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アイアンマンへの道


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ちなみに実際の完走タイムは12時間35分58秒


<動機>

オレがアイアンマンにチャレンジしようと思いついたのは、楽天日記によると、2006年12月10日である。
オレはかつてマラソンに熱中していて、2003年春の東京荒川マラソンを皮切りに、年に4回くらいのペースでフルマラソンの大会に出走していた。それが、2005年の10月のシカゴ・マラソン、その2週間後のデトロイト・マラソンと続けて自己ベストの記録で完走したのを最後に、突然マラソン熱が冷めてしまった。マラソンに決定的に飽きたのである。

以降オレは、北極圏で犬ゾリ・アドベンチャーをしてみたり、アフリカに飛んでキリマンジャロ登山をしてみたりと、マラソンに代わる暇つぶしを探求していたが、どれも今ひとつ夢中になれなかった。

そんなある日、ジョギングから帰宅して何気なくTVをつけたところ、 アイアンマン の世界選手権を放映していた。
アイアンマンというのは、日本では「 鉄人 レース」とも呼ばれているトライアスロンの中でも最も距離の長いレースで、水泳が3.8キロ(制限時間2時間20分)、自転車が180キロ(制限時間8時間10分)、最後がフルマラソンの42.195キロ(制限時間6時間半)を17時間以内(大会によっては16時間以内)に走り切るというレースである。

常識的な感覚でいえば、42.195キロのフルマラソンを完走するというだけでも大した体力・根性とみなされるだろうが、アイアンマンというのは、マラソンを走る前に4キロ遠泳して全身クタクタになってから、さらに自転車で180キロ(これは 東京~静岡間 または東京~那須高原間の距離である)も走らなければいけないのである。完走するために要求されるその総合的な体力と精神力は、一般人にはちょっと想像もつかない。

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オレは、次から次へとゴールする連中の「心身の限界を突き抜けた」という神々しい表情や、失神寸前でヨロヨロになったり地面に這いつくばって匍匐前進でゴールしている様子をテレビで見ているうちに、自分がこれまで走った10数回のフルマラソンやキリマンジャロ登頂のことを想起し、すっかり感動していた。

マラソンも飽きて、北極圏や約6000mの登山も十分堪能し、「次は何をしようか…」とボーっと考えていたところだったオレは、単純にも「…やっぱり次はコレかな…」と思ってしまったのである。

オレがトライアスロン自転車を購入し、市内のスイミング・プールの会員になったのは、それから半月足らずのことであった。


<アイアンマン完走までの経過>

せっかちなオレは、最初の年(2007年)はハーフ・アイアンマン(水泳が1.9キロ(制限時間1時間10分)、自転車が90キロ(制限時間約4時間)、最後がハーフ・マラソン21.1キロ)完走を目標とし、翌年(2008年)にはフルのアイアンマンを完走するつもりでいた。しかし翌年、転職・引越しという大きなイベントが重なったため、新しい生活に落ち着くことを優先させ、結局3年目(今年2009年)にフルのアイアンマン完走を持ち越したのであった。

当初、オレにとっていちばんの課題は水泳であった。
自転車はスポーツとして乗ったことはないが、10代の頃に自転車で北海道一周なんかをして長い距離を走った経験はあるし、ちょっとトレーニングすれば180キロくらいは完走できる目算はあった。
マラソンは10数回完走しているので、あらためてトレーニングしなくとも完走できる自信はあった。

一方、水泳は、自分は決してカナヅチではないまでも、自分でなんとなしに水泳を覚えたクチであり、泳ぐフォームはテキトウ。スピードも遅いし、クロールでは続けて100m泳ぐのが精いっぱいであった。クロール、平泳ぎ、背泳を組み合わせれば、長い距離を泳げないこともないが、平泳ぎや背泳はクロール以上に遅く、3.8キロを2時間10分やそこらで完泳するスピードさえなかったのである。

なので、水泳はサボることなく、熱心に練習し、その結果少しずつスピードも距離も伸びていった。最終的には、遠泳に最適な 「トータルエマージョン」 という泳法をインターネットで知り、この泳法で泳ぐようになってからほぼクロールだけで3.8キロを泳ぎ切れるようになり、最大の課題だった制限時間内での3.8キロの完泳という課題を克服できた

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初ハーフ・アイアンマン(ミシガン州ベントン・ハーバー)


ちなみに最初の年(2007年)は、トレーニングを開始してから半年足らずの6月に、 距離の短いトライアスロン に初挑戦し、その数週間後に オリンピック・ディスタンス (水泳1500m、自転車40キロ、ラン10キロ)、さらに1ヵ月後に、 ハーフ・アイアンマン を完走。この時は水泳のコースがミシガン湖の潮の流れに沿っていたので、制限時間に10分以上余裕のある1時間足らずで完泳できたのはラッキーであった。

翌2008年は
ハーフ・アイアンマン2レース に出走。引越した街のトライアスロン・チームの一員となり定期的な系統だったトレーニングをするようになったおかげで、前年に比べてタイムの向上は著しかった。

3年目の今年は5月末のスプリント・ディスタンス、6月中旬のオリンピック・ディスタンス、8月上旬のハーフ・アイアンマンと、出走するレースの距離を段階的に延ばし、8月末のフルのアイアンマンに備えたのであった。

<トレーニング及び装備その他>

トレーニングに関しては、オレの場合1年目はまったく自己流、2年目はトライアスロン・チームの練習会に出る以外はとくに計画的なトレーニングメニューは準備しなかったが、今年(2009年)のフルのアイアンマン完走のためには書籍を購入しアイアンマン初心者用の24週間分の
トレーニングメニュー に従った。どれだけのトレーニングを積めばアイアンマンを完走できるのか検討もつかないアイアンマン初挑戦者は、この手のトレーニング・メニューに従うのがいいと思う。

はっきり言って、アイアンマン完走のためのトレーニング量はハンパではない。フルマラソン完走のための倍以上の時間(及び労力)を要求されることを覚悟しておくべきだ。具体的に言えば、初心者でも1週間に12~15時間程度の時間(平日1.5~3時間、週末3~5時間)はトレーニングに割いている。

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オレの愛車 Kestrel Aerofoil Pro

あと、時間に加えて費用もハンパではない。
必要な道具でいえば、水泳についてはウェットスーツに4~6万円掛かる程度で済むが、自転車は数十万円の出費を念頭に置いておくべきだ。そのヘンのローカルなトライアスロン大会に出る程度であれば中古のロードバイクでも支障ないだろうが、180キロを制限時間内に走ろうと思ったら、エアロ・ハンドルのついたカーボンフレームの
トライアスロン・バイク (20万円~)に加え、カーボン製の車輪(前後ペアで15万円~)は標準装備である。さらに、最低必要な装備としてバイク・シューズが1.5万円~、ヘルメットが1万円~、ジャージとパンツで1.5万円~、サングラス(ゴーグル)に数千円、その他工具類やボトル等に1万円~といったところ。

また、これは必須ではないにしても、アイアンマンみたいな莫大な量の激しいトレーニングをこなすためにはサプリメントにもカネが掛かる。たとえば、痛んだ筋肉の修復のために、プロテインパウダーが月3~4000円、アミノ酸(錠剤や顆粒)が月3000円、心肺機能の維持のためのCoQ10(コエンザイム)に月3000円、ゲータレードなどスポーツ飲料代に月2000円、エネルギー源のパワーバーやパワージェルに月2000円、といったところ。

あと、多くの人は、トライアスロン・チームに加入したり(入会金は年間数万円?)、数ヶ月のトレーニング・コースや数日間のトレーニング・キャンプ(いずれも数万~10万円程度)に参加して本番に備えている。

さらに大会参加料が5~6万円(ハーフ・アイアンマンで3万円)。これに当然、交通費と宿泊費が加わる。
マラソン大会であれば日本国内のレースで5000円前後、海外でも1万円程度が参加料の相場であるのに対し、アイアンマンの世界はケタが違うのである。
ちなみに一旦参加料を払ったら、キャンセルしても1万5千円しか返還されない(しかも大会の数ヶ月前までに限る)。

斯様に、これを読んでいるアナタが暇とカネと体力を持て余している人であれば、アイアンマンというのは持って来いのスポーツであるが、そうでない一般社会人であれば、アイアンマンというのはそれなりの事前投資、犠牲、コミットメントなしではとても取り組めない、贅沢なチャレンジなのである。

(つづく)


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