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悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。翌年、高値の花と思っていた由樹枝と付き合う事になった。デートするまで進展し、手を握り、さらにキスするまでの仲の恋人となる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行後、由樹枝と受験勉強する。
写真はyahooより借用
「なぁ、推薦が決まったら、上高地に行かないか?」
「え? 上高地? どうして?」
「ほら、俺たちの記念旅行だよ。」
「旅行? 泊まるの?」
「そう、1泊で行こうよ。」
「勉強は? 1泊で行ったら、2日は勉強できない。遅れるよ。」
「一生に一度だ。俺は由樹枝と一緒に行きたい。」
「でも・・・。」
「勉強が心配なら、参考書も持って行こう、電車でも、バスでも移動中は勉強できる。宿に着いたって、勉強も出来るよ。」
由樹枝は、勉強の事を心配している。悠介の立てたスケジュールに基づいて勉強しているが、かなり頑張って、ようやく追いついている程度である。中間試験の勉強もあり、その間は、丸々、スケジュールは遅れる。今、丁度、中間試験の勉強を始める所だったのである。
悠介は、何とか由樹枝を説得した。先生からも、参考書の勉強は来年からが良いと言われていたし、来年の3月までに、必ずしも完璧に完了する必要はない。予習のような気持ちで取り組めばいいのだ、と。悠介は、2日間は、勉強や家族、友人の事も忘れて、由樹枝と二人だけの世界に浸りたいと思っている。しかし、由樹枝の心配を少しでも取り除く為、参考書は持って行く事にした。
由樹枝の同意を取り付けた悠介は、具体的な計画を立てるべく、勉強の合間を見つけて、本屋に行って、ガイドブックなどを読み漁った。宿に泊まるだけでなく、上高地をハイキングした方が良いことが分かった。早めにバスを降りて、大正池辺りを歩く。宿にチェックイン後、河童橋から湿原や、梓川を見ながら、明神池を見て、明神橋を渡って帰って来るコースを歩く。2時間位で歩けそうである。
この通りに行く為には、土曜日学校が終わってからでは、夕方遅くなり過ぎる。翌日の日曜日は、宿でゆっくりしたい。日曜日に歩きたくはない。それで、由樹枝に又、反対されそうであるが、土曜日はさぼったらどうかと悠介は思う。一生に一度である、と、悠介は、そう強く思うのである。もし、由樹枝が強く反対するならば、土曜日は移動だけで宿泊、翌日の日曜日にハイキングにしても良いと、考える。
それは、後で相談する事にして、宿を調べた。上高地の宿は高い。悠介の小遣いだけでは不足する事が分かった。
「困ったな、どうしよう?」悠介は思案した。
「どうするかなー? 今からバイトでは間に合わない。」
考えた末、母親に借りる事にした。理由は、卒業旅行に行くが、お金が不足する、大学に入ったらバイトして返す。これで、何とか借りられるはずである。
日程は、大学の推薦が決まる10月中旬以降、そして、同時期に終わる中間試験の後、10月20日の週の土日が最も好ましい。紅葉も最高の時期であるのだ。これで、決定である。後は、由樹枝に相談し、了解をとって、宿の予約する。一度、池田町に帰って母親から、お金を借りる。その前に、電話か手紙で、母親に依頼をせねばならない。
これだけを、決めると、悠介の心はすっきりした。悠介の受験勉強は順調である。ほとんどの時間を勉強に費やしている。スケジュールより、かなり早く進んでいる。悩みは何もない。
M大学付近のアパートの事に関して、急に思い出した。然別湖を案内してくれた、お兄さん、山本さんから、手紙の返事を貰っていたのである。紹介してくれるアパートに、丁度4年生がおり、悠介が入学する前に卒業する。その部屋を借りたらどうかとの事である。その学生は、橋本さんと言うが、一度、アパートを訪ねて、話しを聞いたらどうかとの、山本からの親切な手紙である。
山本さんから、橋本さんには、既に概略を説明してあるとの事、素早い山本さんのアクションに感謝である。遅れてはならじと、早速、橋本に手紙を書いた。12月頃、東京へ行きたいと書いた。手紙のやり取りをして、現地に行くには、その頃が良いであろうと考えたのである。早めにアパートを見て、ついでに大学も見て来れば、安心出来る。
そんな事で、10月第一週も慌ただしく過ぎ去った。もう来週から、中間試験が始まる。悠介は余裕であるが、由樹枝は必至だ。勉強で焦っているだろうが、上高地行きは、土曜日、授業をさぼって行く事を了解した。考える余裕がないのかも知れない。悠介の熱意に負けたのかも知れない。中間試験に集中して貰う為、試験が終わるまで、会わない事にした。
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