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2021.10.25
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テーマ: 詩(934)
カテゴリ:


空と
地上の狭間から

風花が
受粉のように
舞い降りる

おもわず手を差し出すと
欠損の
小指のなかへ
吸い込まれていった

ひやりと光る胸底
浮かびあがったのは
妻の笑顔
だった気がしたが

それは一瞬のことで
体内はまた昏くなる

夕闇に吸い込まれた
あの日の約束

絡めた
指のぬくみは
確かに覚えているのに
どんな約束だったのか
思い出せない

はやく思い出せと
風花が触れるたび
空に取り残された指が
明るく痛む

いま何かに触れたなら
静電気のような棘で
決して許されない傷を
つけてしまいそうで

もしくは
異物のような優しさに
こちらが発火してしまいそうで
真っ黒な
革の手袋を嵌めてみる

退院の日に妻から贈られた手袋を
ようやく嵌めてみる

それは想像どおり暖かくて
肉体へ閉じ込めた
明けない夜が
溢れ出さないように
肉体ごと
崩れていかないように
両手で顔を覆うと
かすかな獣の匂い

ふわ と

柔らかな毛に触れたような
懐かしいような感覚が
重たい血の巡りとともに
広がっていく

あの日の残光
回りだす影絵の灯籠のなかで

 あゝ
 そうだ

指と指の解けたところから
言葉の終わりがよみがえる

 犬
 まっしろな

指の隙間から滑りこむ風は
あの日と同じ冷たさで
もういちど空を見上げた

 真っ白で雪のような
 犬を飼おうと言ったのだ



◆いただいた評◆
1 秋さやかさん 「風花」  10/20 僕にとって初めてのかたなので、今回は感想を。

よろしくお願い致します。風景と心情が無理なく溶け合って、ほのかに物語性も感じられます。
一点だけ疑問点があるので、早めに出しておきます。
「欠損の小指とは何か?指や手袋が他所にも複数修辞的に出て来るので、これは即物的な物ではなく、何かの比喩か?それと退院は何か関係があるのか?」―このあたり、読み手は少し引っ掛かり、ストレスを感じ心配するわけです。
約束がこの詩のひとつの柱になっているのですが、それを早めに出しておいて「ふわ と」「あゝ そうだ」「犬 まっしろな」と段階を踏んで展開し、最後に行き着くさまは、とても上手いですね。
これを読むと、妻は少し離れているような感触があります。表現方法は「「それは想像どおり~」から「~灯籠のなかで」などが挙げられるように巧みさがあります。やや気になったのは上記、疑問点だけです。なかなか書けます。読ませます。





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最終更新日  2022.08.01 19:59:21
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