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2008.04.16
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カテゴリ: 多国籍等その他
ARIZONA DREAM
Emir Kusturica
135min
(所有VHS)

arizona_0.jpg

第一次世界大戦の引き金となったサラエボ事件で有名な、旧ユーゴスラビア領のサラエボ出身で、現在はたぶんセルビア国籍のクストリッツァ監督。なかなか名前が憶えにくい人ですが、カンヌ、ベルリン、ヴェネツィアと世界の3大映画祭で授賞している人ですね。昨日の 『ギルバート・グレイプ』 のジョニー・デップ繋がりで見ました。いきつけの映画館で『黒猫・白猫』をやったときに見に行けず、今回はじめて見たクストリッツァですが、独自の世界を持った人のようですね。内容は違うけれど、フェリーニの世界との繋がりを感じました。たとえば昨日の『ギルバート・グレイプ』を例にすると、映画を見ていてもちろん映画の世界に入っている自分なのですが、それでもその世界は自分の今生きている世界の延長線上にある。これは描かれている時代や地域や人々の問題ではない。この『アリゾナ・ドリーム』だってほぼ現代のアメリカが舞台であり、『ギルバート・グレイプ』と大差はない。時代物はあまり見ない自分だけれど、そんな時代物でも今の自分の世界の延長線上にある。でもフェリーニの映画では、そうではない映画だけの独自の世界に見ている自分を連れていってくれる。この『アリゾナ・ドリーム』もそうでした。オヒョウ(魚の)が空を飛んでいくようなシュールレアリスティックな映像ではあるのだけれど、そうではない部分、もっとリアルな部分でも恐らく監督のイメージ世界が全体を支配していて、なので自分が見ている世界とは別物なんですね。それがこの映画の魅力だと感じました。映画だけの別世界を見せてくれる映画というのは、映画の一つの醍醐味だと思います。

arizona_1.jpg

題名からも想像がつくように夢を扱っていて、幻想的に美しい映像なのだけれど、扱っている内容はもっと辛辣で暗いものかも知れません。アリゾナ・ドリームっていうタイトルは、いわゆるアメリカン・ドリームっていうのを否定的な意味を込めてパロッたのでしょう。主なる登場人物は5人。子供の頃に両親を失ったアクセル(ジョニー・デップ)はアリゾナでキャディラックを売る叔父レオ(ジェリー・ルイス)に育てられたが、今はNYで漁業局かなにかの魚に標識をつけて数や成長を監視する仕事をしている。彼の夢はすべてを知っているので考えることもない魚になることだ。そんな彼のもとに叔父レオの使いで俳優志願のポール(ヴィンセント・ガロ)がやってくる。レオが若い若い女性ミリーと結婚するので、立会人になって欲しいというのだ。いわば現実世界への統合を拒否した生活をNYで送るアクセルは拒絶するが、眠っている間にアリゾナに連れてこられてしまう。叔父レオが追い求めるのは古きアメリカン・ドリームであり、金と地位と安楽な生活であり、夢は売ったキャディラックを月まで積み上げることだ。ひさしぶりにやってきたアクセルに、レオは社会への統合、レオ流のアメリカン・ドリームの世界へ誘う。つまりキャディラック・ディーラーとなって叔父を手伝い、そしていずれは仕事を継ぐことだ。

arizona_2.jpg

キャディラックのセールスを始めたアクセルのところにやってきたのは夫を射殺したらしい未亡人のエレイン(フェイ・ダナウェイ)と義娘のグレース(リリ・テイラー)。2人の女性は互いに愛憎こもごもの感情を持っていたが、アクセルはエレインの愛人となり彼女の夢を実現しようとする。彼女は(彼女によれば女が性的に自由な)パプアニューギニアに憧れていて、夢は少女の頃から空を飛ぶことだった。試行錯誤、失敗をくり返しながらアクセルは飛行機を作ろうとする。義娘のグレースは嬉しくはなかった。彼女の方は自己破壊的で自殺願望を持ち、亀になることを夢みていた。グレースは年令も近いアクセルに親近感を持ち、彼の中、あるいは彼との関係の中に何らかの人生の回答が得られるのではないかと期待していたのだが、アクセルの目は義母に向いていた。飛行機は完成してエレインとアクセルは空を飛んだが、あえなく木に墜落してしまう。

arizona_3.jpg

ある晩グレースはアクセルをロシアン・ルーレットに誘った。このシーンが映画のクライマックスかも知れない。この場面を境に映画の中の夢は急降下を始める。最初にグレースが一発目を自らの頭部に向けて撃つが、弾は入ってなかった。次はアクセルの番だった。彼は躊躇するがヤケになって数発自分に連射する。弾はやはり出なかった。グレースにとってこれは死との戯れであったが、アクセルが感じたのは生きる希望であり、生の意味だったのかも知れない。そんな彼がグレースに愛を示した結果、グレースは自己を反芻・再確認することを余儀無くされ、彼女が何とか保っていた均衡を破壊してしまう。

arizona_4.jpg

(以下ネタバレ)


arizona_5.jpg

儚いドリームが砕かれて、でも大人になってアクセルは生きていくのでしょうが、非常に虚しい感じです。そしてその虚しさというのは、ドリームが砕かれるからではなく、ドリームの中味自体、つまりはアメリカ人の追い求めるドリーム自体の問題なのだと、クストリッツァは言いたかったのではないかと思います。役者は主要の5人プラスミリーを演じたポーリーナ・ポリスコワ、6人すべて好演でした。それぞれの個性と魅力を十分に発揮しています。中でもフェイ・ダナウェイが良かったと感じました。

arizona_6.jpg




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Last updated  2008.04.18 02:00:48
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ずいぶん昔に・・  
10年以上前に1度だけ見たと思います。
ギャロが出ているので、見たんですが・・

ストーリー、きちんと読み取れていなかったと
思います。racquoさんのレビューを見て、もう一度
おさらいする必要がありそうな気が・・

ギャロ、バッファロー66が大好きな映画です。
独特な雰囲気があってとっても好きなんです。

いつか、見てくださいね~♪ (2008.04.18 02:59:05)

Nobubuさん  
racquo  さん
『バッファロー'66』は色んな人に薦められるんですが、
結局まだ見てません。何故かな?。
ストーリーにも興味はあるんだけれど・・・。

アメリカ映画、あるいはアメリカ人の役者が出る映画を
見ることが少ない自分なんですが、
リリ・テイラーという女優さんにはやたらと縁があります。
コイシェの『あなたに言えなかったこと』、
アイスランド映画『コールド・フィーバー』
そしてこの『アリゾナ・ドリーム』と、
追いかけているわけではないのに
今年になってもう3本も見ています。
他に何か彼女のオススメ映画はありますか?。

(2008.04.18 03:26:21)

バイプレイヤーのイメージが強いですね。  
racquoさんへ
下手すると、主役を食ってしまうかのような存在感
ですね、彼女。
それほど、見てはいないんですが、脇役でも印象に
残ったのは、アルトマンの「ショート・カッツ」
とタランティーノ監督の「フォールームス」が
良かったです。
主役級の映画なら、やはり「I SHOT ANDY WARHOL」がとっても良かったです。ちょっとイッチャって
る雰囲気が怖いけれど、引き込まれる人ですね~
「ホーンテッド」は怖すぎでした。(笑) (2008.04.18 19:23:29)

Nobubuさん  
racquo  さん
独特の雰囲気持ってますね、この人は。

追わなくてもまた偶然出会うのかも知れませんが、
アルトマン『ショート・カッツ』に出てますか。
これもいずれ見るつもりの作品だったから、
そのときで会えたわけですね。
長くて、やや複雑そうだから、そのうちDVD買いましょうか。

『フォー・ルームス』もオムニバスですね。
こちらも興味あります。
中古VHSでも買うか。

情報、ありがとうございます。

(2008.04.18 21:52:02)

映画だけの別世界を見せてくれる映画  
はる*37  さん
その通りだなと思います。
私の大好きな監督です。
ハリウッドの面々が出ているので、まさかクストリッツア監督と思わず暫く観ずにきましたが、中身は濃くて
この虚しさはやっぱり流石だ!と思いました。
テラス?(でしたか)皆が揃って渇いた大地に建つ粗末な家にいるシーンが、妙に残っています。 (2008.04.20 14:33:23)

はる*37さん  
racquo  さん
フランス映画、クストリッツァ、ジョニ-・デップ、
という妙な取り合わせが不思議で中古ビデオ買ってありました。
逆にどうこの映画を位置付けたら良いかわからず、
それで見ないでいました。
いい映画ですね。好きな作品です。

映画の世界に引き込まれていき、
クライマックスを過ぎた辺りで潮が引くというか、
妙な虚しい風が流れる感じがして、一種我に返るというか、
そして静かに映画が終わっていく。
そんな感じがフェリーニに似ていました。
我々が人生の何か出来事、あるいは人生全体を生きて感じる過程の
縮図的感覚でしょうか?。

(2008.04.20 14:52:37)

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