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2007.01.30
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カテゴリ: フランス映画
PAS SUR LA BOUCHE


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寸評:あのアラン・レネの作品。軽佻浮薄なオペレッタに抵抗がなければ楽しめる。ボクとしては監督がレネだけに色々考えてしまう。

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アラン・レネと言えばボクにとっては初期短編や『夜と霧』、そして 『二十四時間の情事』 や『去年マリエンバードで』や 『ミュリエル』 のアラン・レネだ。新作は1980年の『アメリカの伯父さん』までしか見ていない。そのレネが81歳にして彼が生まれた頃のオペレッタ(喜歌劇)を映画に撮った。一体これは何なのだろう。何故なのだろう。

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ボクはオペラは好きだけれど、今まで見た中ではベルイマンの『魔笛』以外は、オペラ映画ほどつまらないものはない。またミュージカル映画も好きでない。この『巴里の恋愛協奏曲』を見始めたら、なかなかいけるという感じ。レネは 『二十四時間の情事』 でも迷った末に岡田英次にフランス人役者の吹き替えを使わず、岡田本人のフランス語を採用した。ここでも歌の部分を歌手による吹き替えにはせず、必ずしも歌の専門でない役者本人に歌わせている。だから専門の歌手のような歌唱はなく、そこに不満を持つ向きもあるようだが、ボクはこれはこれでかえって良かったと思う。歌とセリフでの声の断絶がないし、歌が専門的歌唱でないことが、結果としてこの作品を映画らしくしているかも知れない。ストーリーはごくごく簡単で、3人ずつの男と女が愛のどたばたを演じて、最後にはめでたく3つのカップルが成立するというもの。

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ところが始まって45分くらいのところで、巴里に外国人が多くて、巴里は巴里じゃなくなっている。掃除をしないと。というような移民排斥論のような歌が歌われ、『アクション・フランセーズ』という右翼新聞がデカデカと画面に映される。新聞記事自体にはそのような文字はないと思われるが、字幕スーパーの「民族排斥運動」というのは的確な意訳だ。フランス人観客に読めるのは、たぶんただ「L'ACTION FRANCAISE(アクション・フランセーズ)」という新聞名だけだが、フランス人ならシャルル・モーラのこの新聞(や組織)の意味はわかる。ここで見ているボクの思考回路はやや別の方向に向かされてしまった。いったい何故レネはこの新聞を大写しにしたのか。ここに、上に書いたレネがこの作品を撮った理由があるのか?。そう言えばレネがかつて『薔薇のスタビスキー』で取り上げた疑獄騒動スタヴィスキー事件も『アクション・フランセーズ』に関連する。(アクション・フランセーズ、スタヴィスキー事件、シャルル・モーラス等の詳細はWIKIPEDIA(http://ja.wikipedia.org/)で調べて下さい。)そしてそのまま見続けると、ばからしくも楽しいオペレッタは大団円を迎えて映画が終わる。なかなか単純には楽しめた。終わる直前にカーテンコールのようなスタイルで主演8人の役者を一人ずつ紹介するように登場させた演出も洒落ている。

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そうやって見てくると、エリック・トムソンなるアメリカ人闖入者の意味にも考えはおよんでくる。口へのキスを拒絶するというのにもピューリタン的潔癖性を感じるし、第三幕の部屋の管理人とのやり取りでの金銭万能主義。他のフランス人の登場人物の彼に対する相手のし方も考え合わせると、現代的に解釈するなら一国主義的アメリカとそれを嫌う旧世界という構図も見えてくる。一方の『アクション・フランセーズ』の排外主義の方はどう捉えるべきか。右傾化する社会にレネがなんとなく安住しているとも感じられるし、逆にこの家族の非時代性を冷ややかに見ているとも感じられるし。

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役者はみんな大物でいい演技をしているが、管理人フォワン夫人を演じた男性歌手・俳優のダリー・カウルがなかなか良かった。彼の最後の出演になってしまいましたね。ダリー・カウルはレネより3つ年少で、ちょうどこのオペレッタができた1925年生まれですが、この映画の2年ちょっと後にガンで亡くなってます。余談ですが、この映画の第一幕・第二幕の舞台ヴァランドレ家があることになっているのと同じ巴里郊外ヌイーのダリー・カウルの自宅は、彼の葬式の数日後に泥棒に入られてしまっています。

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それにしても現在84歳のアラン・レネ、88歳のイングマール・ベルイマン、94歳のミケランジェロ・アントニオーニ、みなさん元気ですね。

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Last updated  2007.01.31 00:37:44
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