しましたが、米ペンシルベニア大ビジネススクールのシーゲル教授が興味深い例を挙げています。 「貴方は今1950年にいます。IBMとエクソン・モービル(当時はスタンダード石油という会社名)、どちらの株を買いますか?」 コンピューターやハイテク技術が殆ど存在していなかった1950年、IBMは成長株の代表であったでしょう。一方で石油会社は1950年でも既にオールド・エコノミーの代表でした。会社名からくるイメージだけでなく実際その後の55年間、利益成長率はIBMが10.75%に対してエクソン・モービルが7.75%と上回っています。どちらが成長株かというと、間違いなくIBMが成長株と言える状況でした。 しかしその後の55年間の株価の上昇率はどうだったでしょうか?IBMが年平均13.09%の上昇率となる中、エクソン・モービルは年平均14.46%の上昇率を記録しました(配当の再投資を前提)。前号でお示しした通り、たかが1.37%の違いですが、1950年にそれぞれ投資していた10万円は55年後に8149万円もの違いとなって表れてきます。何故、ピカピカの成長株であるIBMがオールドエコノミー株であるエクソン・モービルに負けてしまったのでしょうか? それはIBMの株価が常に割高であったからです。その55年間、IBMの株価収益率(PER)の平均はエクソンモービルの2倍以上で取引されていました。エクソン・モービルから分配される配当で、割安なエクソン・モービルに再投資できる事によって複利効果が生まれ、それがどんどんパフォーマンスを上昇させてきたのです。ちょうど株式版「兎と亀物語」とも呼ぶ事ができるでしょう。 1999年11月、ダウ30種平均にマイクロソフトとインテルという2つのハイテク株が採用されました。当時、マイクロソフトやインテルの株価収益率(PER)は50-60倍で、いわゆる成長株と言われるものでした。それから今日まで、ダウは3%上昇しただけですが、マイクロソフトは41%下落、インテルは52%の下落となりました。最近、あれだけ破綻の危機が騒がれているGMでさえ同期間41%の下落ですから、いかにハイテク株=成長株というイメージから来る罠が怖いものかお分かりいただけると思います。 株式投資において成長率というのは重要な要素です。しかし一般に言われる成長株というのが、単にハイテク株であるとか、期待が大きい、といったイメージから来るようなものであれば非常に危険です。これらは単に、繰り返し申し上げている「期待が不安を上回っている」株に過ぎないのです。中長期的に優れたリターンを上げるには、イメージに基づく「成長」の概念を完全に取り払い、上記のような成長の罠にはまらないようにする事が大切です。
2006.07.31
前号で、もし50年前に貴方が「低PER」と「高PER」にそれぞれ10万円投資していたら、複利効果を伴って現在いくらになっているか、という問題をお出ししました。まずその答え合わせをしたいと思います。低PER 年率平均上昇率: 16.22%10万円 × (1+0.1622)^50 = 18,367万円(^は「乗」、1.1622の50乗という意味)高PER 年率平均上昇率: 7.12%10万円 × (1+0.0712)^50 = 312万円年間たかが9%強の違いですが、50年間では1億8000万円もの差が出てしまう訳です。言うまでもなく、これは複利の力です。例えば年間の上昇率、16.22%分を毎年引き出してタンスに入れていたとしても、50年前の10万円は合計91万円にしかなっていません。しかし増えた分を引き出さずにそのままにしておくと複利効果が生まれます。もともと投資した10万円が増えるだけでなく、増えた分がまた増えるという現象がずっと続いていきます。即ちお金がお金を生むという好循環が生まれるのです。この好循環が生まれるようにするには、1.良い株を安く買う 2. 中長期的に投資し、複利効果を生ませる、の2点を守らなければなりません。「良い株を安く買う」が難しければ、単に「リスクプレミアムが成長率を上回っている=低PERの株を買う」を守るだけでも大きな差が出てくるのは上記の通り、歴史が証明しているところです。日本では長い間ゼロ金利時代が続いたので、投資においても複利効果に関しては見過ごされがちではないかと思います。もちろん金利がゼロの世界では複利効果は生まれません。しかしアメリカのように金利が5%で、長期的な株式投資の期待リターンが金利を大きく上回る世界では、長期的には大きな複利効果が表れてきます。さて今回までで、株式評価の代表的指標であるPER(株価収益率)の使い方を見てきました。PER(株価収益率)は株価評価の指標としては単純すぎますが、歴史的にはPERを利用する(低PER株を買う)だけでも指数を上回るリターンを得る事が証明されています。それではこの単純な PERでも役立つのは何故でしょうか?それは前号でも申し上げた通り、PERが低いという事は、少なくともリスクプレミアムが成長率を上回っているからです。言い換えれば不安が期待を上回っているからです。これは投資というのがお金を増やす手段である限り、非常に大切な事です。というのは、いくら良い会社の株でも、期待が先回りして「数年後にここまで上昇するであろう」という水準にまで既に上昇してしまっていたら、その株は数年間上昇する事はありません。ただPERではリスクプレミアムと成長率の相対的な関係しか分かりません。即ち低PERならリスクプレミアムが成長率を上回っている、という事実のみです。しかし、同じリスクプレミアムが成長率を上回っている状況でも、その成長率が低いよりも高い方が良いに決まっています。時間が経って市場のリスクプレミアム(不安)さえ後退すれば、高い成長率が期待できるからです。今回でPERは卒業し、次回以降はその辺の話に移りたいと思います。
2006.07.21
前回「株価収益率(PER)の使い方(1)」の中で、「仮にリスクプレミアムと成長率が同じとする」という前提を置きました。しかし実は、株式投資においてはこのリスクプレミアムと成長率の関係が非常に重要なのです。「シンプルな株価評価モデル」を思い出してください。 株価=一株当りキャッシュフロー 国債利回り+リスクプレミアム - 成長率リスクプレミアムと成長率が同じであれば、分母は国債利回りだけになり、中長期的にはこれが益利回りと収束する傾向がある事は前号でお示しした通りです。 しかし、当コラムで繰り返し申し上げている通り、市場が織り込んでいるリスクプレミアムは高ければ高いほど、その後得られるリターンは高い筈です。即ち、リスクプレミアムと成長率は同じではなく、出来ればリスクプレミアムが成長率を上回っている状態が望ましい、という事になります。「リスクプレミアムが成長率を上回っている」とは簡単に言えば、不安が期待を上回っている、という事で、正に投資のチャンスなわけです。逆に期待が不安を上回っているような時は市場が投機的になっている可能性があり、かなり注意してかからなければなりません。 リスクプレミアムが成長率を上回ると、(リスクプレミアム-成長率)分だけ益利回りが国債利回りを上回り、株式投資に有利な状況が生まれます。現在、アメリカの株式市場は正にその状況です。ですので単にインデックス(指数)に投資するだけでも中長期的には優れたリターンを生むことができるでしょう。しかしもう一歩進んで、リスクプレミアムが成長率を大幅に上回っている銘柄に集中投資する事が出来れば、中長期的には国債利回りやインデックスを大幅に上回るリターンを生むことができるはずです。実際我々はこれまで、この方法でインデックスを上回るリターンを生み出してきましたし、今後もその可能性が高いと考えています。 歴史的には、単に、益利回りの高い銘柄に投資するだけでもインデックスを上回るリターンが生まれている事が分かります。下表は過去約50年間、インデックスの中で低PERの銘柄のみに投資した場合と高PERの銘柄のみに投資した場合のリターンを対比したものです(PER:株価収益率=益利回りの逆数、なので益利回りが高い=低PER 資料:ニューヨーク大学ビジネススクール)。 低PER高PER1950年代21.84%19.27%1960年代13.96%10.96%1970年代8.89%2.26%1980年代7.56%7.99%1990年代11.44%16.99%2000年代33.60%-14.73%50年平均16.22%7.12%16%と7%、たかが11%の違い、と思われるかもしれません。そこで、もし50年前に貴方が「低PER」と「高PER」にそれぞれ10万円投資していたら、複利効果を伴って現在いくらになっているか計算してみてください。答えは次号で合わせてみることにしましょう。
2006.07.11
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