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私は感激屋である。ドラマなど見るとよく泣く。
家族のだれも泣いていない時に、ひとり滂沱の涙を流す時もある。
そんな私だが、この「鎌倉殿」大泉の頼朝の号泣には、見ていて一粒の涙も流さなかった。なに泣いてんだ、こいつ、とさえ思った。
九郎・義経が剣豪で戦の策にも長けていて、平氏を滅ぼした功労者にして英雄である。年が離れている分、自分亡き後、いや、今でさえ、倒そうと向かってくる弟である。これまでさんざん距離を取り、顧みなかった弟の身の上である。そして、今回は調略により奥州藤原氏の手によって殺させたのである。
自らが弟・九郎義経を救おうとして救えず死なせてしまったのなら、あの涙はわかる。しかし、これまで九郎を遠ざけないがしろにしてきたではないか。彼の死によって安堵し、これでわが身は安泰。身内なのに命を絶って悪かったなと一筋涙を流すのなら、わかる。しかし、あの号泣は、解せない。誰かに見せるものならば、カモフラージュ(芝居)としてありえるけれど、あのシーンは、頼朝一人である。たとえ号泣するとしても、積年の情で「おまえが強すぎたからよくなかったんだ。検非違使なんぞに任じられたのが良くなかったんだ。わしはほんとはお前にそばにいてほしかったんだぞ」と泣くならば理解できる。
三谷幸喜の筆が今回はおかしい。過去の大河ドラマ「新選組!」「真田丸」で見せた厚情は感じられず、非情な展開が続く。泣いて馬謖を切るならば、見ているこちらも感情移入できるが、敵だ、目障りだと殺していく、消していく所業は気持ちが離れて行ってしまう。理由も感情もなく、ただ源氏再興のため、自らが大将となるために一心不乱に突き進む姿は見ていていたたまれない。思いたくもないが、三谷幸喜の私生活での変化が筆に悪影響を及ぼしている気がしないでもない。
いや、待てよ。三谷幸喜は同じ設定で違う心持の脚本を書いていたのかもしれぬ。演出家が誤解して、大泣きにしたのかもしれぬ。
いやいや、そんな馬鹿な演出家はNHKにはいないだろう。
だとすればやはり三谷幸喜の筆がおかしい。
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