ラッコの映画生活

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2008.04.22
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カテゴリ: 多国籍等その他
SEX & PHILOSOPHY

101min
(DISCASにてレンタル)

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好きな映画です。出ていた4人の見知らぬ女優さんもそれぞれの個性があって魅力的だし。映像も好きなタイプだし。DVDが欲しくなりました。(←)こんな出だしで書き始めたのは、実は以下に批判めいたことを書くからで、その前に「好きな映画」という意味で「良い映画」だったと書いておきたかったからです。

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この映画には " 男女の愛を考察した問題作 " なんて解説もあったりしますが、そしてタイトルも大仰だけれど、「愛を哲学的に考察した」なんて深いものではない。監督はイランの人で、現在はアフガニスタンのカブールに住んでいるらしいけれど、保守的イスラーム社会の本国イランやアフガニスタンでこの作品を撮ることが出来ずに、旧ソ連領のタジキスタンに行ってこの映画を作った。袖無しの、胸元が見えるような、体の線も露わな服で若い女性たちがダンスを踊り、それを教える教師が男性という映画はイランでは撮れなかったでしょうね。でも少なくとも現代のわれわれ欧・米・日本人の価値観で捉えるならば、考察される愛の問題の内容はもう語り尽くされたものであり、しかも掘り下げは浅いし、それをこういう形で「哲学」なんて語を付して描くというのには、ペダンチックなものを感じずにはいられません。

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でも最初に書いたように映画としては魅力的。だからタイトルと宣伝キャッチが大袈裟過ぎるんですね。上に書いたような事情なので、舞台はタジキスタン(なんだと思います)。言葉もタジク語とロシア語のチャンポンです(タジク語の方はタジク語だかなんだかは判りませんが)。詩人で絵も書き、仕事はダンス(and/or バレエ)の教師、だからまあ芸術家と言うか、そんなジョーン(ダレル・ナザーロフ)40才の誕生日。ジョーンは、レッスンの場であるダンススタジオに、その生徒でもある4人の、互いに存在を知らない恋人たちに電話をして、2時に来てくれるように頼む。まずやってきたのはマリアム(マリアム・ガイボヴァ)。レッスンは4時からなのでスタジオには誰も居ない。やがてファルザナ(ファルザナ・ベクナザーロ)、タフミネ(タフミネ・エブラヒモーヴァ)、マロハト(マロハト・アブドゥロエヴァ)が次々にやってくる。彼女たちは自分だけがジョーンの恋人ではなく、それぞれが4人のうちの1人であることに気付かされる。

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4時になって他の生徒たちもやってきいてレッスンが開始されるけれど、ジョーンはその間に、出会った順に一人一人と個別に別れの会話をしようとする。「4人もいて真実の愛だと言えるのか?。」と問うマリアムだけれど、ジョーンは「これは探究の旅であって、4人それぞれに愛を見つけた。でもその旅をやめようと思う。40の誕生日を期に自己改革をしようと思う。」と語り、4人それぞれとの別れの会話と、過去の回想がくり広げられる。

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赤のマリアムと白のタフミネを赤白のファルザナがつないでいると書いたけれど、この4人の恋人(4人目はマロハト)、彼はその順に出会って今日までつきあってきたのだけれど、それは女の成長(愛のあり方における進化)を表してもいるようだ。マリアムが語るのは子供の頃に母親に教えられた恋心のこと。彼女は1年以上つき合ってもキスさえジョーンに許さなかった。少女の恋だ。

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この映画をイランで見ることが出来るのかどうかわからないが、イスラーム圏での検閲対策なのか、それとも監督の価値観なり映画的意図か、女性のヌードは出てこないし、キスシーンもキス寸前シーンまでしか画面には出てこない。しかしこのマリアムとの間の手による濃厚な行為が、性的関係を暗示的に描いていた(いちばん上右のトルコ版ポスター)。

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色による意味付けや表現はキェシロフスキのものだが、全体の幻想的でもありシュールでもあり、心象風景とも感じられるような雰囲気。これはベルイマンや吉田喜重の雰囲気につながる。このブログで取り上げた作品で言えば吉田の 『炎と女』 が似ているかも知れない。70年代には前衛風のテレビドラマにもこういったものがありました。記憶に残っているものでは清岡卓行の『朝の悲しみ』を原作にしたNHKのドラマ。岡田英次と鰐淵晴子が出てたんじゃなかったでしょうか。だからことさら独創の世界ではない感じです。

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思うにこのモフセン・マフマルバフって監督さんはそういう意味で上手いんですね、良くも悪くも。『カンダハール』なんて映画はテーマは重そうで、しかも実話を交えたりしていて、観客は簡単に騙されるんですが、実はそれほど深い作品ではない。重そうなテーマを使って大衆に魅惑的な映画を作る。大衆も本当に深いものは暗すぎたり、難しかったりで嫌うんですが、単なる娯楽映画ではないこういうちょっと偉そうな雰囲気の映画を求めるんですね。もちろんそこに悪気があるわけでも、計算高いわけでもなくて、本人もそれに自己満足しているのでしょうが、そういう監督さんのような気がします。トルナトーレなんかに似てるかも知れません。

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でも最初に書いたように、「この映画」をボクは好きですね。ただ題名から感じられ、宣伝コピーが言うような深いものではなくって、美しい4人の女優さんとジョーンの愛の断章として、映像も美しくもあるし、お気軽な娯楽映画として見ると、とっても魅力的です。 明日の日記に加筆があります。

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Last updated  2008.04.26 04:49:33
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