グランマの手料理レシピ

2023年01月05日
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カテゴリ: 正月料理
​​食べきれなかったおせち料理で、ちゃんぽん風そうめんをつくってみました。
​麺は有り合わせのそうめん、鶏ガラスープの素を使えば簡単にできます。

​ちゃんぽん風そうめん​

​※スープの味つけは、鶏ガラスープの素、酒、オイスターソース、塩です。


​​ お知らせ ​​
今回から「手料理レシピ」の後に、長編時代小説「密かごとを」を連載します。
江戸時代の料理茶屋を舞台にした母子三代の物語です。
カテゴリに「密かごと」を載せ、目次や登場人物などが分かるようにリンクを張っています。


​​
​ブログ連載 長編時代小説​ 密かごと
​第1章 料理茶屋【梅乃井】​ ​​​


1.さちと佳乃

白々(しらじら)明けの海はまだ眠りについていた。
空の彼方から海鳥の鳴き声が近づいてくる。
海鳥の一群は、夜明けを急かすように飛翔している。
やがて、陽光が海面を照りつけると、あたりは一気に明るくなった。
きのうの日没から漁に出ていた漁師たちの小舟が次々と戻ってくる。
木更津浦が騒がしくなった。
水揚げされた魚は木桶に移され、大八車にのせられて魚店(さかんだな)へと運ばれる。
貝殻を敷きつめた道を大八車がビシビシと音を立てながら通り過ぎていく。


<あら、もうこんな刻限?>
さちは目を覚ました。昨夜は考え事をしていたら明けがた近くまで眠れず、やっと微睡(まどろ)んだと思ったら大八車の音で起こされた。
<ぼやぼやして、いられないわ!>
寝床を出ると手早く身繕いをする。

さちは上総木更津の料理茶屋梅乃井の女将だった。
この日は、江戸の小舟町で板前を手配する口入屋の佐助が、江戸から新しい板前を連れてくる日であった。

昼近くになっても佐助は現れなかった。
木更津船で江戸を夜半に発てば、昼には木更津に着くはずだ。
ぼんやり待っていても仕方がないと、さちは居間の押入れの片付けをはじめる。

衣類を納めた柳行李や小間物類の詰まった手箱を引き寄せるが、蓋を開けずに押入れに戻してしまう。

孫娘の佳乃が、座敷の掃除を済ませたかどうかが気になった。佳乃は何をぐずぐずしているのだ。さちは帳場に座っても落ち着かず、檄(げき)を飛ばしに行こうと腰を浮かすが思い止まった。佳乃から返ってくる言葉はわかっている。

「わたしは、おばばさんのようには出来ない!」と拒まれるのが落ちだった。
孫娘佳乃を女将にしようと、さちは腫れ物にでも触るように、なだめたりすかしたりしながら機嫌をとってきた。
いつかはこの仕事に慣れ、後を継いでくれるだろうと期待し、さちは我慢をしてきたが、それもそろそろ限界にきたようだ。いつまでも甘い顔はできない。これからは本腰を入れて、女将としての心構えを佳乃に教えていかなければならない。

「おばばさん!」
佳乃が居間から飛び出してきた。
「なんです。騒々しいじゃないか。掃除はもう終えたのかい」
「とっくに終えたわ、それより、これを見て?」
佳乃は自分の髪に挿した櫛を指し示す。
「それは・・」
さちの顔色が変わった。

「押入れの手箱の中にあったわ」
「勝手に、駄目じゃないか!」
「押し入れの戸が、開いていたんですもの」
さちは押入れの戸を閉め忘れていた。
「これは、死んだおっかさんの櫛でしょう?」
佳乃は櫛を母寿美の形見の品だと思っている。

「それは寿美のものではない!」
柘植(つげ)の櫛には椿の花びらが彫られている。
「あら、おっかさんのじゃないの」
母寿美の形見でないとわかると、佳乃は髪からはずした。
「さあ、こっちに、お寄こし!」
さちは櫛を受け取ると、帯の間に入れてしまう。

「おっかさんのでないと、おばばさんの櫛なの?」
「そんなこと、どうでもよいじゃないか」
「いつもそうなんだから」
佳乃は口を尖らせ、脹れっ面をする。
さちは、それには答えなかった。

「おばばさんは、おっかさんのことになると、いつも貝のように口を閉ざして、何も話してくれないのね」
佳乃は母寿美が、自分が生まれてすぐに死んだと聞かされているだけで、母についての詳しいことは知らされていなかった。
「隠すつもりはないんだよ」
「あら、そうなの?」
「頼むから、そんな当てこするような言い方はやめておくれ!」
「だって、おばばさんはいつもそうなんだから」

佳乃は母のことではいつも肩透かしを食わされてきた。

「わたしを困らせるんじゃないよ!」
「おばばさんが、どうして困るの?」
「それは・・・」
さちが言い淀むと、
「何なの?」
佳乃が目を見開く。

「お前が十七になったら、話そうとは思っているんだよ」
「どうして、十七なの?」
「お前が、死んだおっかさんの歳になったらと決めているのだよ」
「もう、すぐ十七だわ」
佳乃は、このときとばかりに詰め寄る。
「わかってるよ」
近ごろの佳乃は、母をしきりに恋しがり、母にまつわるものはないかと探し廻っていた。

「そのことは、いずれ話してやるから」
「いずれって、いつなの?」
佳乃はなおも食い下がる。
「そんなことより、座敷の掃除はきちんと終えているんだろうね」
「おばばさんは、どうせ、やり直すんでしょう!」
佳乃は自分が掃除をした後を、祖母がいつも確かめているのを知っていた。
「もちろん、手抜かりがないかを改めさせてもらいますよ」
「わたしを信じていないのね」
「信用してほしかったら、きちんと、やっとおくれ!」
「まあ、鬼、鬼婆!」
「鬼婆で結構!」
さちは佳乃の悪態に開き直る。

「もう、知らないから!」
「知らないはないだろう?」
「だって・・・」
祖母の几帳面な性格に、佳乃は息が詰まってしまうのだ。
「これからは、もっと厳しく、手を緩めないから覚悟するんだよ」
「おお、恐(こわ)!」
佳乃はわざとらしく首をすくめる。
「すべては、お前のためを思ってのことなんだから」
佳乃を若女将にするためなら、鬼といわれようが、蛇といわれようが構わなかった。
「くわばら、くわばら!」
佳乃は呪文を唱えると、首をかしげる仕草をして笑う。

その癖は亡くなった娘の寿美にそっくりだった。一緒に暮らしたこともない母娘が、同じような仕草をすることに、さちはドキリとさせられる。
しかし、仕草や容貌は似ているが、二人の性格は正反対だった。寿美は物静かで控えめだったが、佳乃は快活で負けん気の強いところがある。

「そろそろ木更津船が着く頃だから、新しい板さんに、お前も会っておくれよ!」
「板さんは、おばばさんがよければ、いいんじゃないの」
「そうはいかないよ。これからはお前が、ここを引き継ぐことになるんだから」
「そんなこと、わからないわ!」
佳乃がまた反発する。
「まったく、困ったもんだよ」
そう言いつつも、娘の寿美より孫の佳乃の方が女将に向いていることを、さちは自分の体験からもわかっている。

梅乃井は、さちの父親久兵衛と母親ゆきが開いた店だった。
さちの両親は木更津から江戸へ出て屋台店から身を起こし、本所松坂町に店を構えたが、さちが十五のとき火事に遭い、店をたたみ、ふるさと木更津に親子三人で戻ってきた。
さちは両親の苦労を知っているので梅乃井を守ってきたのだ。自分が元気なうちに、佳乃を若女将にする道筋だけはつけておきたいと思っていた。(つづく)





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Last updated  2023年01月10日 05時58分56秒
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