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2009年09月29日
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カテゴリ: 運命がくれた愛
第2話 『激しくぶつかり合う感情』 <全24話>



彼女はどこへ行っても、パパラッチにつきまとわれていたからだ。とくに今年の初め、イタリア人レーサーのアンドレ・モッシーモとデートしていたあいだは。

「“最近まで”という部分を強調したいわけね」

エストレリャはほほえんで答えたが、目は怒りに燃えていた。

「そのとおり。アンドレがあの悲惨な事故に遭ったあと、きみはあいつを捨てただろう?」

このひと言が、各国からやってきた投資家たちの一団に威力を発揮したらしかった。
経営幹部たちは、二人、三人と、去っていった。エストレリャは強いパニックに襲われた。彼らを失ってしまう。映画を売り込むチャンスを失ってしまう。みんなの前でこの男にこんなふうに恥をかかされては、まじめな題材の映画を持ってきているとは、だれも考えてくれないだろう。

「完璧だ」

二人きりで取り残されると、イタリア男が言った。

「これで、きみとぼくだけになった」

目がひりひりする。

エストレリャは両手を握り締めて、男に押しつけられた名刺をくしゃくしゃに丸めた。世界じゅうに広めなければならないたいせつなドキュメンタリー映画があるのに、この男に笑い物にされたおかげで、後援者を見つけられなくなってしまった。

「よくもこんなことをしてくれたわね」

成功の機会を失ったショックに打ちのめされて、息が詰まった。



男が黒いタキシードのパンツのポケットに両手を突っ込んだ。

「何をしたって?」

しかし、カルロにはわかっていた。自分が何をしたかも、何をしようとしているかも。エストレリャに招待状を手配してやったのは彼だった。ミラノでもトップの人気を誇るモデルの彼女が、上流階級の者だけに許されたパーティーの招待状を入手するために動いていると聞いて、好奇心を覚えたのだ。

以前、エストレリャがその美しさを武器として利用するところを、実際に見たことがある。だから、彼女がどれほどずる賢くふるまえるかはわかっているつもりだ。アルゼンチン出身のこのモデルが、今度は何をもくろんでいるのか知りたい。なぜ、カンヌに来たのか?何を手に入れたがっているのか?もっと正確に言えば、だれを食い物にしようとしているのか?

「あんなふうに侮辱して」

エストレリャが刺すような視線を放った。目は涙で潤んでいる。

みごとなものだ。そう認めないわけにはいかなかった。涙は本物に見える。
彼女がアンドレに味わわせた苦悩を知らなければ、緑がかったはしばみ色の目に光る涙にだまされていたかもしれない。

しかし、以前ぼくが付き合っていたジョイと同じで、エストレリャは人を操ることにかけては天下一品だ。
こういう女はいつも何かを手に入れたがり、いつもだれかを新たな餌食にしたがるのだ。

「まあ、機嫌を直せよ」

カルロは制服を着たウエイターを呼び、銀のトレイからシャンパンのグラスをふたつ取りあげた。

「そんなに悲観することはない。夜はこれからだ。映画祭は始まったばかりだよ」

「あと一週間で終わってしまうわ」

彼が差しだしたシャンパンを断って、エストレリャが言った。

「丸七日ある。きみのルックスなら、次の金づるを見つけるのは簡単だろう」

「金づるですって?」

エストレリャの声が張りあげられ、顔が蒼白になった。


「金持ちの中年男と言ってもいい」

「それがわたしの目当てだと思っているの?」

「きみは美人だからな」
                            <9/30公開 第3話へつづく>

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この作品の一部、または全部を無断で転載、複製などをすることは著作権法上の例外を除いて禁じられています。

All rights reserved including the right of reproduction in whole or in part in any form. This edition is published by arrangement with Harlequin Enterprises II B.V./ S.a.r.l.  All characters in this book are fictitious. Any resemblance to actual persons, living or dead, is purely coincidental.

Published by Harlequin K.K., Tokyo, 2008





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最終更新日  2009年09月29日 09時49分53秒
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