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第一章 梅のひと
(4)
彼はまず、南向きにひとつある窓の汚れを拭いて、
名もない花の鉢植えを飾った。
そしてやさしく水を与えた・・・。
水はす~っと土に吸い込まれ、
しばらくすると
しおれかけていた葉がすこし元気を取り戻した。
彼はその花を見つめて
「ごめんよ、しおらせてしまって・・・。」
と呟くように言うのだった。
持ち前の几帳面な性格なのだろうか・・・。
みるみるうちに埃まみれだった窯元の部屋は
すっかりきれいな住まいになった。
もう西の空は赤く染まりかけていた・・・。
遠くでねぐらに帰る鳥の声が聞こえる。
川のせせらぎはかすかに聞こえる程度だ・・・。
裏のほうに回るとなんとか老木の先っぽが見える。
窯は斜面を利用して登り窯になっている。
もう、長い間使われていないようだ・・・。
その時大家が台車を押してやってきた。
親切な大家だ・・・。
一組の寝具と少しばかりの食材と
夕飯を届けに来てくれたのだった。
「ここにある木は使ってくれてかまわないよ。
けっこう夜は冷えるから風邪ひかんように・・・」
笑顔皺が良く似合うやさしそうな大家だ。
彼はお礼を言ってきれいにお辞儀をした・・・。
ランタンに火をともし、
囲炉裏の傍で夕食を取った。
そして彼はぐっすりと眠りに着いた。
翌朝、彼は老木に向かって歩き始めた。
人影はどこにも見当たらない。
ただ、老木の根元にふっくらとしたボジャギがひとつ。
滝つぼのほうから、鳥のさえずりに混じって
あのきれいな声がする・・・。
創作話 第5章 選択 March 2, 2010 コメント(10)
創作話・・・続き・・・^^; March 2, 2010
創作話 第4章 (3) February 23, 2010 コメント(6)