ラッコの映画生活

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2008.07.12
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カテゴリ: ヨーロッパ映画
EN KARLEKSHISTORIA

スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー
aka 純愛日記
Roy Andersson
ロイ・アンデション
aka ロイ・アンダーソン
114min(1:1.66、スウェーデン語)
(桜坂劇場 ホールCにて)

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メインは15才のペールともうすぐ14才のアニカの恋物語。それぞれ療養中の祖父と叔母を郊外の病院に家族で見舞いに訪れた春の暖かい日、庭園のカフェで互いに目と目を合わせ恋のはじまり。ペールたちのアイテムは革ジャン、バイク、ロック、ピンボール等々1960年代末の思春期の若者の姿だ。ここに2年後のヴィスコンティの『ベニスに死す』の美少年タッジオを演じたビヨルン・アンドレセンがちょい役で出ていた(下の写真の左、赤いバイクの男の子)。やがて2人は街で再会。互いに惹かれ合うけれどなかなか相手に自分の気持ちを伝えられない。いじらしい。途中ペールは、アニカを自分のものとでも勝手に思っている年長の男の子に暴行されたりするけれど、時間とキッカケの問題で、2人はつきあい始める。

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両親が出かける日にペールはアニカの家にやってきて、最初は彼女の作ったオープンサンドを食べたり、ギターを弾いてテープレコーダーで録音とかしているけれど、やがて彼女はラムか何か酒を持ってきて一緒に飲んで・・。キスをして、たどたどしく抱き合って、どこまでの肉体的接触(美しい純愛として描かれているから、こういう言葉を使うのもちょっとはばかれる)があったかはわからないけれど、朝2人は一つのベッドで寝ている。1着のパジャマの上を彼女が、下を彼が身につけ。そこに誰かが訪ねてきてペールはクローゼットに隠れる。来たのは叔母エヴァ。ペールも出てくるが、特にとがめるでもない。エヴァは上手く行かなかった人生ゆえに結婚もできずに独りで、孤独ゆえに精神のバランスを崩しているけれど、この辺がいかにもスウェーデン的かも(その点は後でまた書きます)。そして、ザリガニ・パーティー(kraftskiva)をやてるから8月(8月8日がザリガニ漁解禁日)、北欧ではそろそろ夏の終わりだけれど、ペールの両親の湖畔の別荘にアニカがお泊まりにやってくる。パーティーにはアニカの両親も招かれてやってくる。パーティーを途中で大人たちから離れた2人は、納屋か何処かで2人だけの一夜だ。

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余談になるけど、むかし大橋巨泉の11pm(日本テレビの深夜番組)に、セクソロジストとして石渡利康教授が出演するなどしてスウェーデン特集のようなシリーズをやっていた。内容はあまり憶えていないけれど、印象に残っていることが2つ。1つは幼稚園か小学校低学年の性教育の授業でコンドームを膨らませて風船にして遊んでいたのと、水を入れたメッシリンダーにタンポンをヒモを持ってぶら下げてメッシリンダーの中に浸ける。本体が水を吸って膨らみ、ヒモを上に引くとメッシリンダーごと持ち上がる様子。こんなことをスウェーデンでは6~7才ぐらいの子供に教えているんだなとちょっとビックリした。もう1つは好き合った中学生のカップルの一方が、相手の家に住んでいる例。別にその子の家庭に問題があるとかではなく、好き合っているんだから一緒にいたいわけで、ならば一緒に住まわしてしまうという親だ。寝室も一緒だったかリポートされていたかは忘れてしまった。この映画でペールの一家は湖畔の小さな別荘に夏休みをい過ごしに滞在するのだけれど、アニカはそこにお泊まりにやってくる。そんな昔のテレビを思い出した。

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チラシや予告編から、もっと単純なローティーンの恋物語と思ったけれど、かなり印象が違った。最初にペールの家族が祖父を見舞いに行った病院の(隣接の?)広い庭園内のカフェで、家族の誰かが「退院」と口にしたとき、祖父は突然黙り、涙ながらに「自分は病院から出ない。孤独な者にとって外の世界は決して幸せな場所ではない。」と言うのだ。一方精神のバランスを崩して入院していたアニカの叔母エヴァは姪アニカと2人のシーンで、スチュワーデスになりたかったけれど採用試験に落ち、翌年は友人の勧めでガイドになろうとしたが叶わず、3年目のスチュワーデス再度挑戦も病気をして試験を受けられなかったこと、結局結婚も出来ずに独り身でいること、そんな失敗した人生と孤独を語る。どちらの場合も人間の実存的孤独がまず提示される。そしてペール、アニカの両親や親族の問題、最後のパーティーでの大人同志のことなだが描写される。映画を見ていると、そういった2人の恋の背景が実はメインで、その陰に恋物語もあるとさえ感じられる。しかし両者は実は別の2つのテーマなのではなく、2つ合わせて1つのテーマだ。

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平凡な大人たち、金や地位や名誉や車種や家や職業や、そんなことにこだわり、優劣をつけ、優越感なり劣等感を持っている。「そんな大人たちを嫌っている若い2人」という解釈もあるけれど、2人はそんな大人たちのあり方がイヤなのだ。だがたぶんその原因、根底にある人の孤独を2人は良く知っている。いや感じている。実存的に孤独で独りだからこそ愛を求めるわけで、その一つの究極の姿が男女間の愛だ。アニカの両親はどちらも病的寸前の孤独を抱えているけれど、それを互いに分かち合うことはできない。一言にすれば2人の間には愛がない。イングマール・ベルイマンはアンデション監督の映画を誉めたらしいけれど、似通った精神風土を描いていると言ってもよい。

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そんな暗い救いのない精神を描くベルイマンやこのアンデション。あるいはちょっとテイストは違うけれどデンマークのラース・フォン・トリアー。フィンランドのカウリスマキ、またポーランドのキェシロフスキやズラウスキー。いずれも冬の寒さ・暗さの厳しい国の人たちだ。その地理的風土とも無関係ではない。この映画の最後の場面で若い2人はしっかり厚手のセーターを着ている。でもザリガニ・パーティーだから8月。これからスウェーデンは長い長い冬に突入する。もっと北部なら真冬は夏の白夜の反対で1日中太陽は昇らない。コペンハーゲンあたりでも冬は一日中薄暗く、天気が良く太陽が昇っても昼間の数時間だという。そんな風土の中では孤独がなお一層重くのしかかる。精神にゆとりが少ないから、それだけわがままであったり、自己中心であったり、マイナスの側面も出やすい。精神が病めば酒に手も出る。もっと現実的ことで言えば、寒いからアクアヴィット等の強い酒を飲む。深酒やアル中は当然また人間関係を破壊する。寒い国としてソ連・ロシアは挙げなかった。ロシアのモスクワはスウェーデンのストックホルムとほぼ同緯度。内陸だから寒さはなお一層厳しい。だからタルコフスキー(や、文学で言えば北欧がイプセンやストリンドベルイならドストエフスキーやチェーホフ)の世界ももちろん似ている。ただロシアには芸術至上主義的映画の伝統があり、一風独自な雰囲気を持っている。

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また余談に流れてしまったけれど、風土が厳しいかどうかということとは無関係に、ここで描かれるような人間の実存的孤独というのはあるわけだ。そしてそれを描くと同時に、だからこその愛の必要を幼い2人の初々しく美しい純愛として描いたこの作品は、深くぐっと感動的な映画だった。『ベニスに死す』の美少年ビヨルン・アンドレセンは脇で、美形というよりむしろただ純朴そうなマスクや表情のロルフ・ソールマンの演じるナイーブなペールは良い。またアニカを演じたアン・ソフィ・シリーンは、少女のあどけなさと大人の女の魅力の両面を兼ね備えていて、そうした魅力をもった2人を見つけて配役したことが、この映画の成功のもとだろう。同時代の同種の映画として『メロディ』があり、好きな作品ではあるけれど、この『スウェーディッシュ・・・』の方がはるかに深く、良く、好きな映画だ。『メロディ』はちょうど1年後に公開された映画だから、もしかしたら一種の真似だったかも知れない。1970年のベルリン映画祭に正式出品されたが、1970年と言えばベルリン映画祭が混乱した年。審査委員長の米国監督ジョージ・スティーヴンスがベトナムでの米兵士による少女レイプ・殺害事件を元にした西独作品『OK』(ミヒャエル・ヘルホーファン監督)のボイコットを提案し、事態は紛糾して全審査員の辞任をもたらした。結果各賞の選定が行われなかった。この『スウェーディッシュ・・』は金熊賞にノミネートされていただけに残念だ。

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Last updated  2008.08.01 02:15:30
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