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2009.09.21
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カテゴリ: おすすめの本
「みんなで、夜歩く。ただそれだけのことが、どうしてこんなにも特別なんだろう。」

そんな文章が、とても印象的な、
秋の夜によく合う、素敵な本と出合いました。

恩田陸さんの「夜のピクニック」(新潮文庫)
です。

RIMG0051 夜のピクニック 表紙.JPG

<この本との出会い>

ものすごく本を読みたいという空腹感のような感情があるのに
何を読んでも受け付けない、ということがあります。

読書に対する欲求と、目の前の本の拒絶、という矛盾が起こるときは

ぼんやりと読みたいタイプのテイストの文章や物語のイメージがあって
それに合った物がどうしても読みたくなってしまっている状態なのです。

そういう時はどうするかというと
いきつけの本屋やブックオフや図書館に出かけ
これまで気になっていたけど読んでいなかった本や
表紙に惹かれた本を手にとって
最初の数ページを読んでみるのです。

で、運良く読みたいタイプの本に出会えればすばらしい
のですが
いつもそんなにうまくはいかないので
結局はその飢餓感が過ぎ去るまで探しつづけたり

読書することを放棄したり、ということになるのです。

前置きが長くなりました。
このシルバーウィークの前後くらいから
前述の「自分が求めるイメージに合った本が読みたい症状」をわずらって
書店や図書館を放浪しているうちに

タイトルに引かれて、ぱらぱらと最初の部分を立ち読みして、
すごく引っかかる感じがしたので迷わず購入しました。

結局のところ。自分は多分、初秋に読みたくなるような、
ソフトな物語を求めていたようでした。


<本題 「夜のピクニック」について>

全校生徒が夜を通して80キロを歩くという伝統行事に参加した高校生たちの
様々な青春模様を描いた物語です。

高校生の中に二人の主人公がいます。
お父さんは同じ人物だけど
生んでくれたお母さんが違うという
男の子と女の子です。
彼らの心の動きが、物語の軸となっています。

複雑な生い立ちを背景に、
お互いに、もう一方を憎いのか好きなのかわからない気持ちのまま
きちんと向き合って話をしたことすらない二人。
それぞれの複雑な心情をもう一方に伝える機会もないまま
二人の高校生活が、まもなく終わろうとしている。

そして
今年で最後となる「歩行祭」のイベントが始まる。

主人公の少女・貴子は、
このイベントに、密かな一つの誓いを持って臨む。 

異母きょうだいの二人は、心を通わせることができるのだろうか。

・・・といった感じが冒頭のあらすじです。

この80キロの歩行祭のはじまりから、終わりまでの様子を淡々と描いていく、それだけの物語です。それにもかかわらず、読む人を引き込むつくりとなっているのは、作者である恩田陸さんの巧みなストーリーテリングの力なのだなあと思ってしまいます。

そして、この80キロの「歩行祭」という題材が様々な要素を内包している気がするのです。

80キロという距離は長く、苦しみを伴う道のりです。最初は元気だった生徒たちの中に、徐々に疲労が蓄積し、足にマメを作ったり、足の調子が悪くなったり。もちろん、途中で棄権するというオプションはありますが、それは、歩いている他の生徒の流れから脱落する「悔しさ」を伴います。だから生徒たちは、苦しさに負けそうになる自分と戦い、懸命に完走をめざします。

でも、この長い道のりの中で生徒たちが見出すのは、「苦しさ」だけではないのです。その一つが、長い道のりを共に歩いてくれる友達。多くの生徒が、一緒に歩く気心の知れた仲間を探し、彼らと語らいながら長い道のりの苦しみを、少しでも和らげ、楽しいものにしようとするのです。

そしてまた、この「夜の歩行」という、日常とは違う体験の中では、様々なドラマも生まれます。たとえば、恋を成就させようと、自分が気になっている相手へのアプローチを試みる、という学生も出てきます。そしてそれを助ける人もいれば、邪魔する人もいて・・・。

なんだか。まったく僕個人の感想ですが、この80キロハイクに、高校生活、あるいは青春のエッセンスが凝縮されている気がしました。

二人の男女を物語の主軸とはしていますが、単なるラブストーリーかといわれると、決してそんなこともないのです。どちらかといえば、読みながら僕が感じていたのは「仲間のすばらしさ」みたいなものでした。損得勘定ではなくて、本当に友達のことを思って、手を差し伸べる仲間たちが、この物語を形作っていきます。

また、登場人物たちは、この高校生活最後の80キロを歩く中で、あるものは思い出話をはじめたり、恋愛の打ち明け話をしたり、あるいは一人でこれまでの学校生活を振りかえり思いに沈んだり、様々な形で、これまでの自分を見つめなおします。めぐらす思いを読んでいるうちに、僕自身の中学や高校時代のいろんな気持ちが戻ってきました。なんともいえない懐かしいような、温かいような気持ちになり、何度も涙をこぼしました。ラストシーンがドラマチックで、感動的で涙ぐむという小説や映画はありますが、それとは別の、もっと自分自身の心の奥底に触れてくるような感動でした。小説でこんな風に心を揺さぶられたのは、久しぶりです。

「みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。
どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね」

物語の前半と後半で、一度ずつこんな文章が登場します(微妙に言葉は変わりますが)。
でも、二度目にこの文章を読むときと、最初に読んだときの印象とは、きっと違ったものになっていると思います。

なんでもないように思える、ちょっとした時間が、特別な意味を持っていた10代のころ。
過ぎていった時間をもう一度、少し違った気持ちで見つめなおさせてくれる、そんな小説でした。

一度読んで「面白かった!」とか「なかなかよかったな」という本はたくさんあるけれど、本棚において何度も読み返したくなるような本はなかなか出会えません。この本は、きっとそういう親友のような本になる気がします。偶然だけど、この本に出会えてよかったなあと思います。

秋の夜に、
どこかに置き忘れてきてしまった
遠い情景を思い出すために
ぱらぱらと気軽な気持ちで読まれるのを
おすすめします。


夜のピクニック





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Last updated  2009.09.24 01:14:04
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