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2009年09月28日
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カテゴリ: 運命がくれた愛
第1話 『刺激を覚える出逢い』 <全24話>



「何をしてほしいですって?」

隠しきれない驚きに、エストレリャ・ガルバンの声はかすれた。今夜は、カンヌ国際映画祭の目玉である見本市のために祝賀レセプションが開かれていて、この会場に有力者たちが顔をそろえている。

「きみとなら楽しくやれると思ってね」

頬がかっと熱くなった。周囲に投資家たちが集まっているのもかまわず、彼女は無礼なイタリア人のまなざしを受けとめた。

「声をかける相手をお間違えじゃないかしら」

男は片眉を上げた。他人の存在などまったく気にしていないようすだ。
今夜のレセプションは一般人の立ち入りを禁止した非公開のもので、財力やしかるべきコネを持つ者にだけ入場が許されている。このカンヌの見本市で、金が動き、映画が買われ、海外上映権が売られるのだ。この見本市こそが、エストレリャがカンヌにやってきた理由だった。

「きみは、モデルのエストレリャ・ガルバンだろう?」

エストレリャは首を絞められたような気がした。まともに息もできない。

「申し訳ないけれど、今、取り引きをまとめようとしているところなんです」

男の冷たく輝く銀色の目が細められた。

「それはぼくも同じだ」

投資家たちの一団から、きまりの悪そうな笑いと低いつぶやきがもれた。おもしろがっている人もいれば、気まずそうな人もいる。エストレリャは顔じゅう真っ赤になった。
イタリア男が神経を逆なでする笑みを浮かべて、先を続けた。

「ぼくたちならお互いに楽しくやれると思うね。電話を待っているよ」



「こんなもの、いりません」

「どうして?きみは楽しいことが好きそうだ。ぼくだって同じさ」

この男はなぜこんなことをするのだろう?
何が目的なの?
今夜のパーティーに招待されるために百本もの糸を引いたのに、釣りあげたのはこんなチャンスだけなのだろうか?
持参した映画に興味を持ってもらおうと、投資家たちに働きかけた結果がこれ?

二週間に及ぶ映画祭はもう半分終わったというのに、これまでのところ、彼女の企画を後援しようという人物はひとりも見つかっていなかった。エストレリャにとって、今はこの映画がすべてだった。子どもたちの将来がこの腕にかかっているのだ。エストレリャは完璧な笑みを崩さないようにして、きっぱり言った。

「信任票をくださって、どうも。でも、わたしはイタリアの男性にはあまり興味がないの」

その言葉は、まるで張りつめたバイオリンの弦をはじいたかのような影響をもたらした。男とのあいだに緊張が走り、空気が震動した。これほど強い刺激を体に覚えるのは、もう何年もなかったことだ。

「本当に?」

男がからかうような口調できいた。

「ええ」

エストレリャには男のすべてが感じられる気がした。彼の呼吸も、彼が頭のなかで考えをめぐらしていることも。強烈な感覚に揺さぶられ、彼女は心の内で震えた。

「それでも、最近まできみが付き合っていたのはイタリア人だ」

頬がますますほてった。エストレリャの異性関係について、この男が知っていても意外ではなかった。

                            <9/29公開 第2話へつづく>

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All rights reserved including the right of reproduction in whole or in part in any form. This edition is published by arrangement with Harlequin Enterprises II B.V./ S.a.r.l.  All characters in this book are fictitious. Any resemblance to actual persons, living or dead, is purely coincidental.

Published by Harlequin K.K., Tokyo, 2008





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最終更新日  2009年09月28日 14時56分59秒
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