PR
Calendar
Category
Comments
HirokochanさんKeyword Search
【BOOKS】
「森 の 生 活」
"WALDEN, OR LIFE IN THE WOODS" by Henry David Thoreau
H.D.ソーロー / 神吉三郎訳 (岩波文庫)

私が森に引きこもった理由...
それは大地に根ざした暮らしをしたかったからだ。
私は思慮深く生きたい。
生きることの精髄を心ゆくまで味わいたい
H.D.ソーロー
独身時代の、自分にとってささやかながら最大の贅沢といえば、ひとり旅だった。
ふと思い立って最小限の生活道具をバックパックに詰め込んで近くの山へ出かける。
テントの中で、インスタントラーメンを食べた後、
シェラカップに注いだアールグレイティをすすりながら、
ランタンのほのかな灯りの下で読む一冊の文庫本、それが誰のどんな本であれ、
渇いた自分の知的欲求を満たすには欠かせないものになる。
テントというひとつの空間は僕にいろんな夢を見せてくれる。
鳥の歌声で目覚めると、朝露の水滴が陽の光を受けてテントの屋根でキラキラ光っている。
寝袋の中で、僕は果てしなく自由なのだと感じずにはいられなくなるだろうし、
憂うつな雨の日には、冒険の夢を思い描きながらさまざまな思索にふけってみたりする。
そんなテントの中で幾度も繰り返し読んだ一冊、
今や、アメリカ文学の古典であり、エコロジストたちのバイブルとも言われている、
それがH.D.ソーロー(1817-1862)の『森の生活』だ。
ソーローはハーヴァード大学卒業後、約10年間教師生活を送るが、
生徒たちに体罰を加えることに反対し、学校側と意見が合わず対立、そして辞職。
その後短期間の肉体労働や執筆活動で生計を立てながら読書と思索にふける日々を送る。
1845年、28歳の時に、街から離れたウォールデン池のほとりに小屋を建て、
2年と2ヶ月をそこで暮らすことになる。「森の生活」はその時の生活体験報告でもある。
金儲けにはたいした興味を示さず、自給自足に徹し、肉食をせず、
もちろん飲酒喫煙もしなかったが、恋愛さえすることもない。
彼は、自分を束縛する全てのものから自分自身を解放しようとしていたのだ。
そんな質素な生活の中で自然を心ゆくままに堪能し、
人生の意義をひたすら追究しつづけた彼のライフスタイルに、
僕は強く惹かれるものを感じてしまう。
現代人はとかく時間にとらわれがちで、
人間自らが便宜上創りだした1日24時間というシステムに
縛られるようにして毎日を過ごしている。
ある日僕は、ソーローが体験したように、
時間にとらわれることのない暮らしを送ろうと旅に出た。
アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを銀輪で駆けつづけ、
生活から一切の不必要なものを排除するよう努めた。
その3年あまりの年月は、腹が減れば食べ、眠くなれば眠る、
そんな風にシンプルではあるが、
人生において本当に必要なものを探求していた自分にとっては充実した毎日だった。
ただ本能のままに生きるのではなく、そこに思慮深さがプラスされることで、
人生はいくらでも味わい深いものになるということを、僕は学んだのだった。
俗世間から閉ざされていてもそこには素晴らしい発見があり、出会いの歓びがある。
人間というこのちっぽけな存在もまた自然を構成する一要素にすぎないと悟った時に、
人は生きることの精髄を味わうことができるのだろう。
自然に根ざした暮らしを続けていく内に、
自分自身が自然の中に含まれるということにきっと快感を覚えるようになるはず。
今、再び、冒頭のソーローの一節を口ずさみながら、
完璧なまでの自由人を目指したソーロー自身の魂の声に耳を傾けてみたい。
アルジャーノンに花束を 2007.10.25 コメント(6)
アラスカに賭けた青春 2007.04.11 コメント(6)